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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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騎士の国-6

 謎の集団と遭遇してから暫くの間はお互いに警戒をしながら見つめ合っていたが、痺れを切らしたのかリーダー格の男が口を開いた。


「……お前ら何もんだ?見たところ俺たちの領地のもんじゃねぇよな?まさか『青色』のとこの人間か?」


 ”青色”


 リーダー格の男から発せられた聞き慣れない言葉に一同は顔を顰めながらもその問いかけにタイガが答えようとした瞬間、リーダー格の男はそれを遮る様にさらに言葉を発した。


「いや、お前らの面は見たことが無いが、確実に”青色”の人間だな。無断で俺らの領地に入ったってことはそれ相応の覚悟は出来てるってことだ。お前ら、戦闘準備だ」


 リーダー格の男の言葉を合図に後方で待機していた深紅の鎧の集団はその合図に合わせるように短く返事をし、武器を構える。騎士の国と言われるだけあって彼らが所持する武器は片手直剣、刀、片手用戦棍、大楯、大剣など近接に特化した武器だった。


「待て、青色だとかなんだか分からないが俺たちは—————」


「全員、殺さず生け捕りにしろ!反抗する場合は死なない程度にだったら痛めつけてもいい。行け!!」


 タイガの言葉を遮る様に発せられたリーダー格の男の指示に深紅の鎧の集団は野太い声をあげながら一同に向かって駆け出した。


「俺らも対抗するぞ!武器を構え、距離を取れ!そう簡単にやられるなよ!」


 タイガの言葉に一同も指示通りに武器を構え、迫りくる集団から距離を取り始める。しかし、距離を取ろうとする前に集団の接近する速度の方が早かったせいか、集団の一人が一番手前にいたタイガに襲い掛かった。タイガは即座に対応し、抜刀した刀でその攻撃を受けきろうとするが力の差のせいか後ろへと軽く飛ばされてしまった。


 他の者たちも同じように対応する事は出来ても完全に受けきる事は出来ず、後ろへ飛ばされるか、その場でさらなる追い打ちを食らうかのどちらかだった。そして、数分と経たずにタイガのパーティーメンバーの三人が集団の攻撃に耐えきれずに地面に伏せてしまった。


 カズとタイガもたったの数分で息を切らし、身体の至る所には打撲痕や切り傷が出来ていたが、反対に深紅の鎧の集団たちには誰一人として傷と呼べるようなものはなく、さらに重装備しているにも関わらず彼らは呼吸も乱すことがなかった。


「はぁ、はぁ……なぁ、待ってくれ!話を聞いてくれ!青色だか何だか分からないが俺たちはお前らのいう青色ってやつじゃない!俺たちはエイガルドっていう街から来たんだ!」


 タイガは呼吸が乱れながらも迫りくる集団にそう言葉を掛けるとリーダー格の男は『エイガルド』という単語に興味を示した。だが、すぐに頭を横に振るなり片手を上げた。そして、親指だけ立てると自身の首の前で横に一閃、まるで首を切る様に腕を振り、集団に向かって指示を出した。


「地面に横たわってる三人は殺せ。そこにいる二人は捕虜にして、青色の奴らに突き付けてやる」


「なッ!?」


 リーダー格の男はそう指示を出すと、集団は地面に横たわっている三人に向かって剣を向けた。そして、集団の一人が横たわっているパーティーメンバーの一人に向かって剣を振り下ろそうとした瞬間、リーダー格の男が思い出したようにさらに言葉を続けた。


「あぁ、そうだ。忘れてたが、そこにいる亜人は殺さなくていい。そいつは死ぬ手前まで痛めつけろ。俺らの領地にその汚ねぇ足で踏み入れた罰だ。青色の奴らにもいい見せしめになるだろ」


 リーダー格の男がそう言い終えると、亜人と差した蜥蜴族のダランに武器を振り降ろそうとしていた深紅の鎧の者たちは武器を鞘に納めるなり、ダランを囲み始めた。そして、ダランの姿がタイガたちから見えなくなった途端、鈍い音とともにダランの呻き声が上がった。


