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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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騎士の国-9

 眩い光が収まり、カズとカイザの二人は瞼を何度か瞬きをしながら謎の声が聞こえたユウキの方へと視線を向けると、そこには純白のワンピースに身を包み、紫色の髪を腰まで伸ばした少女がユウキの右隣で困り果てたという何かに悩んだ表情を浮かべていた。


 その反対には少女と同じように白を基調としたワンピースを身に包み、腰の辺りで青を染めた麻紐を簡単に巻き付けていた。そして、容姿は一見少女と見間違えそうになるが、髪の長さと二人が眩い光によって視界が不良だった時に聞こえた声質からすると性別上は男なのだろうと察していた。


 そんな二人の視線を気にする事もなく少女は変わらずユウキの表情を見るなりため息を零し、反対に少年の方は肩に付くか付かないかくらいまで伸びたターコイズブルーの髪を揺らしながら部屋の中を物珍し気に眺めていた。


「へ―外の世界ってこんな感じなんだ!ん?君たちはなんで包帯巻き付けられて寝てるの!僕と一緒に遊ぼうよ!!」


 悪意はないのだろうけど、少年はカズとタイガの姿を見るなり無邪気な笑みを浮かべながら視線だけを向けるカズにそう言葉を掛けた。そして、なんの突拍子もなくカズのベッドに飛び乗ろうとした瞬間、鈍い音とともに少年が床に倒れた。


「怪我人がいる中で騒ぐんじゃねぇよ。アオイ」


 少年の名前らしき言葉を口にしながら自身の胸の前で拳を握るユウキは床に倒れる少年に睨みつけるような視線を送る。アオイと呼ばれた少年はすぐさま起き上がると、ユウキに殴られた東部を両手で押さえ、目尻に涙を浮かせながら「痛いよ、ユウ兄」と痛みを訴えた。


「うるせぇ、出す前に騒ぐなって伝えたはずなのにすぐに騒ぐ奴が悪い」


 そんな無慈悲な言葉にアオイは納得がいかないといった表情を浮かべながら、悪態をつくがユウキは相手にしないといった様子で右隣にいる紫色の髪が特徴の少女—————シノと一度顔を合わせる。そして、すぐにユウキはアオイに視線を戻し、口を開いた。


「今はお前と言い合ってる暇はない。さっさと、さっき伝えた様に始めてくれ」


 カズとカイザにはユウキとアオイの会話の意味が理解できなかったが、アオイはユウキの言葉を聞くと、子供のように頬を膨らませながら文句の一つでも言ってやろうかという表情を浮かべる。しかし、すぐにそれを止め、諦めたかのように表情を一変させ、ユウキの言葉に間延びした返事をしながら、カズたちに近づく。


「じゃあ、包帯だらけの人たち。ちょっと失礼するね」


 アオイはそう言い終えると同時にカズとカイザ、そして未だ眠りについているタイガに向けて左手を伸ばし、右手をユウキの方に向けて伸ばす。すると、魔力を込め始めたのか両方向に真っすぐ伸ばされたアオイの両手の平には淡い水色の光が現れ始めた。


「行くよ?…………『記憶共有』!!」


 アオイは確認のために一度ユウキの方に視線を向ける。そして、すぐに視線をカズたちの方に戻すと、少しだけ力むように言葉を口にした。すると、アオイの両手に集まっていた魔力がゆっくりと二方向に伸び始め、カズとカイザ、タイガそして、ユウキとシノ、さらに扉の近くにいたマシルと朧の身体を淡い光となって包み始めた。


「とりあえずユウ兄がここに来たくらいからでいいのかな?」


 アオイの問いかけにユウキは「あぁ、頼む」とだけ答えると、アオイは静かに頷いた。そして、身体を包む淡い光が一層眩しく光始めると同時に全員の視界が部屋の中から全く何もない真っ白な空間へと一変する。そんな事態にカズとカイザは驚愕と困惑が混ざったような表現しがたい表情を浮かべながら辺りを見渡すが、その空間には先ほどまでカズやタイガが寝ていたベッドやカイザが座っていた椅子なども無かった。


「……お、おい。ここはどこだよ」


「これは……浮いてるんですか?立っている感覚が全くありませんが」


 二人は自分の身に起きた状況が理解できていないのか、身体に訪れる謎の浮遊感を感じながら同じようにその場で立ち尽くすユウキたちに疑問を掛ける。しかし、そんな二人の態度とは裏腹にユウキやマシル、それにシノや朧といったこの空間に連れてきたアオイの力を知っているのか特に慌てる様子もなく、落ち着き払ったような表情を浮かべながら二人の疑問に答え始めた。


「まぁ、とにかく落ち着けよ。ここは……そうだな。精神世界とか夢の中とでも言った方が伝わるのかな」


 ユウキは自信なさそうに吐いた言葉をマシルに確認するように顔を合わせるが、マシルも完全にはこの場所の事を理解できていないため、一瞬考え込む様な表情を浮かべるが、すぐに「そんな感じだよね」と軽く返す。


「お前たちが慌てるのは分かるけど、実際の身体はあの部屋にあるから大丈夫だよ。それとこれから見せるのは俺がこの国に来てからの約三週間、何があったのかを知ってもらいたい」


 ”約三週間”ユウキの口から発せられた単語に二人は顔を顰め、カズはその疑問をすぐに口に出した。「おい、ちょっと待て」というカズの言葉にユウキは首を傾げながら「どうした?」とだけ返した。


「今、約三週間って言ったのか?」


「あ、あぁ。言ったけどそれがどうかしたか?」


「俺たちはお前とマシルが(ゲート)を無理やり通ったって聞いてから一週間後に来たんだぞ!?約三週間ってどういうことだよ!!」


 カズの言葉を聞いたユウキとマシルは一瞬呆けた表情を浮かべるが、すぐに理解したのか「はぁああっ!?」と大声を上げ、逆に「嘘だろ」とカズの肩を掴む動作をしながら聞き返した。そんな二人の様子を横にアオイは理解してないのか近くにいたシノに「どういうこと?」と訊ねており、シノはそんなアオイの問いかけを無視し、何かを考え込むように顔を顰めていた。


 そして、考えが纏まったのかシノはお互いにどういうことだ、と問いかけ続けるユウキとカズに視線を向け、主にユウキに向かって言葉を発した。


「ユウキよ。そこのカズが言っていることが本当ならばちと面倒な事になるぞ」


 シノの口から放たれた”面倒な事”という意味がカズとカイザには理解しがたいものだったが、その言葉を聞いたユウキとマシルは表情を引き締め、短く「そうだな」とだけ返した。


「それでも今はこいつらに説明するのが先だ。カズ、今は時間の事は一旦置いといて俺の記憶を基にこの国の現状を見てくれ」


 ユウキはそう言い終えると、シノの近くで待機していたアオイに頼む、とだけ指示を出すとアオイは「じゃあ、行っくよー」と陽気に返し、白い空間上に映像を映し始めた。

次回更新は10/7です

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