ダンジョン攻略-20
タイガの掛け声により他の隊員も武器を構え、ソウジの指示通りに動き始めた。前衛にいた者たちは新たにガーディアンと騎士のペアとして二人一組、または三人一組の少数パーティーでスネーク・センティピードの下半身である百足の様な複数の体節に区切られた白骨の尖脚に向かい、一組一本という形で攻撃を開始した。
また、彼らの動きは魔法を放つことが出来るスネーク・センティピードの左の頭の注意を引くための陽動でもあった。
「ユウキ、銃の準備は大丈夫か?」
二丁の拳銃に込めていた魔力を一旦戻し、新たに魔力を込めているとソウジはそう声を掛けてきた。その声には先ほどまでの諦めたようなか細く覇気のない声はなく、やる気に満ちた声だった。俺は未だ念入りに身体を解しているタイガをちらりと一瞥した後、「俺の方はいつでもいけるぞ」と短く答えた。
「そうか、……あの時お前をこの戦いに参加させる気なかった俺が言うのもなんだが頼んだぞ」
「頼んだぞって俺は別にいいさ。あんときの事は俺も冷静じゃなかったんだ。……それよりあいつ—————タイガは大丈夫そうなのか?本当ならこの作戦もお前に頼みたかったんだが……」
俺の言葉にソウジも一度タイガの方へと視線を向けるが、これと言って心配するようなことはなく「まぁ、あいつなら大丈夫だろ」とだけ答えた。
「こういっちゃあなんだがあいつの剣の腕は俺と同様いやそれ以上だぞ」
顔に出ていたのかソウジはまるで俺の考えを見透かしたかのような言い草でそう答えると、そのままタイガの方へと向かって行ってしまった。そんなソウジの後ろ姿と身体を伸ばしたりと全身を解すような動きをしているタイガを交互に見ながら俺は静かに「……マジか」と呟いた。
そしてソウジがタイガの下へと向かってから数分後、ソウジから最初の指揮が放たれた。
「ユウキ!今だ!放て!」
ソウジからの最初の合図が放たれたのはスネーク・センティピードの左の頭が新たな魔法を自分の下半身に集まる前衛のパーティーたちに向けて放とうとしている瞬間だった。後衛の指揮を担当するサクラが左の頭が魔法を放つタイミングを見て、後衛の魔法使いたちとハンターたちに指示を出し、それに合わせる様に左の頭へと攻撃を集中させた。
その作戦はある程度成功し、魔法同士のぶつかり合いで生じた白煙がスネーク・センティピードの頭部を包むように現れたのを見計らいタイガは腰に差した日本刀に右手を添えながらスネーク・センティピードに向かって走り出した。
俺もソウジの合図に合わせ、タイガの前と額板の辺りに眼と同じ鮮紅色の魔石が植え付けられた真ん中の頭の正面とを繋ぐ『闇扉』を発動させ、さらにもう一丁の拳銃に込めていた火属性の魔力をタイガの持つ日本刀へと『武器付与』させるべく放った。
タイガはいきなり自分の前に現れた『闇扉』に驚くことなく吸い込まれるように『闇扉』の中へと足を踏み入れ姿を一瞬姿を消すや否やスネーク・センティピードの真ん中の頭の正面に姿を現し、静かに空中で刀身を鞘から抜こうとした。
「行くぞ!篠崎流……ッ!」
しかし、刀を引き抜こうとした瞬間、なぜかタイガは動くことが出来なかった。白煙が晴れる中、異変に気付いたのかソウジが新たにユウキに合図を送ろうと口を開いた瞬間、ユウキも異変を感じていたのかすぐさま、一切動くことなく落下するタイガの真下に新たな『闇扉』を発動させ、タイガの身柄を回収する。そしてすぐに自分の近くに『闇扉』を開き、タイガの無事を確認した。
「くそッ!なんだ今の感覚は……ッ!」
「大丈夫か!?一体どうしたんだ?」
駆けつけてきたソウジが不安そうな表情でタイガの身体に怪我が無いか確認すると同時にスネーク・センティピードの正面に言った瞬間の出来事を確認してくる。しかし、タイガからしても一瞬の出来事だったためか理解できていないような表情で口を開いた。
「分からない。ただ、刀を抜こうとした瞬間、身体が動かなかった。指の一本もだ。まるで前に他のダンジョンで戦ったコカトリスの石化に似た感覚だった」
タイガは自分の身体が動くことを指を動かす事で確認すると、ゆっくりと立ち上がる。タイガの言葉を聞き、その謎の現象にソウジは何かを考え込むように顎に手を当てながら思考をし始めた。そして何かを思いついたのかユウキに向かって口を開き始めた。
「なぁ、ユウキ。あいつの能力『死毒』と『悪食』にもう一つあったよな。確か……」
「『王蛇の眼光』か?それがどうした」
「いや、これはただの予想なんだがその能力の詳細ってお前の『鑑定』で確認出来ねぇか?」
これ以上のんびりと問答をしている暇はないとスネーク・センティピードを一瞥し、そう思ったユウキはソウジの問いかけに何も聞き返すことなく「確認してみる」とだけ言い、真ん中の頭にだけ『鑑定』を行った。
『王蛇の眼光』
???
「だめだ。『鑑定』の力が低いのかアビリティの詳細までは見れねぇ」
ユウキは残念がりながらそう答えるとソウジは「そうか」とだけ答え、再度考え込む。そして次はタイガに問いかけを行った。
「タイガ、刀を抜くときあいつの姿を見たか?いや、視界に何かを入れたか?」
「いや、特に何かを意識してみた記憶はないな」
突然の問いかけに少なからずたじろいでしまったがすぐに思い出したかのようにそう答えた。
「そうか。……ユウキ、タイガ。次も同じ作戦でいいか?」
「俺は別に構わないがユウキはどうだ?」
「俺もまだ行けはするが、タイガの移動分を抜いてあと七発が限界だぞ」
俺とタイガは一度目を合わせた後、ソウジにそう答えるとソウジは十分だと答え、タイガに向かってさらに言葉を続けた。
「それとタイガ出来るならでいいが今度は『闇扉』に足を踏み入れた瞬間、目を瞑れ」
「は?お前いきなり何言って……」
敵を目の前に目を瞑れとまるで死に行けとでも言わんばかりのソウジの提案にユウキは驚愕の声をあげるが、タイガは特に文句も言うことなく「信じていいんだな?」とだけ聞き返し、すぐさま準備に移った。
「次のタイミングで決めるぞ」
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