「がぁッ!」


「や、やめろッ!やめてくれッ!」


「や、やだッ!まだ、死にたくないッ!た、タイガさん、カズさん!た、助けて……」


 痛々しい悲鳴が上がると同時に残りの二人もその惨状を見て、恐怖の音を上げた。しかし、彼らはそんなことなどお構いなしに悲鳴を上げ、命乞いをする二人に剣を刺した。二人はさらに悲鳴を上げ、痛みで顔を顰めた。何度も何度も彼らは二人に剣を刺し、悲鳴が聞こえなくなるまで刺し続けた。


「や、やめろッ!」


 そんな惨状にタイガは二人をなんとか助けようとするがタイガはいつの間にか目の前に立ちはだかっていたリーダー格の男に蹴り飛ばされ、地面に再度転がった。


「おいおい、興が覚めるようなことをするなよ」


「タイガ!?大丈夫か!!……おい、なんでこんなことをする」


 地面に横たわったタイガを庇うようにカズは手に持っていた武器をリーダー格の男に向かって構えるが、リーダー格の男はまるでその動きが分かっていたかのようにカズの武器を肩に担いでいた大剣で薙ぎ払い、カズの顔面を一蹴した。さらに畳み掛けるようにカズを足蹴にするが、カズは急所だけを守る事に専念しながらリーダー格の男に言葉を掛けた。


「なんでッ、こんなこと、をッ……がッ!」


「なんで、かぁ……そうだなぁ。なんでだろうなぁ」


 リーダー格の男はカズを足蹴にするのを止めると大剣を肩に担ぎなおし、顎に生えた無精髭を優しく撫でながら考え込む素振りをした。カズはその様子を見て、薙ぎ払われてしまった片手直剣を地面に這いつくばりながら掴み取ると、それを杖にするように地面に立て、重くなった身体をなんとか立ち上がらせようとした。


「おぉ、がんばるね。少年。おっと!そうだった、先ほどの質問だけど教えてやるよ。なんでこんなことをするかって言うとな」


 ゆっくりと立ち上がるカズの様子に関心の表情を浮かべたリーダー格の男は髭を撫でるのを止めるなり、一見優しそうな表情を一変させ、口を開いた。


「なんでってそりゃあ、俺たちの領地に無断で侵入したのが原因だろうがよぉ。まぁ、なるべく苦しませずに殺してやるから安心しな。……じゃあな、少年」


 リーダー格の男はそう言い切ると、フラフラとギリギリの意識で立ち尽くすカズに向かって肩に担いでいた大剣を振り降ろした。カズは迫りくる刃を霞んだ視界で捉えながら死を覚悟していた。そして、眼前に迫った瞬間、カズは死ぬ覚悟とエイガルドに残した仲間に謝罪の言葉を口にしながら瞼を閉じ、大剣が振り下ろされるのを待った。


 しかし、いつまで経っても痛みはない。もしかして本当に苦しまずに殺されたのかと少しだけ瞼を開くと、目の前には謎に顔を顰め、額に巻く赤いバンダナを少しだけ湿らせながら困惑するリーダー格の男の姿があった。そして、彼の両手にはあるはずの大剣が刀身ごと姿を失っており、彼の両手が掴む柄の部分だけが残されていた。


「……一体、何が?」


 リーダー格の男がそう言葉を溢すと、周りにいた深紅の鎧の集団も何が起きたのか分からず困惑しており、カズも同様に霞む視界で何が起きたのか確かめようと辺りを確認した。


「あー、悪いんだけどよぉ。そいつらを殺すのは止めてくれないか?」


 すると、どこからともなく謎の声が聞こえた。突然の声にリーダー格の男含め集団たちは周りをさらに確認し、声の主を探そうと必死に探すが、声の主はどこにもいなかった。


「誰だ!出てこい!」


 リーダー格の男の声に反応するかのように道なりに生える木々から葉擦れの音が聞こえ始める。そして、数秒後二人の間に黒い空間が突如現れた。その黒い空間は見慣れているカズにとってはなんなのか理解出来た。そして、安心からなのか微笑を浮かべながらどこ行ってたんだよ、と小さく溢した。

次回更新は9/16です

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