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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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騎士の国-7

 突如現れた黒い空間に深紅の鎧に身を包んだ一同は驚愕の表情を浮かべ、さらにその黒い空間の目の前にいたリーダー格の男は数歩、後方へと下がりながら警戒を強める。そして、リーダー格の男が黒い空間から離れてから数秒後、黒い空間の中から一人の少年が姿を現した。


 少年は一本の片手直剣と二丁の拳銃を所持しており、片手直剣は左側に、二丁の拳銃は腰と右足に装備しているホルスターに仕舞われていた。


「てめぇ……何もんだ?俺の剣をどこにやった?」


 少年にそう発したリーダー格の男は顔を引き攣らせながらも睨みつけるように圧を掛けようとするが、少年はリーダー格の男の言葉をまるで聞いていないような様子で背後で地面に横たわるカズに視線を向ける。


「大丈夫か?カズ。……ってかなりやられたみたいだな」


「ユウキ……お前…………」


「悪いけど、すぐ終わらせるから少しだけ待っててくれ」


 カズが何かを言いかけた時、ユウキと呼ばれた少年はその場で立ち上がると、今にも飛び掛かってきそうな表情を浮かべるリーダー格の男の方へと視線を向けた。そして、少し困った表情を浮かべながらユウキは口を開いた。


「あー……悪いんだけどさ。ここは見逃してくれないか?見たところあんた、確かアスクリムゾン領のザラマだろ。後日、遣いを出すから今日の所は下がってくれないか?」


「……ハハッ、見逃す?下がる?俺たちが?…………ふざけてんじゃねぇぞ?クソガキがッ!!」


 ユウキの言葉にザラマと呼ばれた男は荒々しくそう発し、さらに言葉を続けた。


「いいか、よく聞けクソガキ。お前の後ろに転がっている奴らは俺たちの領地に無断で足を踏み入れたんだ。しかも、うちの領地では存在するだけで禁忌であり、一歩でも足を踏み入れれば見つけた瞬間、そいつの人権は俺たちの領地のルールで裁くこととなってるんだ。それをお前は見逃せだぁ?ふざけんのも大概にしてくれ。ほら、分かったらいいからそいつらをこちらに渡せ。そうすればお前は見逃してやるよ」


 ザラマは言い終えると同時にユウキに向かって手の平を上に差し伸べ、指先だけを何度か自分の方向に曲げながらカズとタイガの身柄を受け渡す様に催促した。しかし、ユウキは表情を変えることなく一言、『断る』とだけ発するとそのままバックホルスターから拳銃を抜き取り、銃口をザラマに向けた。


「悪いけど、こいつらは俺が呼んだお客さんなんだ。渡す気はもちろんお前らの好きにさせる気はないよ」


 さらに続けて発せられたユウキの言葉を聞いたザラマは呆れた様に頭を掻きながらため息を吐き出すと、徐に右腕を上げた直後、お前ら—————殺れ、とだけ発しながら上げた腕を降ろした。しかし、いつまで待ってもザラマの後方からは何の返事も動きも感じられなかった。


「おい、お前ら何やってんだ。早くこいつらを…………ッ!?」


 不思議に思ったのか多少イラつきを見せながらも後方に待機する部下である深紅の鎧の集団の方へと身体ごと向けると、ザラマは目の前に広がる光景に目を見開き、愕然とした。ザラマの向いた先には連れてきた数十名の深紅の鎧を身に包んだ者たちがなんの声も上げることなく地面に横たわっていたのだ。そして、その者たちの中心に一人の少女が立ち尽くしていた。


「て、てめぇ!こいつらに何しやがった!?」


 倒れた者たちの中心に立ち尽くす少女は一度だけザラマの方へと視線を向けるが、言葉を発する事なく少女の横に現れた黒い空間に足を踏み入れ、その姿を消した。


「……なぁ、今なら間に合うけどどうする?」


 目の前に広がる仲間の姿に思考を奪われる中、背後から聞こえた声にザラマは顔を向けた。すると、そこには先ほどザラマの目の前で姿を消したはずの少女がユウキの隣に姿を現し、地面に横たわるカズとタイガ、ダランの治療を始めていた。


「……あぁ、安心しろよ。お仲間なら彼女の従魔の能力で眠ってるだけだ。それで?お前はどうする?」


 ユウキがそう説明をし終えると、少女の影から白い体毛に覆われた子狐が一匹姿を現し、地面に横たわるカズの上に乗ると、身体全体に魔力を帯び始めた。一体何が起きているのか一向に理解できないザラマは地面に転がる武器を一つ、彼が持っていた大剣とは重さも大きさも足りない片手直剣を手に取ると剣先をユウキに向け駆けだした。


