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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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騎士の国-8

 微かに漂ってくる薬品の匂いで目を覚ました。見た事のない天井に戸惑いを感じながらも視線だけを動かしながら周りを確認すると、隣のベッドには至る所に包帯とガーゼを貼られたまま眠りにつくタイガの姿があった。何とか身体を起こそうとするが、動こうとするたびに身体の至る所から痛みが走り、思うように身体が動かなかった。


「…………はぁ」


 そして、諦めたかのように身体に入れていた力を抜くと見慣れない天井に視線を向ける。一体ここはどこで、ユウキたちはどこに行ったのだろう。暫くボーっと天井を眺めていると膝の辺りに確かな重みを感じた。視線を足元へと向けると、一体いつからいたのかそこには白い体毛に覆われた子狐が小さな身体を丸め、眠りについていた。


「なんだ、この狐は……どこかで見た事があるような……」


 記憶を辿る様に思い出そうとするが、どこで見たのかよく思い出せなく頭を悩ませるが、悩みの種である子狐は気持ちよさそうに寝息を立てていた。そのまま暫くの間記憶を辿りながらも眠りつく子狐を見つめていると数回、ピンと生える両耳をピクピクと動かしながら黄金色とシアンの瞳を持つ目を開き、その場で身体を起こし、視線を扉の方へと向けた。


 子狐が扉の方に視線を向けてからまたとなく数人の足音とともに勢いよく扉が開かれた。扉の先には見知った顔が三つあったが、残りの二人は見た事のない者だった。見知った顔の内の一人である少女がカズの足元にいる子狐を見つけた瞬間、「やっと見つけた」と溢しながら子狐を抱きしめた。


「朧……また勝手に部屋に入って探したんだよ?」


 少女がそう朧と呼ばれた子狐に言葉を掛けると、朧は短く鳴きながら顔を何度か振った。


「よお、目を覚ましたんだな。カズ」


 朧と戯れる少女を横目にカズに声を掛けたのはユウキだった。その隣では初めて見たのかタイガの容態を目にした途端、カイザが目を見開きながらタイガの眠るベッド横に駆け寄った。


「まぁ、一応な。それよりここはどこだ?」


「ここはヴィーブル領のターコイズ村にある診療所だよ。ちなみに後ろのこの人たちはお前たちの怪我を診てくれた人たちだ」


 カズの問いにそう答えた後、自身の後ろで待機する白衣を着込んだ二人を紹介すると、静かに頭を下げた。そして、付け足す様に「本当だったら領主のいる街の医院に連れて行きたかったんだけどな」と溢した。


「そうか。……ところでユウキ、なんでお前とマシルがここにいるのか、そして俺たちの前からも姿を消したのか教えてくれないか?出来ることなら今すぐお前に掴み掛って一発殴ってやりたいところだが、今の俺の状況的にそうする事も出来ねぇ。大人しく聞いてるからよ、頼むよ」


 カズは起き上がることは出来なくとも布団から出ている両手は赤くなるほど強く握られており、湧き上がる怒りに耐えているのが見て分かったユウキは少し戸惑いながらも人払いをしてからポツリポツリと話し始めた。


「そうだな。まず、お前たちの前から姿を消した件については書置きにも書いてあったように強くなるための修行としてエイガルドのあちこちで野宿しながら生活してたよ」


「そんな事は知ってるんだよ。俺が聞きたいのはなんで何の相談も無しに行っちまったのかを聞いてんだ。俺たちがどれだけ心配したと思ってんだ。それはユウキ、お前にだけじゃなくてマシルにも言ってるんだからな」


 カズはユウキとマシルと呼んだ朧を両手で抱きしめるように抱える少女に視線だけを交互に動かしながら言い放つと、マシルは何も言わずに申し訳なさそうな表情を浮かべるだけだった。ユウキも申し訳なさそうな表情を浮かべながらすまない、とだけ溢した。


「……それで、なんで何も言わずに出て行ったんだ?」


「それは、その……今更こんな事を言うのもなんだが、あの時はお前たちに迷惑とか心配かけたくないっていう感情で先走ったってのもあるが、俺がお前らの前から姿を消した一番の理由は昨日の出来事が起きるって知っていたからだ」


 ユウキの口から発せられた言葉にタイガの元に寄り添っていたカイザは驚くようにユウキの方へと振り向き、カズは驚愕の言葉だけを溢した。そして、カズがその言葉の意味を聞こうと開いた口を一度閉じ、再度口を開き頭の中に沸いた疑問を問おうとした瞬間、ユウキの言葉に遮られた。


「お前たちが驚くのも無理はないと思ってる。だけど、昨日の出来事が起きるのは俺の能力で分かってたんだ」


「は、はぁ?何言ってんだ。お前の能力は『身体強化』とシノってやつから貰った『鑑定』の二つだけのはずだろ!まだ俺たちに言ってない能力でもあるのかよ!」


 横になったまま声を荒げるカズを前にユウキは静かに頭を縦に振った。そして、突然腰に帯剣している片手直剣に手を添え、そのまま魔力を込め始めた。すると、片手直剣の柄の部分にある窪みにぴったり嵌った魔石が光り出すが、その様子を視線だけで見ていたカズは一つ疑問に思った事があった。


「なぁ、一ついいか?確かお前の剣に嵌ってる魔石って柄の部分にある紫色の奴だけのはずだったよな?」


 その問いかけにユウキは一度何の話をしてるんだとでも言いたげな表情を浮かべながらカズと腰に帯剣する片手直剣に視線だけを交互に向けると、思い出したように「あぁ」とだけ溢し、腰に帯剣していた片手直剣を鞘ごと抜き取り、カズに見えるように前に出した。


「そういえば忘れてたな。これの事だろ?」


 そう言いながら片手直剣のナックルガードの部分を指で示した。今まではこれといった特徴がない部分だったが、今では植物の蔓の様なものが意匠され、その中心には柄の部分と同じように青色の魔石が窪みに嵌め込まれていた。そして、その魔石からも光が漏れるように輝いていた。その問いかけにカズは「あぁ」とだけ溢した。


「まぁ、これの事に関してもこれから説明するからちょっとだけ待っててくれ。準備が出来たら声を掛けるよ」


 ユウキはそう言いながら片手直剣に魔力を込めるのを止めず、後ろで待機していたマシルにアイコンタクトだけを送る。カズもカイザもいつまでも光を発し続ける片手直剣を見ながらも、ユウキとマシルの様子を確認していた。


 そして数秒後、片手直剣から飛び出す様に魔石と同じ色をした光の玉が姿を現し、暫くの間ユウキを挟むようにふよふよと飛び回っていた。二つの光の玉は落ち着いたかのようにユウキの周りを飛び回るのを止めるさらに眩い光を発し始めた。その眩い光にカズは瞼を強く閉じ、カイザは片手で顔を覆うように前に出し、その眩い光が収まるのを待った。


「わーい!初めての外だぁ!!」


「これこれ、あまり騒ぐものじゃないぞ」


 光が収まり始めると同時に聞き慣れない声が二つカズとカイザの耳に届いた。一つは幼く無邪気な子供の声で、もう一つは声は若くとも口調が少々老いている感じの声だった。しかし、どちらにせよ声質は若く、子供っぽさある声であることは視界が不良な二人にも感じ取れた。

次回更新は9/30です

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