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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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プロローグ

「さて、とりあえず彼を何とかこちらに戻すことには成功したな」


 男は両腕を上に伸ばしながらそう呟いた。そして、思い出したように着込んでいたサイズの合っていない白衣のポケットから新しい棒付きキャンディを一つ取り出し、キャンディ部分を包装紙から引っ張る様に取り出すと、放り込むように口に含んだ。


「ふぅ、頭使った後は糖分補給」


 男が棒付きキャンディを口に放り込み、糖分を補給していると男のいる部屋に白と黒をメインとしたビクトリアン調のロングスカートのメイド服を着込んだ紗季が戻ってきた。そして、真っすぐ男のそばまで歩き、一度深くお辞儀をしてから口を開いた。


「準備が出来ました。ご主人様(マスター)


「おぉ、紗季ちゃんありがとうね。じゃあ、行こうか。彼に会いに」


 男は椅子から立ち上がると、部屋を出るため扉に向かって歩き出す。紗季も男の一歩後ろを歩く様に続く。そして、部屋を出てから歩くこと20分。他の部屋とは違う作りの扉の前で足を止めた。その扉は男たちがいた部屋から3つ下の階にあり、エレベータでその階層に降りるまで5分、そして、その部屋に向かうまで扉も部屋もない通路を歩くこと15分のところにその扉は位置していた。扉の上には壁や扉とはまた違う材質で出来た横長の金属プレートに『冷眠室』と刻まれていた。


『認証を開始。……登録者:マスター。確認終了。扉のロックを解除』


 扉の隣にあるタッチパネルに男が右手を翳すと、限りなく人間の声に近い音声とともに扉が横に開いた。部屋の中に入ると、その場所はかなりの広さがあり、どこを見ても何もなく、ただただ真っ白い世界が広がっていた。男の後ろにいた紗季が部屋側の扉の隣にある窪みからタッチパネルを取り出し、操作を行った。


 すると、何もない床から一度だけ「ぷしゅッ」といったまるで空気が抜けるような音がした。その音がしたところからはガラス張りで中身の見えるカプセルのような床とまったく変わらない白色の箱が1つだけ、白煙を上げながらゆっくりと姿を現した。そのカプセルの中には男がモニター越しに見ていた東郷勇人(とうごうはやと)と瓜二つの青年が目を閉じ、まるで検査着のような薄氷色の服に身を包んでいた。


 さらに紗季がタッチパネルを操作すると、カプセルが「ぷしゅッ」という空気の抜ける音とともに扉が開いた。扉が完全に開き切ると、中に居た勇人似の青年がゆっくりと目を開いたが、状況が理解できないのか真っすぐとどこを見るでもなくぼーっと見つめていた。


「やぁ、おはよう。東郷勇斗君」


「う、……あ……ッ」


 東郷勇斗と呼ばれた青年は久しぶりに目を覚ましたのか上手く話すことが出来ず、またそれと同時に動こうとしたのか右足を前に出そうとするが、上手く立つことが出来ず男の目の前に伏せるように倒れてしまった。


「おっと、大丈夫かい?やっぱり長く眠りについていたせいか全身の筋力が衰退してるようだね。紗季君、彼を部屋に連れて行ってもらってもいいかな?しばらくは話すこともままならないだろうし筋力がある一定の値に戻るまでは世話も頼んだよ」


「かしこまりました、ご主人様(マスター)


 男は青年の状態を見るなり、精確に紗季に指示を行うと、満足したように部屋を出ようと扉の方へと足を向けた。しかし、すぐに歩き出すことはなかった。それより何かを思い出したように「そうだそうだ、忘れてた」と呟きながら再度、青年の方へと身体を向け、顔を近づけてから男は笑みを浮かべてから口を開いた。


「おかえり、東郷勇斗君。僕の名前はカノン。君にはこれから僕の補佐をしてもらうつもりだよ。でも、その前にまともに話せるようになるまでは彼女にお世話をしてもらってね」


