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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-20

 暗く染まった空を照らすかのように陽が昇った頃、ウトウトと眠そうに樹の幹に背中から凭れかかるカズに身体ごと向けてからタイガは口を開いた。


「……じゃあ、俺は時間だから次に行くわ。お前も時間を知らせる『火球(ファイヤー・ボール)』が放たれるまでには戻って来いよ」


 カズはタイガの言葉に無言で頷くと、体力が底を尽いたのかタイガを最後まで見送ることなく視線ごと頭を下げた。そして、タイガの気配が遠のいていくことを感じながら暫く睡眠を取ろうと瞼を閉じた。もちろん、眠りにつく前には金属製の小皿の上に火のついた魔物避けのお香を自分の近くにおいてある。


 二人はお互いの気持ちをぶつけた後、カズの申し出によりこの時間まで手合わせをしていた。それも気持ちをぶつける前以上に激しく、かなり危険な手合わせだった。手を抜くことも休むこともなく、ただただお互いの持てる技を全てぶつけていた。


 最初こそカズはタイガの攻撃にギリギリのタイミングで避けるか防ぐだけだったが、時間が経つにつれ、タイガの剣技を受けていくにつれ少しずつ攻撃に手を回すことが出来、陽が昇る頃には逆にタイガに攻める事も増えており、さらには見よう見真似だがタイガの扱う篠崎流という型の技をいくつかタイガに向けて放つこともあり、タイガ自身もそのカズの成長力には目を見張っていた。


 しかし、その戦いも陽が昇り始めた頃には終わりかけていた。理由はカズの体力切れと、能力の酷使による強烈な頭痛によってまともに剣が振れなくなってしまったからだ。カズは最後の最後まで戦おうと無理を承知で剣を振り上げたが、カズの状態に気付いたタイガがもう終わりだ、と刀を鞘に納めたため振り上げられた剣は振り下ろされることなく地面に落ち、カズの身体も限界が来たように地面に膝から崩れた。


 戦いの最中は痛みに気付かなかったのか、それとも気付かないようにしていたのか地面に倒れた瞬間、蹲る様に身体を丸め、目尻に涙を浮かべながら今もなお訪れる激痛に頭と左目を押さえながら呻いた。その様子にタイガも異常だと気付き、暫くの間介抱していたが、陽が昇るにつれ落ち着きを戻したのかカズの表情が安らかになった頃、カズを樹の幹に凭れかかれるようにと移動させた。


 カズもタイガの行動に心の中で感謝と謝罪をしながらしばらくの間、意識を手放した。そして、タイガが広場に戻る頃、ある場所で爆発音に似た音が聞こえた。しかし、その音に気付いたのは聴覚に優れた獣人たちだけであった。



★☆★☆★



 タイガとカズが別れた同時刻、ブレスタに続く橋の上では未だに少年の模索が続いていた。橋の上に聳え立つ(ゲート)からは魔法特有の轟音とともに魔力の残痕ともいえる白煙が上がっていた。


「…………やっぱだめか」


 門に向かって武器を向ける少年は門の近くに上がる白煙が消えていくのを見ながらそう言葉を溢した。既に何発放ったのかは覚えていないが、夜が更ける頃から陽が昇る時間までかなりの量の魔法を門に向かって放っていた。さらに、魔法だけでなく片手直剣や投げナイフなど物理的な攻撃も試してみたが何ら意味をなさなかった。


 しかし、門どころか門の中にある薄壁すら壊れたり罅が入るどころか傷一つ入りやしないほど頑丈だった。その頑丈さに頭を抱えていた少年はどうにかして門の先に行く方法が無いか思考を繰り返すが、魔力を酷使したために身体も疲弊してしまったのか中々思考が纏まらなかった。


「薄壁が魔法で出来てるとしたら闇扉(ゲート)が使えると思ってやっても何の成果もないし、他の属性の魔法は魔力を吸い取られて消滅してる様にも見えるし、やっぱ騎士とガーディアンしか通れないのか?……いや、でもだったらなんであんなのが視えたんだ?しかもあれを視た時の位置的に俺もこの先にいたはずだ。…………あー!もうわけわかんねぇ!!」


 少年はブツブツと誰にも聞こえない様に上手く纏まらない思考を纏めようと口にするが、結局正解が見つからず、頭をガシガシと乱雑に搔きながらそう叫んだ。


「大丈夫?少し休憩しない?」


 すると、背後からこの場所まで一緒に来た少女が声を掛けてきた。少年も少女の言葉に顔を向けると、少女は両手に液体の入ったマグカップを持っており、マグカップからは淹れたてなのか湯気が立っていた。少年はマグカップを受け取り、中を見ると少しドロッとしている黒い液体が入っておりそれを一口、慎重に口に運んだ。そして、口に含んだ瞬間少年は顔を顰めた。