「どうするってこうするに決まってんだろ!死ね!!」


 そう叫ぶように発し終えると同時にザラマの持つ片手直剣の剣先がユウキの首に届きそうになるが、あと一歩のところでそれはユウキの前からだけでなく、それを持つザラマの手の中からも消えた。ザラマは再度何が起きたのか分からなかった。分かるのは片手直剣を持っていた右手が異様に痺れたかのように震えていることだけだった。


 ザラマが自分の手に残る痺れを認識すると同時に、少し離れた所でカランと何かが落ちる音が耳に届いた。その音の方へと振り向くと、視線の先には先ほどザラマが持っていたであろう片手直剣が剣身が半分折れた状態で地面に転がっていた。さらにユウキの方へと視線を戻すと、いつの間に鞘から抜き取ったのかユウキの右手には片手直剣を握り締め、横に薙ぎ払ったかのように腕を真っすぐ伸ばしていた。そして、そのままザラマの首元に剣先を当て、再度口を開いた。


「まだやるか?やるなら次は剣じゃなくお前に当てるけどどうする?」


「……くッ!分かったよ!降参だ!煮るなり焼くなり好きにしろ!!」


 ザラマはやけくそ気味に言葉を発すると、その場で地面に倒れるように横になった。ユウキもその姿を見るなり、すぐに片手直剣を鞘に戻すとザラマに向かって口を開いた。


「別に取って食ったりするわけじゃないんだ。そう身構えないでくれ。とりあえず、俺たちはそこに倒れてる三人を連れてこの場から消えるからそれでこのいざこざは終わりにしよう」


 ユウキの言葉にザラマは本当にそれだけでいいのか?と何も要求してこないユウキを怪訝そうな視線を送りながら言葉を返すと、ユウキは思い出したようにさらに言葉を続けた。


「んー……そうだな。じゃあ、一つ俺たちのお願いとして今日起きた事は忘れてくれないか?こっちには元々お前らアスクリムゾン領の奴らとやり合う気はないんだ。それに今回のいざこざが起きた原因も俺たちのお客が道に迷った末に間違ってお前たちの領地に入っちまったってだけで別にお前たちの領地を侵略する気も何もなかったんだからな」


 ユウキはそう言いながら既に亡骸となった二人の冒険者とかなり痛めつけられ、気を失っているダランを指差した。ザラマはユウキが指で示したダランの姿を確認するが、すぐに目を背けた。そして、少しだけ思考する様に瞼を閉じるが、すぐに瞼を開きユウキの方へと向き直ると、事情を知らなかったよは言え悪い事をした、と謝罪の言葉を口にした。


「確かにお前らが彼らを殺したことに代わりはないし、許されないことだが、今回だけはお互いに今日起きた事を忘れる、そして、誰にも口外しないって条件でこの件については終わりにしよう。それでよければ俺たちは彼らを連れてこの場から去りたいんだが、……いいか?」


「あぁ、俺もこいつらが目を覚ましたら誰にも口外しないように伝えておくよ」


 ザラマの言葉にユウキはそうか、とだけ溢すと、バックホルスターから拳銃を抜きとり、『光箱(ボックス)』と『聖棺(ホーリー・コフィン)』を唱えながら三発、光属性の魔力を放った。すると、すぐさま光輝く四角い箱と十字架が刻まれた白く輝く棺が二つ現れ、棺の中に亡骸となった冒険者の二人を、『光箱』の中にダランを仕舞うように運び始めた。


 そして、全ての作業を終えるなり『光箱』と『聖棺』は一瞬眩い光を発し、そのまま姿を消した。さらにユウキはカズとタイガの治療をしていた少女の近くに新たに『闇扉(ゲート)』と唱えながら闇属性の魔力を放った。放たれた魔力はすぐさま形を変え、先ほどカズとザラマの間に現れた黒い空間へと姿を変えると、少女はカズの腕を肩に担ぎ、黒い空間へと姿を消した。ユウキも少女と同じようにタイガの腕を掴み、肩に担ぐと黒い空間へと足を進める。


「あ、そうだ。もう一つ言い忘れてた。さっきも言ったが、後日うちの領主があんたのとこの領主に遣いを出すみたいだからそれを伝えといてもらえるか?」


 ユウキは黒い空間に片足を突っ込んだ所で動きを止めると、黒い空間を呆けた表情で眺めるザラマに思い出したようにそう発した。すると、ザラマも我に返ったように頭を数回、横に振った後に『あ、あぁ、……わかった。伝えとく』、と答えた。


 その返事を聞いたユウキは今度こそ『じゃあ、よろしく』と言葉を残し、黒い空間に姿を消し、数秒後黒い空間も空中で霧散した。


「……あれが噂になってた奴らか」


 その様子を眺めていたザラマは暫くした後に静かにそう呟いた。

次回更新は9/23です

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