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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-15

 結界が動き始めてから約一時間が経った頃、カズはある違和感を覚えていた。それは光属性の魔法が空に放たれてから一時間、謎の爆発音と人の叫び声が絶え間なく聞こえていた。今までも魔法による爆発音や冒険者たちの叫びや雄叫びといった声は聞こえてはいたのだが、流石に今のように絶え間なく様々な方向から聞こえてくるのは異常だった。


 だが、カズが違和感を感じていたのはそれだけじゃなかった。


「やっぱりズレてる、よな……」


 カズは前日、チャナと遭遇した場所であり、魔物が樹上にいたカズたちを捕えようと木々を倒したおかげで少しだけ開けた場所まで来ていた。しかし、結界はカズが寝床として使っていた樹の半分ほどが結界の外に出ており、魔物に倒された木々もいくつかは結界の外に出ていた。


 カズは結界が見える位置に移動する前に光属性の魔法が空に放たれてから直後と言っていいほどのタイミングで様々な音が聞こえていたため、カズは一度近くの樹に登り、樹頭から現在位置を確認するとともに様々な音が聞こえる方角を確認していた。そして、音の方角は最初に集まっていた広場がある辺り大体三方向に分かれて広がっていた。


 ちなみに、先ほどから聞こえていた爆発音の正体は火属性の魔法によるものだと、三方向の内の一方向、カズのいる位置からはかなり離れた方角に火属性特有の残り火が近くの木々に類焼していたのを確認できた。


 さらに、他の方向を確認していると広場がある辺りから真っすぐ進んだ方向からは、まるで大猪が木々を薙ぎ倒すかのように木々が倒されていくのが確認できる。まだ、それなりに距離があるため、それほどこちらには近づいては来ていないはずだが、ここからでも木々が倒されていくのが確認できるとなるといつ来てもおかしくないな。それに正直な所、カイザや他の冒険者にあんな芸当を出来る者はいないと思うと同時に今まで感じていた違和感の正体に理解がいった。


 この二日間、攻略隊の七人には遭遇していたが、一度もタイガ、サクラ、アキラの三人に出会うどころか目撃情報すらなかった。カズ自身も何度か他の冒険者たちに出会い、話を聞いていたため心のどこかで疑問を持っていた。何故残りの三人の目撃情報が一切ないのかと。


 そして、訓練の最終日。突然、三日目に入ったことを知らせる正午の時間帯に空に放たれた光属性の魔法。樹頭から確認するまではただの誤射か何かと思ってはいたが、今ならこれが合図だったのだとはっきり言える。それに加えて、結界の縮小。これは直接確認するまでは気付かなかったが、これも合図によって縮小を開始したのだろう。しかも、この結界は遠くからでも視認は出来るが、距離においては気付いている者も少ないんじゃないかと思う。大方、自分たち冒険者の対応力・判断力を見極めるつもりだろう。


「理由が明確ならとにかく動き回って、一人一人相手するしかないよな。流石に三人纏めてとかは止めてほしいし」


「なら、最初の相手は私がしましょうか?」


 突如、背後から聞こえた声にカズは身体を強張らせながら振り向いた。しかし、どこにも声の主の姿はない。しかも、それ以降声も聞こえなくなってしまった。聞こえるのは時たま吹く風が葉擦れを起こす音だけだ。


 だが、声色からして声の主が誰なのかはすぐに分かった。おそらく、まだ出会っていないハンターのサクラだろう。さらに、彼女には『広範囲索敵』という魔力を消費すれば使用する事の出来る能力を持っている。自分がどこにいようが見つかるのは時間の問題だった。


 カズは声だけの問いかけに答えることもなく、片手直剣を抜き取り、声のした方角から見える範囲までを警戒範囲に入れ、睨みつけるように視線を向けた。それから数秒後に、驚くことに二方向から矢が飛んできた。一つはカズが視線を向けていた目の前から、もう一つはまるで死角を突くかのように見えづらい右後ろ斜め方向から矢が飛んできた。しかも、同じタイミングだった。


 カズは目の前の矢を剣で落とすようなことはせず、左に大きく動き出し、そのまま木々の合間を走り抜けるように駆けだした。正直な所、姿が見えないんじゃ予測のしようがないし、あのまま結界を後ろにしていたら逃げる隙もなく的にされるだけだ。なら、彼女と同じように視界の悪い木々の中を移動すれば、位置を知られるとしても簡単には矢は届かないだろうとカズは考えていた。


 どうやら、カズの考えは当たっていたようでそれ以降、矢は飛んでこなかった。だが、彼女自身が近づいてきているのは微かな気配で察知できた。


「位置的にまだ結界に近いか?結界からはかなり離れたとは思うが……。あ、そうか。縮小してるんだったな。だったら、早い事、片を着けて離れよう。後ろに結界が迫ってるんじゃ動きづらいからな」


 カズは左に大きく動き出してからそのままサクラの背後を取るように大きく回り込むつもりで移動しており、今は身体全てが隠せるほど大きな幹の後ろに隠れ、サクラがおそらくいるであろう方向に警戒を向けていた。すると、サクラもカズの視線に気づいたのか木々しか見えない位置から再度声が聞こえてきた。


「流石ですね。最初の攻撃を難なく避けるとはやはり、貴方は気配察知が上手いですね」


「そりゃあ、どうも。それで?最終日になってやっと動き出した理由は?」


 サクラの言葉に一瞬位置バレ防止のために言葉を返さずにいようと思ったが、よくよく考えればすでに彼女の能力で大体の位置はバレているんだと思い出し、口を開いた。


「別に深い理由なんかないですよ。ただ、二日もの間、それなりに距離のある範囲を七人という少ない人数で動き回ったんですから、最後の一日くらいは広場付近で待機していた私たちが思い切り暴れてあげようというソウジさんからの言葉です」


 そう言葉を吐き出すサクラは言葉の最後にまぁ、私は別にどっちでも良かったんですけどね、と言葉を付け加えた。なるほど。サクラの言葉が本当ならあの爆発音の正体はアキラの魔法で木々を薙ぎ倒しているのはやはりソウジということか。


「それに結界の近くにいたということは結界の縮小についても気付いていると思いますし、縮小の理由もそれとなく察しているんでしょう?」


 サクラはさらに言葉を続けてきた。しかも、また最後に煽るかのように理解の早いあなたなら、と言葉を付け足してきた。事実、彼女の言う通りそれなりに縮小の理由も推測はしていたためそうだなとだけ返しておいた。


「じゃあ、続き……始めましょうか」


 カズが言葉を返してから数秒後、もう言葉を交わす必要も説明する必要ないと感じたのかサクラは突然そう言葉を言い残し、戦闘の開始を合図するとも言えるような合図を一発、空に向かって矢を放った。

次回更新は7/1です

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