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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-12

 倒した魔物たちからかなり離れた所でカズとチャナは小休憩を取っていた。普通であればチャナとカズは戦闘を行うはずなのだが、寝起き早々に大量の魔物と戦闘をしたせいかお互いに精神的にも肉体的にも疲労しており、戦闘などやる気も起きなかった。


「はぁ……。しかし、本当に助かったヨ」


「いや、俺こそあんたが無駄に騒いでくれて助かった。そのおかげで俺は後ろから援護出来たわけだし」


 カズの言葉にチャナは思い出す様に口を開いた。


「そういえば、カズが使っていたあの筒はなンダ?店では売っていないよナ?」


 チャナの問いかけにカズは「あぁ、これか」と言いながらバックポーチから長めの筒と木材で出来た小型のケースを取り出し、チャナに見せる。チャナは先に筒を受け取り、筒の構造を確認する。


「見た感じはただの筒のようだけど、口に当てる部分近くには何かを着けているのカ」


「あぁ、この針を真っすぐに飛ばすためだけに作ってもらったんだ」


 カズはそう言いながら筒の中にある小さな穴を指差した。筒自体は木製で出来ており、表面には簡易的な装飾が施されているが、筒の中には針が一本収まるくらいの穴が出来ており、その穴は木材ではなく、金属の様なもので後から着けられたようだった。


 そして、カズから新たに木製のケースを受け取り、中を見るため蓋を開ける。ケースの上部には赤、青、黄と分類するためなのか色が塗られていた。チャナはその分類された中から一番数が減っている青の部分にある針を一本抜き、目の前まで持っていった。


「これはただの針のようだナ。ただ、色で分けているということは何か塗り薬を塗っているのカ?」


 カズはチャナの問いかけに「そうだ」と言いながら頷き、針の色分けについて説明を始めた。


「まず、お前が持っている青の分類に入っていた針には「毒大蛙(ポイズン・フロッグ)」の粘液を塗ってある。針の先端近くは触るなよ?触れるだけでも一瞬であの世生きだ。それに、この針なら毒に耐性がある魔物でも一時間は動けなくなる」


「なるほど、毒大蛙の毒を使ったのカ。しかし、倒すだけでも大変なのにどうやって……」


 チャナは関心と同時に疑問を口に出すが、カズはそんなことはお構いなしに説明を続ける。


「次に赤の分類に入っている針だ。こいつには「石蜥蜴(ストーン・リザード)」の分泌液を塗ってある」


「石蜥蜴というと石化カ?」


「石化は石化なんだが、これは刺さった部分のみしか石化しない物なんだ」


「ということは、右足に刺されば右足だけ、左腕に刺されば左腕が石化するということカ?」


 チャナの問いかけに再度、カズは頷いた。


「最後に、黄の部分にある針だな。こいつは主に人間用……人類用に使う毒だな。毒と言っても一定の時間動けなくする「麻痺花(パラライシス・フラワー)」の種にある油から抽出したものだ。人類用とは言え、一応魔物にも効果はあるが、他の二つと比べると魔物に対する効果は低いな」


「なるほど、どれもそれなりに希少なものだナ。それで、お前はどうやってこれらの物を手に入れタ?Aランクの冒険者でも手に入れるのは大変な代物だゾ」


 カズの説明にいくつかの疑問があるのか、チャナは質問を続ける。そのチャナの問いかけと様子にまだ時間はあるものの絶対に今、サバイバル戦闘訓練が行われていることを忘れてるだろうと思いながらもカズはチャナの問いかけに答えるべく口を開く。


「毒大蛙と石蜥蜴は今のパーティーに入る前、一人で活動していた時に依頼された魔物を倒した際に得た副産物だよ。麻痺花においてはその依頼中にたまたま見つけたとしか言えねぇ」


「偶然にしても出来過ぎてはいないカ?余程の強運でもない限り手に入れることどころか無事に生きて帰れることも……」


「だけど、実際に俺は無事に生きて帰って、今ここにいるだろ?それに俺が無事だったのは俺の能力のおかげでもあるしな」


 カズの言葉に信じ切れていないのかそう言うチャナの言葉を遮るようにカズは自分の左目を指で差しながらそう答えた。しかし、そんなカズの様子にチャナはまるでカズの能力を知らないといった表情を浮かべ、首を傾げた。


 今回、開催されたサバイバル戦闘訓練では人員募集に参加するための受付をするのと同時に事前に冒険者全員から自身の能力や使用する武器、戦闘スタイルなどを募集受付紙に記入してもらっていた。そのおかげもあってか攻略隊員たちは一々冒険者たちを調べることなく、事前に出来た資料に目を通すだけで済んだのだが、やはり能力においてはプライバシーの関係があるのか一定数の冒険者は募集受付紙の能力欄を埋めることなく提出していた。


 そして、チャナも一通り資料に目を通しており、当然カズの資料にも目を通していたが、カズの提出した募集受付紙の能力欄は空白で提出されていたため、今回の訓練に参加する攻略隊員たちもカズの能力を知らなくてもおかしくはなかった。


 また、カズ自身も自分の持つ能力『予測』は連続して使用したり、長時間使用する事も出来ない上、今回の訓練に参加する前から必要以上に能力を使うつもりもなかったため、能力欄には記入しなかった。


「……しかしまぁ、カズの能力がどういったモノかは解らないが、これは使えそうだナ。ちなみに誰に作ってもらったンダ?」


 親指と人差し指で優しく持っていた針を黄の部分に戻しながらチャナはそう訊ねる。カズも針の入った木製のケースと筒をバックポーチに仕舞いながら口を開いた。


「筒の原型は俺が作ったけど仕上げと筒の中にある金属を作ったのは商業地区の外れにある鍛冶屋だよ」


「外れの鍛冶屋……確か、そこの店主はドワーフだったよナ?名前は確か……」


「ガルムスだよ」


 カズの言葉にチャナは「そうだ、そんな名前だったな」と言葉を口にすると、さらに言葉を続ける。


「しかし、あの気難しいことで有名な鍛冶屋がよくカズの依頼を受けたナ。何かコツでもあるのカ?」


「いや?普通に作ってくれって依頼しに行ったら、逆に魔物の素材集めを依頼されたからそれを受けただけだ」


 カズの返答にチャナは少しだけ考え込む仕草をし、暫くしてから「そうか」とだけ答えた。それと同時にカズは椅子代わりにしていた岩から立ち上がると、一度身体を伸ばし、改めてチャナの方へと向き直る。


「それじゃあ、そろそろ俺は行くわ。次会った時は遠慮なく攻撃すっから覚悟しておけよ」


 カズの言葉に一瞬チャナは意味が解らないといった表情を浮かべるが、今はサバイバル戦闘訓練の最中だということを思い出して、「あ、あぁ、それはこっちのセリフだヨ!」と慌ただしく立ち上がりながらそう言った。

次回更新は6/10です

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