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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-18

 サクラと別れてからそれなりに時間が経ち、明るかった空も陽が落ちたせいか暗くなっていた。時刻的には結界が縮小し始めて半日近い時間が過ぎていた。すでに結界の壁からはかなり離れた所まで移動しているせいで今も縮小しているのかは解らないが、自分が先ほどまでサクラと戦闘していた場所はすでに結界の範囲外に出ていることは間違いなかった。また、結界の範囲がかなり狭まったせいかサクラとお別れた頃には聞こえなくなっていた爆発音やら叫び声も時折だが、聞こえるようになっていた。


「ぷはッ、……あと半日といったところか?ここに来るまでかなり時間掛かっちまったけど、これでなんとか耐えられるな」


 カズはつい先ほどやっと手に入れることが出来た水を口に運び、乾ききった喉を潤してからそう呟く。サクラと別れてから数時間後、カズは運の悪いことに森の中で同じ参加者の冒険者を追いかけながら魔法を放ちまくるアキラに出会ってしまい、そのまま巻き込まれる形で一時間程その冒険者と結託しながら戦うことになった。


 しかも、最悪なことにその戦闘の際にサクラとの戦闘以上に能力と体力を酷使してしまい、さらに二時間弱動けなくなてしまった。再び動けるようになったのは空が完全に暗くなった頃で視界も悪く多少道に迷いながらもカズは疲れからかフラフラとした足取りでなんとか補給所に辿り着いた。


 まだ戦っていないのはタイガ一人。だが、今のカズの状況的に満足に戦うことは出来ないだろう。出来る事ならもう少し時間が経ってから体力がそれなりに戻ってから戦いたいとカズは残り少ない携帯食料を口に運びながら考えていた。


「戦うことを考えるとなるとやっぱ視界が見やすい点では朝から昼手前の時間帯だよな。あいつの剣筋はソウジと同じで見づらいから夜は不利になるから最悪、この時間帯に出会ったら逃げるか、先に仕掛けて終わらすかだな」


「まぁ、どっちももう無理だろうけどな」


 これからの戦いにおいて自分の中で整理していると突然背後から声が聞こえた。カズは驚きながらも声のした方を振り返り、武器に手を伸ばす。声がした方向に視線を向けると、そこには水色を基調とした軽鎧で全身を包んだ男が片手を少し上げると同時によお、と短く挨拶をしてきた。カズは声を掛けられるまでまるで気配がしなかった男に冷や汗を掻きながらもそれを悟られまいと睨みつけながら口を開いた。


「毎回思うけどよ、攻略隊に所属する人間は一々人を驚かせないと気が済まないんかね。タイガさんよぉ」


 嫌味たらしくそう言葉を発するカズにタイガと呼ばれた少年は笑みを浮かべながらも悪いと言葉を口にしたが、実際は微塵も思っていないだろうとカズはタイガの表情を見ながら思い、ふぅと一度短くため息を溢した。


 一度頭の中を整理しようとタイガに警戒しながらどうするかを思考し始める。逃げるか戦うか。逃げるとしたらどのような方法で逃げるのか。戦うのならどういう戦法で行くかを考える。今の状況的に能力はもう体力的に使えない。酷使すれば戦いに決着をつける前に倒れるだろうとカズは確信していたためか、出来ることなら逃げるなりしてもう暫く身を隠したかった所だったが、タイガの事だから簡単には逃がしてくれはしないだろうとここで出会ってしまったことに多少後悔する。


「さて、俺がここにいてお前がここにいるってことはもう言いたいことは分かるよな?」


 そんなことを考えていたらタイガが言葉を発した。それも先ほどまでとは違い、笑みを浮かべていた表情は真剣な顔つきになり、一瞬たりとも気の緩みを許さないといった表情を浮かべ、声色も陽気な感じから低く重苦しいものに変わっていた。それだけでもカズは気圧されそうになるが、グッと息を呑んで身構える。


「逃がしてくれるとかそういうのはなさそうだもんな。雰囲気的に」


「当たり前だ。……それじゃあ始めるぞ!」


 タイガはそう言うなり、腰に差していた日本刀に手を伸ばし、柄を握りながら駆けだした。カズも遅れながらも片手直剣を抜き、数歩下がりながらも防御の形に入る。


「篠崎流「無剣」参の型『無爽迅』!」


 タイガはそう型の名を発しながら、駆ける途中で抜いた刀の切っ先をカズに向けそのまま貫かんとする速度で前に出した。カズはすんでの所で迫りくる切っ先を持っていた片手直剣で受け流すが、少しだけ掠ったのか頬に小さい傷が出来たことに気付いた。


 カズはすぐさま追撃を警戒し、背後に通り過ぎていったタイガに身体ごと向けるが、追撃はいつまで経っても来ることはなかった。あまりの速度で走っていたのかそれとも止まるときに足を地面に擦ったからなのかタイガの周りには少なからず土埃が舞い上がっており、姿を完全には捕らえられなかった。


「いや~流石だな。あの初撃を避けるどころか受け流すとはなぁ。そんなことするのはソウジくらいだぞ」


 舞い上がる土煙の中でそれを払うように手を顔の前で振りながらタイガは感心したようにそう言葉を発した。さらに、この攻撃で大体の冒険者が悲鳴を上げてたのに、と少し悔しそうにも言いながらも言葉を付け足していた。なるほど、今まで聞こえていた悲鳴の原因はやはりこいつか、と呆れながらもそうかよ、と素っ気なく言葉を返す。


「さてさて、まだ戦いは始まったばかりだ。それに時間もたっぷりあるから楽しませてくれよ」


「時間があるって他の冒険者はいいのかよ?」


「他の冒険者?あぁ、その心配は必要ない。何故なら参加者五十五名中五十四名すでに出会った上にふっ飛ばしたからな。そして、お前は最後の五十五人目だ」


 タイガは軽く口の端を上げながらそう言葉を発し、だから時間はたっぷりあるって言ったろ?と言葉を付け足した。カズもその言葉を聞いた瞬間、ある事を察した。もう勝敗が着かない限り逃げることは出来ないということを。そして、それが分かった瞬間、逃げられないという絶望感も少なからず湧いたが、今ではそれ以上に残りの時間を倒れたりしない限り、ギリギリまで自分よりも格上の相手を出来るという嬉しさに身体を震わせた。


 例え負けてもタイガにとっては最後の相手でもある。カズにとってもだ。それを考えた瞬間、後先考えずに全力を出していいということにカズは笑みを浮かべながら口を開いた。


「……そっか。じゃあ、俺も全力を出してお前に勝ちに行こうとするよ」


 カズの言葉にタイガも一瞬笑みを浮かべ、改めて日本刀を構えなおしてからカズに向けていつでも来い、と一言言葉を発した。

次回更新は7/22です

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