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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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ヴィーブル領とアスクリムゾン領-5

「そんなことって……」


 マシルの溢した言葉にイズは静かに一度頷くと、苦虫をかみつぶした様な表情でゆっくりと口を開いた。


「私たちも最初はただの冗談か何かだと思っていました。ですが、宣言されたその翌日にアスクリムゾン領にある商店にいつものように荷を卸しに向かった獣人は頭と胴が切り離された形で帰ってきました。その時私たちは彼らの言っていることはただの冗談か何かではなく、本気なのだと理解しました」


 イズはそこで一度言葉を吐くのを止め、カップに入った液体を飲み干すと今度は「……その悲惨な出来事が起きてから何故彼らはそんなことをするのかと考えましたが、結局彼らの考えは分かりませんでした」と悲しそうな表所を浮かべながら答えた。


「なるほどな、この地が既にブレスタという国が亡くなり、今は二つの領主が治める地ということは分ったが、何故奴らが亜人を嫌うのか分からないな」


「多分、ですが……彼らが亜人の方々を嫌う理由の一つとしては姿形が完全に違うからというのもあるのではないかと思います。ただ、先ほども言ったようにそれが本当の理由なのかは分かりません」


 イズの言葉にユウキはマシルと一度だけ顔を合わせた後、そうか、とだけ短く答える。彼らにとってエイガルドで出会った亜人は少なくはない。かつてユウキがペアを組んだサティヴァ―ユも亜人だ。それ以外にもエイガルドに住む住民の中には少なからずユウキやマシルと言葉を交わすこともある亜人も普通にいたせいか何故アスクリムゾン領に住む者たちが亜人を嫌うのか理解が出来なかった。


 ユウキたちも初めて亜人を目にした時は流石に驚きはしたものの、嫌う様な事もなく二人にとってはただ外見的特徴が人間と異なる者という感想にしかならなかった。だからこそ二人はイズたち以上に頭を悩ませた。何故そんなにも忌み嫌うのかと。


 しかし、ユウキはそこで一旦二つの領地・領主の関係や考えに頭を悩ませるのを止める。止めた理由は簡単だ。ユウキにとってこの島の問題など全くと言っていいほど関係ないと思ったからだ。イズの話にはユウキも驚愕はしたものの手を貸す理由も無ければ、何か出来ることがあるわけでもない。


 もとよりユウキがこの島に来た理由は『未来予知』で視たカズたちの身に起きる危険をどうにか対処できないかと多少なりとも力をつけ、騎士とガーディアンのクラスの者しか通れない(ゲート)を無理やり通って来たのだ。まずはここに来た理由であり、『未来予知』で視た赤いバンダナの男の正体について情報を集めるのが先決だと考えた。


「いくつも質問をしてしまって申し訳ないがもう一つだけいいか?」


「えぇ、私が話せることであれば何なりとどうぞ」


 そのイズの言葉にユウキは「じゃあ、遠慮なく」と言葉を続けた。


「ある男について探ってる。特徴は、そうだな……赤いバンダナを巻いた男、とだけ言っておこうか」


 ユウキは出されたお茶を一度口に運び、乾いた喉を潤した後、当初の目的である赤いバンダナを巻いた男について質問を口にした。すると、イズとリンは”赤いバンダナを巻いた男”という言葉を聞くなり驚愕した。そして、そのまま「何故、貴方が彼の事を?」とユウキの問いに逆に問い返した。


「ちょっとした理由でな。そいつは今どこに居て、何をしているのか。そして、どれほどの強さを持っているのかを知りたい。教えてくれないか?」


 イズはユウキの言葉を聞いた後、唇に指を当てがい、考える素振りをする。そして、暫くの間沈黙の時間が流れたが、それを壊したのはイズだった。


「そうですね、彼について話すこと事態は問題ありませんが、いくつか条件があります」


 ゆっくりと開かれた彼女の口からはそう放たれた。ユウキは顔を少しだけ顰めながら「条件?」と繰り返す様に発すると、イズは真剣な表情を浮かべながら静かに一度頷く。ユウキもそんなイズの表情を見るなり、少しだけ考えるかの様に顎に手を添え、思考を繰り返す。そして、自分の中で考えが纏まったのかゆっくりと顔を上げ、イズに向かって口を開く。


「その条件とやらは?」


「あまり難しく考えないでください。条件と言っても私の質問にいくつか答えてもらうだけです。答えられないのであれば無理して答えてもらう必要はありませんよ」


 イズは先ほどの真剣な表情から一変し、年相応の笑みを浮かべながらそう零す。そして、そのままユウキの前に指を三本ほど立て、さらに言葉を続けた。


「私が聞きたいのは三つほどです。一つ、何故貴方達が赤いバンダナの男について知ろうとしているのか。二つ、彼について話をした後、私たちに力を貸してほしいこと。三つ、亜人だけでなくヴィーブルに住む人たちに危害を加えないこと。……以上、この三つの条件です。いかがでしょうか」


「……分かった。だが、その前にこちらもその条件についていくつか質問がある」


 イズの口から放たれた三つの条件を聞いたユウキはもう一度頭の中で条件の内容を繰り返した。そして、いくつかの疑問が湧いたのでイズにそう聞き返した。イズはその問いにどうぞ、とだけ答え、ユウキの問いを待った。


「一つは力を貸してほしいとは言うが具体的にどうすればいい?」


「そうですね。まずは私の家族に会ってもらいたいですかね。詳しい話はその後の方が理解もしやすいですから」


「……そうか、じゃあ二つ目だ。ヴィーブルに住む人に危害を加えるなと言うが、その言い方だとアスクリムゾンの奴らには危害を加えていいってことか?元は同じ国の者同士だったんだろ?あんたらの知り合いはアスクリムゾンの方にもいるんじゃないか?」


「確かにアスクリムゾン領にはかつての知り合いも同業者もいます。ですが、今はどう抗っても私たちはアスクリムゾン領に足を踏み入れることも出来ませんし、仮に踏み入れられたところで殺害された方たちと同じようにされることは間違いないです。ですから、今は何があっても私たちにはどうする事も出来ません」


 イズはそう言い切ると、再度顔を顰め、辛い表情を浮かべる。その言葉を聞いたユウキは一度隣で同じように話を聞いていたマシルに視線を向けると、マシルも偶然なのかユウキの方へと視線を向けており、目が合うなり無言で頷いた。


「そうか、あんたらの考えは解った。……それで、俺たちが赤いバンダナを巻いた男を知ろうとしている理由だったよな。俺たちがその男について知ろうとしている理由は、いずれこの島を訪れる仲間に起こる悲劇を止めるためだ」


「悲劇を止める?な、何か起きると言うのですか!?」


 イズは少しだけ感情的にユウキに問いかけると、ユウキは何も言わずにその問いに頷いた。

次回更新は11/18です。来週の更新は時間がなく、執筆が出来なさそうなので再来週になります。

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