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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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新たな旅立ち-4

「ふーん、次の島に繋がる門は騎士とガーディアンのみが通れるのか。それにタイガの考えたサバイバル戦闘訓練っていう選別方法も面白いな。あ~あ、通れるのが騎士とガーディアンだけじゃなかったら参加したかったのに」


 次の島に進むため、新たに参加者を募っていた攻略隊の人員募集の紙を手にユウキはそう言葉を吐いた。タイガ、マコ、バルザの代表三人が次の島に関する話し合いを終結してから二日後、エイガルド中に次の島に続く門に関する情報とタイガが考案したサバイバル戦闘訓練という騎士、ガーディアンのみを募集する話が広まった。人員募集の参加受付期間はたったの四日間だけだった。


 募集の話が出た初日にはギルドに特別に設立された受付場にかなりの数の騎士、ガーディアンのクラスに所属する冒険者が殺到した。


 そして、それは現在エイガルドの外でひっそりと修行を行うユウキとマシルの耳にも届いていた。


「でも、これじゃあ私たちが出来ることは次の島に続く橋が新しく出るまではなさそうだね」


「うーん、それはどうだろう」


「どうだろうって?」


「んーいやな、この募集要項には騎士とガーディアンのみを募集するとは書いてあるんだけどな。聞いた話じゃ、ビーストテイマーと銃剣士のクラスはまだ通れるか確認がされてないみたいなんだ」


 ユウキは人員募集の紙から視線をマシルへと移し、そう言葉を続けた。マシルもユウキの言葉に反応するように口を開く。


「じゃあ、もしかしたら私たちも通れるかもしれないんだね」


「あぁ、ありえなくもない話だけど、確率はかなり低いだろうな」


 二人がそう言葉を交わしていると、近くの茂みからガサガサと草を掻き分けるような音が聞こえた。ユウキは音のした方に警戒をしながら、手に持っていた紙をバックポーチに仕舞うと鞘から剣と銃を一丁引き抜いた。マシルも同じように腰に携えていたダガーを手に息を潜めて構える。


「来たか」


「あれは……子鬼族(ゴブリン)?」


 マシルの言葉にユウキは静かに頷き、数を数える。茂みの奥から顔を出したのは全身の皮膚が濃い緑の様な色をしており、鼻と耳が長いといった特徴を持った子鬼族だった。子鬼族たちは「ぐぎゃぎゃ」と鳴きながら辺りを見渡す様に歩き、ユウキたちの方へと向かっていた。


「1、2……5体、か。まだこっちには気づいていないようだから奇襲をかけるぞ」


 ユウキの言葉にマシルは小さく「了解」と答えると、ユウキはマシルに合図を出した。



☆★☆★☆



 攻略隊からの人員募集の話はユウキたちだけでなく、当然、ハウスにいるタイセイたちの耳にも届いていた。だが、今のタイセイたちにはあまり興味のないことだったようで、人員募集の話題が出た初日に少しだけハウス内でも話題にはなったが、それ以降はあまり出ることが無かった。しかし、カズだけは違ったようで少なからず参加したいという意志があった。


 そして、カズは人員募集の話が出てから二日後にタイセイの部屋に訪れた。暫くの間、無言の時間が流れたが、カズは意を決して口を開いた。


「タイセイはどうするんだ?」


「どうするって攻略隊の人員募集の話?」


 タイセイの言葉にカズは無言で頷いた。タイセイはカズが頷いたのを見て、少しだけ考えるよう首を傾げた。


「どうするって言われても今のところ僕は参加するつもりはないよ。知ってるでしょ。僕はこれでも臆病なんだ」


「そう、か……」


 タイセイの返答をなんとなく察していたのかカズは特に驚きはしなかったが、やはり少し自分は参加したいというのは言いだしづらかった。しかし、タイセイもタイセイでそんなカズの事を理解していたようで口を噤んだまま俯くカズに優しい笑みを浮かべ、口を開いた。


