表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
139/163

ヴィーブル領とアスクリムゾン領-1

 アオイが映し出した映像にはエイガルドとブレスタを繋ぐ橋を駆けるユウキとマシルの姿があった。見る限り二人は(ゲート)を通った後のようで橋の袂まで走り、一度足を止め呼吸を整えようと両膝に両手を着ける。そして、何度目かの深呼吸で二人はゆっくりと顔を上げ、辺りを確認した。二人の眼に映るのはどこまで続いているのか分からないほどの木々で出来た森だった。


「ここが、ブレスタ……」


 マシルはどこまでも続く鬱蒼とした森を眺めながらそう零す。ユウキはそんなマシルの言葉を気に留めることもなく暫くの間、鬱蒼と続く森を眺め、さらにどこかに道がないかと探していた。


「ねぇ、ユウキ君。どっちに進む?」


 マシルの問いかけにユウキは顎に手を添えながらそうだな、と溢す。そして、ふと樹上へと視線を向け思いついたように腰のホルスターに仕舞っていた拳銃を一丁取り出す。そのままユウキは銃口を樹上へと向けたまま引き金に添えていた人差し指に力を込め、引き金を引いた。


 銃口からは発砲音とともに紫色の魔力弾が放たれ、それは樹上まで飛び形を変え始めた。自身が放った魔力弾が無事樹上に辿り着いたのを確認するや否や、ユウキは拳銃をホルスターに仕舞い、今度は手のひらに魔力を集め始めた。そして、手のひらに魔力を集め終えると、自身の顔の前まで持っていき魔法を唱えた。


「『闇扉(ゲート)』。……よし、マシル。ちょっと待っててくれ。どっちに行くか確認する」


 ユウキの口から魔法が唱えられた瞬間、樹上で形を変えようとしている魔力の塊は完全に黒い空間へと変わり、さらにユウキの手のひらに集まった魔力もユウキの目の前で頭が一つ入るくらいの大きさの黒い空間が現れた。二つの黒い空間—————『闇扉』が繋がっていることを確認するや否やユウキはマシルにそう言葉を放ち、黒い空間を覗き込むように頭を黒い空間へと入れると、ユウキの頭だけが樹上で形成された闇扉から姿を現した。


 一見すると黒い空間から人の頭だけが飛び出しているため初めて見た者からしたら腰を抜かすなり、恐怖を感じたりするものだが、既に何度も見ているためかマシルは特に驚くこともなく平然と黒い空間に頭を突っ込むユウキに「何かある?」と問いかける。


 ユウキはユウキで黒い空間から出した頭で樹上から見える景色を一望すると東側にはいくつか建物や住居が見え、西側には監視塔のような縦長に伸びた建物がいくつか確認できた。さらに、島の大きさも視界に映る限り把握出来たおかげか樹上にある黒い空間から頭を出したままどちらの方角に向かうか呟くように言葉を溢した。


 そして、暫くの間樹上から見える範囲を脳内に記憶してから黒い空間から離れ、闇扉を閉じた。それと同時に樹上に展開された闇扉も空中で霧散し、姿を消した。


「とりあえず進む方角は決めた。あっちは住居とか建物があるから多分街があるんだと思う。んで、逆の方向には監視塔の様な縦長の建物があるだけでそれ以外は特に目に付くものはなかったな」


 ユウキは東と西の方角に順番に指で示しながらマシルに説明すると、マシルは「じゃあ、進むのはこっちの街がある方だね?」と訊ねながらユウキと同じように指で方角を差した。ユウキもそうだと言わんばかりに無言で頷くと、街がある方向に歩き出した。


 鬱蒼と生い茂る草木を掻き分けながら街があると考える東の方角に周りを警戒しながら歩き続けるが、不思議なことにエイガルドに生息している様な魔物を見ることはなかったが、けもの道はしっかりと存在していることにユウキは首を傾げる。不思議に思いながらもユウキは自然に出来たけもの道を逐一確認しながら前へと進んでいると、突然何かを引きながら荒々しく走る音と叫び声が聞こえた。


「待ってぇえええ!!」


 その声を聴いたユウキとマシルは一度お互いに顔を合わせると、無言で頷き声がした方へと走り出した。次第に視界は鬱蒼とした草木から開けた砂利道へと一変した。そして、先ほどから聞こえてくる叫び声と次第に音が近づいてくる何かを引きながら走る音に視線を向けると、それは予想以上に近づいてきており、二人が視線を向けるころにはそれに轢かれるのも時間の問題と言えるものだった。


 二人の目の前を走り差る瞬間、ユウキは横で同じようにソレを眺めていたマシルの肩を掴むと瞬時に後ろへと下がる。一瞬だったが走り去ったのは荷を積んだ馬車を轢く馬の様な四足歩行の生物だった。そして、ソレが走り去った後に遅れて現れたのは一人の少女で、かなりの間追いかけていたのか呼吸は荒く、走ろうと前に進める足は既に上がっておらず引きずる様に地面に線を描いていた。


「ま、待ってぇ……もう、むり」


 少女はそう零すと、地面に倒れ徐々に離れていく荷馬車を眺めていた。そして、いきなり何か諦めたかの様な表情を浮かべながら言葉を呟き始めた。


「……ふふ、私もツイてないものね。家が貧乏ってだけで七歳で親には売られるわ、私を買った奴らは買ったくせにも関わらず邪魔だと言いながらほぼただ働きも同然でご飯も一日一食貰えるかも分からない所に放り込むし、そこから逃げ延びたかなと思えば今度は食い逃げと間違えられるわで私の人生って何なの?だけど、そんな糞みたいな人生でもあの人が私を拾ってくれたのは嬉しかったな。しかも、拾うだけでなく仕事や住む場所まで提供してくれたのに……やっと恩が返せるかなと思った矢先にこれとはね。もう、呆れるどころか笑えもしないわ」


 突然地面に伏しながら自身の人生について語り始めた少女の話を聞いてた二人はただただ「重すぎだろ!」と心の中で突っ込みを入れながらも、二人は再度お互いに顔を見合わせた後、ユウキとマシルは茂みから姿を現し、地面に倒れながら自身の人生を嘆いている少女に声を掛けた。


「……嘆いてる所悪いが、『あれ』止めればいいのか?」


「へ?……うん。いや、はい。出来るならお願いします」


 いきなり声を掛けてきたユウキに素っ頓狂な声をあげながら少女は地面に横たわりながら小さく頷いた。少女は二人の存在に気付いていなかったのか二人の姿を見るなり、状況が読み込めないといったなんとも言えない表情を浮かべていた。しかし、ユウキはそんな少女の様子を気にする事もなく、少女の返事を聞くや否やマシルに少女の事を頼むとその場で足を前後に開きながら腰を落とし、後ろに下げた右足で地面を強く蹴り、既にかなり離れてしまっている馬車に向かって駆け出した。

次回更新は10/14です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