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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-16

 戦闘開始の合図とも言える矢を空に一発放った後、サクラはさらに一発今度は魔力を込めた矢を空に放った。そして、それを放つとともにカズには聞こえない程度の声量で魔法を唱えた。


閃光雨(シャイニング・レイン)


 そう唱えた瞬間、魔力を帯びた矢は空中で一度霧散した。そして、すぐに霧散した矢は大量の光の矢と形を変え、空一面を光で覆い、カズを中心に降り注いだ。しかも、サクラの攻撃は上空から降り注ぐ『閃光雨』だけでなく、正面からも『光矢(ライト・アロー)』を絶やすことなく撃ち込んでくる。


 例え、『光矢』を避け切ったとしても『閃光雨』にやられ、逆に『閃光雨』の範囲から逃げきれたとしても『光矢』により、負傷は免れない。そんな状況を『予測』で確認したカズは完全に逃げ場を失くしたと諦め、構えていた剣を降ろしてしまった。その様子を木陰から窺っていたサクラも勝負は着いたなと構えていた弓矢を降ろした瞬間、『閃光雨』がカズを中心に轟音とともに降り注ぎ、土煙を上げた。


「さて、ここら一帯はもういなさそうですね。次はどこら辺に行きましょうか」


 サクラは完全に命中したであろうカズの姿を確認することもなく、次に相手する冒険者の位置を確認しようと『広範囲索敵』を発動した。すると、驚くことにかなり近い、それも先ほどカズがいた方角から一つ反応を確認した。カズがいた方角ということに少なからず気にはなったが、また長距離移動しなくていいということに歓喜し、あまり気にしていなかった。そして、その方角を確認しようと視線を向けた瞬間、どこからともなく眼で捉えるのも難しいほど細く短い針が飛んできた。


「ッ!?」


 すんでの所で何とか躱すことは出来たが、無理やりな体勢で身体を動かしてしまったために体勢を崩してしまった。視線だけで針が飛んできた方向を確認すると、サクラは驚愕の表情を浮かべた。


「な、なんでッ!貴方がまだ立っているんですか!」


 針が飛んできた方向には土煙が完全に晴れる中、一人の男が左手に筒を持って立っていた。着ている服はところどころ裂け、そこから覗く肌には傷とともに血液が流れており、見ているだけで痛々しかった。


「……立ってる理由?そんなの決まってるだろ」


 カズはボロボロになった身体に鞭を打つように動かし右手に持っていた片手直剣をサクラに向け、そう言葉を紡いだ。


「あんたに勝つためだよ!」


 完全に姿を現したカズは『予測』を使いながらサクラに向かって駆け出し、剣を振るう。サクラもカズがまだ立っていることに驚愕はしたものの、自身に向かってくるカズに降ろしていた弓を構え、矢をいくつか放つ。しかし、それらは『予測』を使ったカズには掠りもせずにまるで矢がカズを避けるかのように飛んで行った。


「なッ!?」


 そんな事態にサクラはさらに驚愕の表情を浮かべるが、慌てることなく腰に仕舞っていたダガーを右手で抜きとり、逆手に持つとカズの剣を難なく防いだ。ガキンといった金属音がいくつか鳴り響き、二人は一度距離を保とうとお互いに後方へと三歩ほど下がった。


 カズは『予測』による副作用の頭痛と疲労で多少息が上がっていたが、サクラは変わらず呼吸の乱れがみえなかった。


「なるほど、貴方が『閃光雨』と『光矢』を受けても立っていられる理由はそれですか」


 サクラは改めてカズの顔を見てから、合点がいったという表情を浮かべ、自分の左目を指で示しながらそう言葉を発した。


「印による能力。おそらく【強化型】の能力ですね」


 サクラの言葉にカズはあぁ、そうだとだけ短く返し、先ほどから襲ってくる頭痛と左目の痛みに手で左目を押さえる。そんなカズの様子にサクラは物珍しい表情を浮かべ口を開いた。


