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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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騎士の国-1

 一つ聞かせてくれ、とトウゴは返答を待つユウキにそう言葉を発し、その後に放たれた問いかけにユウキは俯いて口を噤んだ。『この先に何かあるのか』というトウゴの質問にどう答えようか迷っていたからだ。


 この先に何かあるのか、という質問に素直に答えるとしたら『ある』と答えるのが正解だが、そう答えたらほぼ確実になんで分かる、と聞かれるだろう。門の先に行ってもいないのに何故ユウキにはそれが分かるのかさらに質問攻めにあうことは少し考えれば誰でも分かる事だった。


 しかも、シノには『未来予知』の事は黙っているようにと諄く言われたため、ますます『ある』とは言えず、また、他に良いはぐらかし方も思いつかなかったせいかユウキは静かに口を噤んだままだった。


「……答えたくないならいい」


 トウゴに問われてから暫く経った頃、いつまでも答えないユウキに痺れを切らしたのかトウゴは諦めた様にため息を一度吐いてからそう言葉を発した。その言葉にユウキは今まで下に向けていた顔をトウゴへと戻した。そして、ユウキが顔を上げると同時にトウゴはさらに言葉を続けようと口を開いた。


「だが、ちゃんとした理由が離せないなら悪いが俺は手を貸すことは出来ない。流石に理由も分からない上に成功するかも分からない、何が起きるかも分からないことに易々と手を貸すことは無理だ。申し訳ないが、他を当たるか、諦めてくれ」


 トウゴはそう言ってユウキの申し出を断った。そして、この場から去ろうと先ほどまで自分のためにユウキの案を批判していた仲間たちに声を掛けていた。ユウキもトウゴの答えを察していたのかそれ以上懇願する事なく、俯いたままトウゴ達が去るのを待っていた。


「じゃあ、悪いが俺たちはここらで失礼するよ。力になれずすまなかった」


 トウゴは去る間際に未だ俯いたままのユウキに申し訳なさそうな表情を浮かべながらそう言葉を放った。しかし、トウゴ達が去ろうと歩を進めようと足を一歩前に出した瞬間、今まで口を閉ざし俯いたままのユウキがようやっと言葉を発した。


「待ってくれ!!ようやく俺の中で踏ん切りがついた。お前の質問に答えさせてくれ」


 その突然の言葉にトウゴたち一同は足をピタリと止めたが、振り向くことはなくトウゴは右手を上にあげ、ひらひらと横に振りながらもう遅い、と冷たく言い放った。そして、再度歩を進めようとするが、ユウキもトウゴの態度に屈する事なく言葉を発しようと口を開いた。


「別に話を聞いてくれるだけでもいい。正直、この話は誰に話しても信じてもらえるとは思ってないからな。でも、俺の仲間を助けるために頼む!力を貸してくれ。お前の力を、俺に仲間を助ける手助けをしてくれ!このままじゃあいつだけじゃなくまた大勢の人間が死ぬ!!」


 また大勢の人間が死ぬ、という言葉に引っかかったのかトウゴは再度進めようとしていた足を止め、ユウキの方へと振り返った。他の冒険者たちも同じように気になったのか視線をユウキに向け、またそれはマシルも同じだった。


「おい、それはどういうことだ?また、大勢の人間が死ぬって」


「信じられないかもしれないが、俺には『鑑定』、『身体強化』の他にもう一つ誰にも話したことの無いスキルを持ってる。それが『未来予知』。俺はそのスキルで仲間が、見知った人間が赤い軽鎧に身を包み、額に鎧と同じように赤いバンダナを巻いた男たちに殺されるのを視た。場所もエイガルドではない上に、ここ何日か俺たちは修行をしながらエイガルドに住む冒険者たちを観察していた。赤いバンダナと軽鎧を目印にしてな」


 そこまでの説明でようやく今まで一緒に生活していたユウキの行動に合点がいったのかマシルは小さい声であっ、と発した後、納得したような表情を浮かべていた。そして、トウゴは静かにユウキの言葉を聞き、思考を繰り返していた。


「だけど、やっぱりエイガルドにはそんな特徴の男はいなかったよ。似たような特徴したやつらはちらほらいたけどやっぱり違った。似てるだけで使用する武器が違ったり、クラスが違ったりだった」


「なるほど、お前の言うその男がお前の仲間を殺す、と。だが、確証はあるのか?殺されるっていう確証は。正直、お前が視ただけで本当に起きるかは分からないだろ」


 トウゴの問いは正しかった。ユウキ以外誰も視ていないから信憑性も薄い上にいつどこで起きるのかも、本当に赤いバンダナに赤い軽鎧に身を包んだ男がいるのかも分からないのに信じるのは到底無理な話だった。しかし、ユウキもそれを分かっている上でトウゴ達に話をしていたからか、信じてもらえるとは思っていなかった。


 だが、トウゴの最初の問いの答えとしても、(ゲート)の先に行くための小さな希望としても手放したくないからかユウキはシノの静止を振り切ってそう説明した。人を犠牲にするくらいの事をするのだ。自分を犠牲にするくらいの覚悟を持っていかなければ相応の対価にもならないだろうとユウキは思考を繰り返した上で説明していた。


「確かにお前の言う通り本当に起きるかはその目で見ない限り分からないと思う。だけど、この未来予知で視たのは今回だけじゃない。摸擬戦の時にも一度同じように視た。そして、あの時視た事は現実に起きた。俺はそれを目の前で体験した。それが証拠だ」


 そこまで言い切った後、改めてユウキはトウゴに頭を下げ、協力を乞うた。暫くの間、ユウキが頭を下げる中、トウゴは一人思考を繰り返した。ユウキの『未来予知』というスキルとそれで視た内容の事、そしてそれらの信憑性や確証。トウゴも流石にこの状況で冗談を言うやつではないと密かに使用していた自身の能力『真偽』で確認していたため分かっていた。


「……分かった。正直、お前の言うことは未だに信じられないが手は貸そう」


 トウゴは諦めた様にため息を一度吐いた後にそう言葉を発した。そして、それと同時にユウキも最初は信じられないといった表情を浮かべていたが、すぐに感謝の言葉を述べた。


「だが、お前に協力する前に一つ言っておきたいことがある」


 ユウキが感謝の言葉を述べた後、ユウキが準備をしようと動き始めた瞬間トウゴはユウキにそう言葉を発し、さらに続けた。


「お前は判断力が遅すぎる。正直なところ、これが魔物や人との戦いだったら今度はお前のその判断力の遅さで仲間を失うかもしれないぞ。一人なら判断力が遅くても死ぬのはお前一人だが、仲間がいるなら死なせないようすぐに判断できるように努力しとけ」


 トウゴの言葉に何か言い返そうかとも思ったが、ユウキは何かを思い出したようにそれらを飲み込み、トウゴの言葉に分かった、とだけ言葉を返した。

次回更新は8/12です

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