 カノンと名乗る男は東郷勇斗にそう伝えると、改めて扉へと身体を向け、歩き出す。


「さて、この後のシナリオは次のステージに続く橋掛けだったかな?彼がどういう動きを見せてくれるか楽しみだなぁ」


 カノンはそう呟きながらモニターのある部屋へと戻る。



☆★☆★☆



 ダンジョン攻略から一か月が経った頃、攻略隊によって今まで彼らが拠点とするエイガルドのある島の周りにある一回りほど小さい九つある島の一つに橋がかけられているのを発見された。しかし、次の島へと続く橋が発見されてから誰もその橋の先へ行くものはおらず、まずはどこの国があった島だったのか、ギルドと神殿、そして発見した攻略隊を含んだ者たちで調査をすることになった。


 そして、橋を発見されてからさらに一月が経った頃、ようやくどこの国なのかが判明した。橋の先にある国の名前は『ブレスタ』。ブレスタはエイガルドのある島から西に位置する島にある国であり、別名『騎士の国』と呼ばれるほど騎士のクラスに所属する者が多く住んでいた。また、ブレスタには他の九つの国の中で唯一騎士団という組織があり、武力によって国として成り立っていた。


 また、橋が現れた頃からエイガルドがある島の中に存在するダンジョンが新たに生成されることも既存するダンジョンが新たにダンジョン化する事も無いことから、島内に存在するダンジョンは全て攻略しつくしたと考えられる。このような調査結果から橋の先にある島のダンジョンを全て攻略し、ブレスタを再興させるのが次の彼らの目標なのではないかと考えられた。


 そして、攻略隊は次の国へ攻略を進めるため、ギルドと神殿の協力により、新たに人員を募集し始めた。それも今度は一時的な仮募集ではなく、正規に攻略隊へと参加するための人員を募集し始めた。


 しかし、前回のダンジョン攻略が予想以上に過酷な上、被害も甚大だったことから正規に攻略隊に所属している者の中からも重症に近い怪我を負った者などは攻略隊事態を脱退する事もあり、新たに人員を補充したところで人数の変わりはあまりなかった。


 この攻略隊の現状にソウジとタイガは逆に面倒になったと考えており、その理由が新たに入ってきた人員の育成と新たに小パーティーの組み合わせを作らなければならなかったのだ。育成だけならば毎日の訓練があるのであまり気にすることはないのだが、新たに小パーティーを編成するとなると個人の戦術や性格、武器や人間関係なども考慮した上で編成しなければならないのだ。


 今までは多少の人員補充などをしたとしてもすでに出来上がった編成の中に組み込めば良かっただけなのだが、今回に限っては長く攻略隊に勤めていた者も少なからず減ってしまったため、どちらにせよ新しくパーティーを編成しなければならないのだが、正直なところソウジとタイガは日頃の訓練や育成、ギルドからの仕事など新たにパーティーを編成する余裕も暇も体力も残っていなかった。


「はぁ……おい、どうするよ」


「あぁ、どうするか。他の誰かに頼むとしても頼れるのはサクラかアキラ」


 ソウジとタイガは酒場でかなり遅めの昼食を取りながら頭を抱えていた。ソウジに至っては思いつく頼りになる人材を指で思い出しながら数えるが、それでも無理だとさらに頭を抱える。


「だけど、サクラはもうすでに新人たちの育成とプロフィール作成、それにエイガルド全体のトラップの確認やら警備の仕事もあるだろう?それにアキラも魔法使いや神官たちの育成に書類作りと俺たちには出来ない事務仕事を丸投げしてる。どう考えても仕事は増やせないだろ」


 タイガはソウジにそう言葉を掛けるが、ソウジも理解しているのか何も言い返せなかった。それにまだ、悩みはある。そう、ダンジョン攻略以来まともに外に出てこないパーティーの事だ。


「……あいつら、まだ部屋にこもりきってるのか?」


 察していたのかタイガは主語を付けずそうソウジに訪ねた。ソウジも静かに頭を一度だけ縦に振る。


「俺が言える立場じゃないがそろそろあいつらの顔を見たいな。『黒猫』の奴らに」


 タイガの呟きにソウジはコップに入った液体を全て飲み干すと「そうだな」とだけ返し、酒場を後にした。

次回更新は3/18です

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