「珍しいですね。能力を使って痛みが生じるなんて。見るからに左目に能力が宿っているようですね。そんなにつらいなら諦めたらどうです?」


 サクラは絶え間なく訪れる痛みに左目を押さえるカズに向かってそう言葉を放つと、カズは一瞬だけサクラの言葉にピクリと身体を震わせ反応を示した。そして、無理やり痛みを紛らわせるように何度か深呼吸を行い、サクラに猛禽類の様な鋭い視線を向けた。


「諦める?馬鹿な事言わないでくれよ。生憎諦めるつもりも負けるつもりもないんだ」


 そう言い放つカズにサクラははぁ、と一つため息をついて弓を構えなおした。


「そのようですね。なら、さっさと終わらせましょう、かッ!」


 サクラはそう言葉を発するとともに矢を放ち、カズに向かって走り出した。カズも飛んできた矢を『予測』で難なく避けると、迫りくるサクラに向かって剣を振るった。再度訪れる金属音が辺りに響く。刀身の短いサクラの方が手数は多いもののほぼの攻撃はカズの『予測』によって防がれてしまい、ただただ剣戟による金属音が響くだけだった。


 しかし、いつまで経っても決着がつかないことに焦燥したのかサクラはカズに攻撃を弾かれると同時に再度、後方へと下がった。カズも深追いはせず、その場で乱れた呼吸を整えようと深呼吸を何度か行う。


「いつまで防いでいるつもりですか?本当に勝つ気あるんですか?」


「はぁッ、はぁッ、……うるせぇな。勝つ気がなきゃいつまでもこんな面倒な事してねぇよ。それにこっちにだって準備は必要なんだ」


 カズの準備という言葉にサクラは訝し気な視線をカズに向けるが、気にしてもしょうがないと判断し、口を開いた。


「準備が必要というならそれが終わる前に私が終わらせてあげますよ!」


 そして、そう言い切ると両手を前に出し新たな魔法を唱え始めた。


閃光刀(ライトニング・ナイフ)


 魔法を唱えた瞬間、サクラの両手の平に魔法陣が展開され、そこから顔を出す様に光のナイフが姿を現した。さらに、サクラは左足のブーツに隠していたナイフも取り出し、それも逆手で持ち構えた。


「今度は私の攻撃すら防げないと思いますので覚悟しておいてくださいね」


 サクラはそう言って再度カズに向かって駆け出し、『閃光刀』をカズに向けて飛ばすとともに斬りかかった。カズに『閃光刀』とダガーが届く瞬間、サクラは自身の眼を疑った。


「……え?」


 カズに向けた刃たちはカズに届くことなくいつの間にか全て撃ち落とされていた。その事実にサクラは理解が追い付かず、ダガーの無い右手は易々とカズに受け止められた。


「攻撃が全て防がれるからって数増やしゃ当たるって訳じゃねぇだろ」


 目の前から聞こえるカズの言葉にサクラは視線を向ける。しかし、その視線はカズの顔を捉えることなくいつの間にか空に向いていた。サクラが出した一瞬の隙を突いてカズは左手に持っているナイフも奪い取り、そのまま足を払い横に転ばせたのだ。


「これで勝負ありだな」


 結局最後まで何が起きたのか理解できぬまま勝負は着いてしまった。サクラは転ばされた身体を起き上がらせようと地面に手を着いた瞬間、ドサリと近くで何かが倒れる音が聞こえた。サクラが音のした方に視線を向けるとそこには痛みに苦痛の表情を浮かべ、地面に伏すカズの姿が合った。


「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか!?」


 サクラが声を掛けるにも反応が無い。サクラは一応カズの胸に手を当て、心臓の音を確認すると心臓は問題なく動いてはいるようで脈拍は確認できた。という事は、やはり能力の副作用かとこれまでのカズの様子を思い出し、ため息を吐いた。


「……仕方ないですね」

次回更新は7/8です

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