デスゲームの始まり-10
「お主、見たところ転移者だな」
シノの言葉にユウキは首を傾げる。転移者という聞き慣れない言葉にユウキが首を傾げていることに気付いたシノは「それも知らんのか」と呆れた表情を浮かべる。
「この世界ではお主のように他の世界から来た者を転移者、また転生者というんじゃ」
「転移者と転生者、……それってどう違うんだ?」
「そうじゃな、この際説明してやる。先ず、転移者は生きたまま他の世界に連れてこられた者の事を差す。そして、転生者とは前にいた世界で一度死に、新たに他の世界で生を受けた者の事を差す。ここまでは理解できるな?」
シノは一旦説明を区切るとそう確認してくる。だが、ユウキには一つ疑問があった。何故、自分が転移者と判断したのかだ。ユウキはこの世界で目覚める前に誰かに後頭部を殴られた上、さらには全く何も見えない暗い空間で右腕を落とされ、腹部を刺されたのだ。それだけのことを体験して夢でしたとは到底思えない。痛みからしても確実に死んだと思っていたからだ。しかし、そんなことを考えていたユウキの思考をまるで読んでいるかのようにシノは新たに口を開き、説明を続けた。
「お主がここに来る前に何があったかは知らないが、転移者か転生者かは魔力からの情報で分かる。お主はこの世界に来る前に死んではいない」
死んでいない、その言葉になぜか分からないが不思議と安堵を覚える。ただ、それだとどうやってあれほどの痛みを感じたのかはやはり疑問だった。しかし、今そんなことを考えても答えは出ないと考えることを諦めたユウキは先ほどシノが言っていた『面白い体質』という言葉を思い出した。
「そういえば、さっき俺に対して面白い体質を持っているとか言っていたがあれはどういう意味だ?」
「そうじゃな、簡単に言うとお主の体質は他の転移者、転生者とはかなり違うということかの」
「かなり違う?どういうことだ?」
シノはユウキの無知っぷりに呆れながらため息をつく。しかし、ユウキが無知なのは当たり前だ。なんせこの世界に来てまだ一日も立っていない上、聞いたのはこの世界に関する事と魔武石とクラスについてだけだ。ユウキも今日だけで何度目かのため息に心の中でそう突っ込んだ。
「そうじゃな、……せっかくだ。教えてやろう」
シノはそう言うと、一拍おいてから口を開き、説明を始めた。
「まずは……そうじゃな。先ほども少し説明した転移者と転生者についてじゃな。先ず、転移者、転生者はこの世界に来るときある体質を持って来る。それが『印』という能力じゃ」
シノの口から聞く『印』という言葉にユウキはこの世界に来て、初めて目を覚ました時も『印』という言葉を聞いたことがあると思い出す。そして、その言葉を言った本人とはハヤトの事だ。確か、ハヤトは俺が腹部にある紋章を確認したときにそう言ったはずだ。
「印……もしかして、これのことか?」
ユウキはそう言いながら自分の服を捲り、腹部にある紋章をシノに見せる。シノはそれを見るなり「そうじゃ」と一言だけ答え、頷く。
「それでこの印っていうのはなんなんだ?」
「んー……そうじゃな。簡潔に説明すると印というのはお主の能力……固有魔法みたいなものじゃな」
またもや聞きなれない言葉に首を傾げる。すると、もうお決まりかのようにシノはため息を溢す。
「……まさかとは思わんが、固有魔法も知らんのか?」
「知らん」
ユウキも表情一つ変えずそう答えると、シノは何度目かのため息を溢す。
「はぁ……仕方ない、教えてやる」
シノは「コホンっ」と咳ばらいをすると固有魔法について説明を始めた。
「固有魔法とはその者のみが使える唯一無二の特別な能力であり、魔法の効果にも近いことから固有魔法と呼ばれておる。固有魔法とは与えられたその者のみが使える特別な能力だが、能力の効果や内容が似ていることも多い。基本的に転生者、転移者、エルフ族、ドラゴン種が持っており、1人一個が限界じゃ。中には複数持ちていうのも存在するがの。また、獣人族が固有魔法を持つということは固有魔法を複数持っている者並みに非常に珍しいというところかの」
「なるほど、それで何が珍しいんだ?固有魔法は転移者、転生者なら誰にでも与えられるんだろ?」
「先ほども言ったように固有魔法は1人一個が基本じゃ」
ユウキの問いかけにシノは含みのある言い方で返した。すると、流石にユウキも察したのか信じられないといった表情で口を開く。
「もしかして俺にはこの腹にある印もとい固有魔法以外にも固有魔法を持っているということか?」
ユウキの問いにシノは小さく頷くとユウキの目を見つめる。
「そうじゃ、お主にはもう一つ印を持っておる。ただ、それぐらいなら『結構珍しい人間だ』で終わるんじゃが……問題はその能力の内容じゃ」
「内容?」
「お主のその腹にある印の能力は『自身の身体能力を上げる』というものじゃ。だが……」
「だが?」
そこでシノは一度言葉を飲み込んでしまった。シノからしてもこれを伝えていいものなのかと一瞬迷ってしまったからだ。