「うッ、これってまさか……」


「うん、体力回復用のマグ茶だよ。濃さによっては眠気覚ましにもなるけどね」


 少女はそう言いながらもう一つ自分の持っているマグカップを口に運び、一口飲んだ後少年と同じように顔を顰めた。少年も少女の様子を見てもう一口それを呑むとゆっくりと息を吐き、身体の力を抜いた。


「それでどう?私たちも魔法とかできる事は手伝ったけど、この先には行けそう?」


 少女の言葉に少年は答えず、首を振るだけだった。その様子に少女も少し残念そうに表情を変えそっか、ととだけ言葉を溢す。


「そういえば、あの門の中に張ってある薄壁は魔法なんだよね?鑑定はしたの?」


「あぁ、一応したけど情報は何も得られなかったよ。門自体に魔力が通ってるから薄壁は魔法だっていうのは断定出来るんだけど属性まではなぁ。……薄壁の色的には光属性の物なんだろうと思って闇扉と同等の移動手段のある『瞬光(ワープ)』も使ってみたんだけど、魔力を吸われるだけで消えちゃったよ」


「じゃあ、やっぱ私たちはこの先に行けないのかな」


 少女の残念そうな言葉に少年も半ば諦めた様子でそうかもな、と言葉を溢し、ため息を吐く。


「……せめて騎士やガーディアンみたいに門を潜れる条件が解ればいいのにね」


「そうだな。条件が解れ、ば…………」


「どうしたの?」


 突然、言葉を噤み、再考し始めた少年の様子を心配そうに少女は声を掛けるが、思考を深めてしまっているのか少女の言葉にも気付かず、ブツブツと言葉を溢す。そして、少年がしばらくの間思考を続けた後、何か思いついたのか顔を上げ、四人の冒険者の所に向かって行った。少女も何事かと慌てて少年を追いかけると、少年は四人の冒険者の内の一人ガーディアンのトウゴという男に頭を下げて懇願していた。


「トウゴ頼む!!俺に協力してくれ!!」


「いや、だから協力を頼む前に説明をしてくれってば」


 どうやら説明もせずに少年は頭を下げていたようでトウゴは困惑した様子で少年に説明を乞うていた。他の冒険者たちも少年の奇行に困惑しているようで、少女はその様子に少し呆れながらも少年の頭を軽く叩いて落ち着くように言葉を発した。少年も頭を叩かれ、我に返ったようにすまん、とトウゴ達と少女に一言謝ると、続けて説明を始めた。


 簡単に説明すると、少年の考えは門を通れる条件を持つガーディアンのトウゴに少年と同じ魔法を薄壁に放ってもらい、その先に少年が通るということだった。しかし、その考えは簡単なことではなく少年が今までやっていたように白壁の表面に放つのではなかった。それはトウゴが薄壁に手を突っ込み、薄壁の中から魔法を放つということだ。


 まだ、一度も薄壁に触れていないというトウゴに何が起きるか分からない門に手を突っ込み、あまつさえ魔法を放って道を作れというかなり危険な考えだった。もちろん成功するかも分からない考えであり、トウゴの身体に危険が及ぶかも知れない考えにトウゴ以外の冒険者と少女は批判の声をあげた。


 少年自身も批判される、拒否される覚悟でそう説明したからか、周りの者の反応にも驚きもせずトウゴ自身の答えを待つが、トウゴは答えを出さず口を噤んだままだ。少年もこれで断られたら新しい案をまた一から考え直すだけだ、という気持ちを持っているが、ただ少しでも可能性があるなら試したいという気持ちも胸に持っており、顔には出さないが心の奥底ではトウゴに頷いてほしいと祈りながら返事を待っていた。


 返事を待つこと数分、とうとうトウゴは口を開いたが、その言葉は少年の求める言葉ではなかった。


「……一つ聞かせてくれ。お前は何のためにこの先に行こうとしている。ここに来てから気になってたんだ。いや、その前からか。お前と彼女に合ってからずっと気になっていた。何故、お前はこの先に行こうとするのか。何故、この先に執着するのか俺には分からない。この先に何かあるのか?俺はその理由を聞かなくちゃ答えを出せない。教えてくれ……ユウキ」

次回更新は8/5です

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