新たな旅立ち-3
「大変だよ!」
ユウキとマシルがハウスを出た翌日、二人を除いた四人はいつもなら朝食を取りに来るマシルがいつまでも来ないことに異変を感じ、サキがマシルの部屋に出向いたところマシルの部屋の机の上にはある一通の書置きが置いてあった。一言『探さないでください』と。何故そんな風に書いたのかと聞きたくなる内容だった。そして、サキはその書置きの内容を確認したところ慌ててリビングにいる三人のところに向かった。
三人もマシルの残した書置きを確認した瞬間、すぐに行動を起こした。まずは、ギルドや神殿、そして攻略隊のソウジやタイガに聞き込みを始めた。その後は攻略隊や他の冒険者の協力も得て数日間、捜索を行ったが、一向に見つかる様子はなかった。しかし、幸いなことにユウキの部屋からもマシルと同じように書置きが見つかった。内容はマシルと修行してくるといったことが書いてあり、マシルが一人ではないということが分かったのか、『常闇の黒猫』の四人は腑に落ちないままも捜索は終了した。
そしてユウキとマシルがエイガルドを出て修行を始めてから約2週間が経った。
☆★☆★☆
「んー……やっぱ進むしか道はないんじゃないか?」
長机の上に広げられた大量の調査報告書の内一枚を手に取りながらタイガはそう答える。この調査報告書はエイガルドと西に位置する島を結ぶ橋に関する調査報告書だった。ユウキたちの一件よりも前からギルドと神殿、攻略隊での合同調査が行われていたが、かなり難航しているせいなのか、かれこれ十日ほど代表者同士で同じ話を続けていた。
「進むと言ってもあの先に行けるのは騎士とガーディアンのクラスに所属する者だけなのだろう?」
タイガと同様配られた報告書の一枚を手に取った大神官のバルザがそう訊ねるように訊く。現在、この部屋にいるのは神殿長のバルザとギルドマスターのマコ、そして攻略隊隊長のタイガだけだった。
「そうねぇ、報告書にも書いてある通り、進めるのが騎士とガーディアンだけなんてちょっと危険が過ぎるんじゃない?」
顎を乗せた手をもう片方の腕で支えるように空中で肘をつきながらマコはため息交じりにそう言葉を吐く。マコの言葉にバルザも賛成のようであまりにも危険だと主張を続けていた。
しかし、なぜ騎士とガーディアンのクラスに所属する者だけしか進めないのかというと、エイガルドと西の島を結ぶ橋の中心には門があった。だが、門があるだけなら特に問題はないのだが、今回現れた橋の上にある門には扉もないのに先の光景が一切見えず、まるでユウキが作る『闇扉』に似た光の壁が門一面に張り巡らせていた。
攻略隊に所属するほぼ全ての者はすでにユウキの『闇扉』を目にしていたので門一面に広がる光の壁も同じようなモノだと考え、ハンターのクラスに所属する攻略隊員が触れて確かめたところすり抜けるどころかバチッと大きな音を立てて、弾かれた。しかも、弾かれた腕は少しだけ火傷の症状が出たという報告もあった。
だが、それと同時に他のクラスである騎士とガーディアンに所属する攻略隊員からは触れても何の問題も無かったという報告も上がっていた。これらの報告から彼らが推測した考えは西の島に行ける者には限りなく条件があるということだ。
現在、騎士、ガーディアン、ハンターの他に神官、魔法使い、アルケミストの三クラスが門の先に行くことは出来なかった。これらの結果からタイガたちは残りのビーストテイマーと銃剣士も同様に門の先に行くことはないだろと推測している。
「確かに危険だが、このまま進まないというわけには行かないだろう」
タイガも二人の言うことを理解していた。橋の先は未知の事だ。エイガルド付近に生息する魔物と生態は確実に違う上、どれほどの強さを持っているかも分からない。さらに言ってしまえば、今までは怪我を負ってもすぐに治療をしてくれる神官がいたが、橋を越えた瞬間、それは無いに等しい。仮に怪我を負ったとしてもすぐに治療が出来る者がいないというだけで戦いに関する恐怖は増える。
二人はタイガの言い分も理解はしていた。先のダンジョン攻略でもかなりの死者が出てせいか、これ以上の死者は出てほしくないと思ってもいた。しかし、それはタイガも同じように思っていた。だからこそ、考えがあった。
「では、何か考えでもあるのか?」
「マコちゃんは知っているだろうけどダンジョン攻略を行うにあたってソウジたちがやっていたことをやろうと思う」
タイガの一言にマコは目を見開き、タイガの方へと視線を向けた。
「タイガちゃんそれって……」
「あぁ、だけどソウジがやっていた摸擬戦とやらはやるつもりはないよ。なんせあのやり方は時間が掛かり過ぎる」
タイガはマコの問いかけに一度頷いてから言葉を続けた。タイガの考えとしてはソウジ同様、騎士、ガーディアンのクラスに所属する冒険者と攻略隊員を中心に参加者を集め、さらに今回はギルドランクの上限は設けないつもりだと二人に伝える。しかし、その条件ではマコだけでなくバルザも反対だった。
だが、タイガもこの条件では反対されることは想像していた。何故なら、ランクの上限がないということは低ランクの冒険者も参加できることになってしまう。もし、仮にもだが、低ランクの冒険者が選別に参加できたとしても橋を渡った所ですぐに魔物に殺されるか、他の者に迷惑を掛け、最悪その者を死なせる可能性があるからだ。
「確かにそのまま連れて行ったら問題だらけだ。だけど、安心してほしい。それに関してだけじゃなく色々と考えているつもりだ」
タイガの考えとはただソウジと同じように行うのではなく、数分の面接と三日間の戦闘訓練を行うのみの選別だった。面接はただのプロフィールを基に説明及び注意を行うだけだが、戦闘訓練においてはマコやバルザ、ソウジでさえも思いつかなかった方法だった。
いや、思いついても行おうとは考えるものではなかった。戦闘訓練の内容は攻略隊の中からタイガを含めた各クラスの精鋭を集め、街から少し歩いたところの近くの森でサバイバル戦闘を行うものだった。しかも、三日間一度の休みもなくだ。
この訓練では自身の武器と必要最低限の道具のみ持参可能であり、食料は水のみ持参可能だ。食べ物は森で見つけるか、攻略隊員が持っている者を奪うかの二択のみだ。その内容を改めて聞いた二人はやはり危険だと主張はしたが、タイガの「この訓練で生き残れないのであれば連れて行くことは出来ない」との一言で口を噤んでしまった。
「まぁ、流石に訓練で死なれたら困るから対処法は考えてるから安心してくれ。とりあえず俺はこれから攻略隊のみんなに伝えてくる」
タイガはそう答えると、手元に広がった資料を軽く纏め、部屋を出て行った。
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