「だけど、カズ君は行きたいんだよね。僕たちの事は気にしなくていいから行っておいで」


「は?いや、だけど……いいのかよ」


 カズとしてはハヤトの死があったからこそ反対されると思っていたからか、予想外の言葉にカズは少しばかり動揺が浮かんだ。だが、タイセイの表情は変わらず優しい笑みを浮かべたままだ。


「うん、僕は構わないよ。カズ君の事だし、強くなりたいって思いは多分、ユウキ君たちと同じなんじゃないかなって前から思ってたんだ」


 タイセイは思い出す様に口からどんどん言葉を吐く。カズも黙ったままタイセイの言葉に耳を傾けた。タイセイの言う通り、カズはもうハヤトのように大切な仲間を失いたくないと思っていた。強くなって守れるようになりたいと思っていた。


 しかし、心はそう強く思っていても身体はうまく動かなかった。一人で魔物の討伐に行けば、最悪自分が死ぬ。だけど、仲間や友人と一緒に行けば最悪、彼らを危険に曝してしまうかもしれないという恐怖から身体がハウスの外にすら出られなかった。


 だが、ハウス内に資金が枯渇しそうになった時にタイセイが言った「必要以上に戦わなくたって生活は出来る」という言葉にカズは少しだけ身体を押された気がした。街の中なら魔物も近づいては来ないという多少の安心感に少しだけ心が軽くなった気がした。


 だけど、そんな安心感も街の中で仕事する中で薄れていった。カズはギルドマスターのマコに頼み込んでしばらくの間、ギルドの中で事務や収集されたアイテムの査定を行っていた。毎日朝早くから仲間と依頼を受け、陽が暮れる頃に体中をボロボロに汚して戻ってくる冒険者たちを前に自分はなんでここで仕事をしているんだろうと、強くなりたかったんじゃないのかと無事に帰ってくる冒険者や怪我を負いながらも戻ってきた冒険者たちを見るたびに思っていた。


 そんな時、ギルドにある情報が届いた。それは、攻略隊による次の島に行くための新たな人員募集の話だった。その情報が出た日からギルドは参加目的の冒険者で騒々しくなったが、それも二日目には静かになった。騎士、ガーディアンに所属するほぼの冒険者が初日に来てしまったため、二日目以降に来る人はかなりまばらだった。


 カズは二日目の受付をマコとともに担当していた。お昼を過ぎた頃には疎らに来る冒険者もほぼ途絶え、いつもの暇さがギルド内には訪れていた。そんな時にふと、マコに訊ねられた。カズは参加しないのかと。カズはその時はすぐに答えを出すことが出来なかった。未踏の地ということもあり、死の恐怖もある。それにタイセイたちに何の相談もなく、参加するとは言えなかった。


 それはマコもカズの様子からなんとなく察してはいたが、やはりマコの想い人でもあるせいか口を出さずには入れなかったらしい。だから、他愛のない話の中の一つとしてそう訊ねただけだった。カズの様子を見て、すぐに話題を変えはしたが、その問いかけがきっかけでカズにも考える余地が出来た。


 そして、その日の仕事を終え、夕飯を食べた後、カズなりに熟考した結果、タイセイの部屋を訪れたのだ。


「確かに心配ではあるよ。攻略隊にはタイガ君やソウジ君たちがいるとはいえ、未知の場所だし絶対に安全って訳でもない。でも、カズ君が考えに考えた結果で参加したいっていうんであれば僕にそれを止める義理はないよ」


「タイセイ……ありがとう」


「それに……いつユウキ君たちが戻ってきてもいいように美味しいご飯を作って茜ちゃんたちと待ってるよ」


 タイセイはそう言うと笑みを崩し、真剣な表情を浮かべ、一拍おいてから「でも、一つだけお願いがある」と言葉を発した。


「……絶対に生きて、無事に帰ってきて。僕もこれ以上大切な仲間を失うのはつらいんだ」


「あぁ、絶対に戻ってくる。生きて!」


 「生きて」の部分を少しだけ強調するようにタイセイは言いながらも、最後には真剣な表情から少しだけ悲しい表情を浮かべた。そして、そんなタイセイに誓う様にカズは強くそう言った。

次回更新は4/15です

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