表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
115/163

新たな旅立ち-6

 サバイバル戦闘訓練が始まる昼の時間はすぐに来た。すでに、エイガルドの近くにある森の開けた場所である広場には七十名ほどの参加者がおのおのの装備を整えて集まっていた。


「ちゃんと時間通りに集まったようだな」


 今朝とは違い、全身を水色を基調とした軽鎧で包み、腰には日本刀と短刀を一本ずつ携えて、しっかりと装備を整えたタイガは皆の前に立ち、そう声を発した。タイガの言葉に先ほどまでざわついていた冒険者たちは口を閉じ、静かにタイガの方へ視線を向ける。


「まずはこちらから提供する水の場所だが、この広場から少し離れた場所に二か所設置した。この広場は基本、怪我をした者やこの訓練を途中で辞退した者、そして、それらの者を治療するための者たちが集まる場所でもあるためここでの戦闘は一切禁止だ。ちなみにこの広場に足を一歩でも踏み入れた場合も即失格扱いとする」


 タイガはところどころ指で差し、冒険者たちの視線を誘導しながら説明を続ける。そして思い出したように後ろで待機するソウジを含めた五名の攻略隊員を自分の近くに呼び寄せた。


「もちろんこの場所も魔物が来ないわけではないので護衛として二人、治療を行える神官を三人の計五名がこの広場の見張りを行う」


 ソウジたちはタイガの説明が一区切りすると一度頭を下げ、後ろへと下がった。すでに広場の通路付近には二つ、彼らが寝泊まりするための簡易式テントが組み立てられていた。


「さてと、説明と最終確認はこれくらいか?ここまでで質問がある奴はいるか?」


 タイガの問いかけに誰も手を上げることは無く、各自説明された場所の確認などを呟くように復唱したりしていた。それを確認したタイガが最後の挨拶をしようと口を開きかけた瞬間、一人の顎髭を生やした男性の冒険者が手を上げた。


「すまんが、一つだけいいか?」


「おう、聞けるうちに聞いてくれ。それで質問は?」


 他の冒険者の視線がその一人の男に集まる中、男は頬を掻きながら口を開いた。


「俺の勘違いじゃなければいいんだが、この訓練での行動範囲はどこまでなんだ?流石にこの森もかなり広いが全域でやるわけではないだろう?」


 男の言葉にタイガは思い出したように「あぁッ!そうだったな!」と口を開いた。


「すまんすまん、忘れていた。一応、この森での行動範囲は大体30キロ先だな。俺の能力である『結界』で囲ってあるから、近づけばどこまでかは皆分かると思う」


 タイガはそう答えると、他に質問する者がいないか確認をする。しかし、先ほどの男以外に質問をするような者もなく、質問は締め切られた。


 そして、とうとうサバイバル戦闘訓練の時間がやって来た。


「これからサバイバル戦闘訓練を始める!終了の合図は三日後の昼に、空に火球(ファイヤー・ボール)を打ち上げる。それまでは皆せいぜい頑張ってくれ!それと攻略隊は君たちが出発してから約十分後に動き始める!それも同じように時間になったら空に一発、火球(ファイヤー・ボール)を撃ち上げる。それでは……開始ッ!」


 タイガの合図に冒険者が一斉に走り出した。駆け離れる冒険者たちの後ろ姿を見届けた後、タイガは広場に残っている訓練に参加する攻略隊員たちに視線を向ける。


「さて、俺たちは十分後に出発だ。皆も大変だろうが頑張ってくれ」


 タイガの言葉に攻略隊員たちはおのおの違った返事をした後、自分の荷物の再確認や準備運動などを始めた。



☆★☆★☆



「はぁ……はぁ……、とりあえずこの辺りでいいか」


 訓練開始から約三十分、すでに二十分前に攻略隊員が広場を出発する合図の魔法が一つ空に向かって放たれた。すでに、各所から戦闘の音は聞こえる。カズは広場からかなり離れた場所で一息吐こうと近くの木に寄りかかり、バックポーチに入れていた水筒を取り出し、口に運ぶ。


「……はぁ、地味に緊張してるのか手がまだ震えてるな」


 口に運んだ水筒を持つ左手を見ると微かに震えているのが分かった。水筒を仕舞い、改めて走り出そうと動き出した瞬間、近くの茂みから何かが擦れる音が聞こえた。カズは音のした方に警戒しながら右手を片手直剣の柄に伸ばす。


 次第に草を掻き分ける音が近づいてくる。柄を掴む手に力が入るのが分かる。魔物か攻略隊か、はたまた同じ方向に移動してきた冒険者の三択だった。魔物であればカズは今までに何度も『常闇の黒猫』の皆と依頼で訪れているから対処法は限られてくる。冒険者も今回は戦闘は必要ないためお互いに警戒しながらだが、離れるなり相手によれば共闘が出来るかもしれない。この考えは今回の訓練に参加する冒険者のほとんどが考えていた。


 攻略隊の相手を一人でまともに出来るわけがない。特に攻略隊の隊長であるタイガとそれと同等クラスの力を持つサクラはかなり警戒をしているはずだ。逃げるのも難しいと考えられるほどだ。そんな思考が頭の中から離れない中、徐々に足音が聞こえてくる。そして、目に見える範囲の茂みを掻き分けようとする手が見えた瞬間、魔物ではないと察したカズは言葉を発した。


「止まれ!そこにいるのは誰だ!」


 カズの言葉に茂みを掻き分ける音は止まったが、茂みの先から聞こえる声にカズは目を見開いた。


「おやおや、誰かと思えば貴方でしたか」


 茂みから聞こえてきた声は聴きなれた者の声でカズは小さく舌打ちをした。茂みの先から現れたのはまるで幸運だとでも言いたいかのような笑みを浮かべた、白い鎧に身を包んだ騎士の男カイザだった。


「三十分振りでしょうか?あなたにしてはかなり遠くに来たんですね」


「初っ端からあんたとか最悪かよ」


 カイザは背中に背負っていた剣を抜き取ると、カズに向かって構え始めた。カズも同じように片手直剣を抜き、カイザに対して構える。二人はお互いに剣を構えたまま動かず、静寂が訪れる。しかし、長く感じる静寂を破ったのはカイザからだった。


「来ないなら僕から行きますよ!」


 そう言いながらカイザはカズの目には負えないスピードでカズの背後に回り込み、剣を振るった。遅れて動き出したカズは無理やり身体を捻らせギリギリのところでカイザの剣を避けたが、そのままカイザが続けて繰り出してきた横蹴りによって背中を蹴られ、軽く飛ばされた。


「グッ!」


 蹴り飛ばされたカズは何とか態勢を整えるが、すでにカイザは目前まで迫っていた。


「ッ!はやッ!」


「やはり遅いですね!攻撃してこないならこちらからどんどん行きますよ!」

次回更新は4/29です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