ダンジョン攻略-19
「……げほっ!おい、皆はどうなった!」
土埃が舞う中、咳き込みながら周りの状況をハヤトとともに確認する。隣を見ると、自分と同じく咳き込みながら自分の見える範囲をキョロキョロと頭を左右に振りながら確認するハヤトの無事な姿を見て、安堵する。
「お前は無事か?ユウキ」
ハヤトも横にいる俺の姿を確認して怪我が無いか確認をするため声を掛けてくるが、どこも怪我していないのを確認するとすぐに安堵の表情を浮かべた。そして、土埃が完全に晴れる頃、再度周りを確認すると壁側に避難していた者の半数近くが『岩石槍』が放たれる前にいた位置からズレて絶命しているのが見えた。
多分だが極度の興奮状態のせいか無意識に『闇扉』の範囲から出てしまい、『岩石槍』の餌食になってしまったのだろう。後方にいた支援部隊の確認もするが、やはりそちらでも数名程、命を落としていた。
「くそッ!また死人がッ!一体どうする気なんだユウキ!」
状況を確認し終えたハヤトがそう訊ねてくるがユウキ自身、戦意を失った者たちしかいないこの状況で思いつく打開策は何もなかった。いや、実際は一つだけあったのだ。だが、それを行うにはソウジの力が必要不可欠であり、ソウジの力が無ければ出来ない策だったのだ。
しかし、ソウジはすでに戦意を喪失しており、他のメンバーも仲間の死を見て戦意を失っていた。辛うじて戦意を失っていないものと言えば後方で前衛のサポートをしていた魔法使いや神官、そしてハンターたちだった。彼らはサクラが指示していたおかげで何とか戦意を失うことなく自分のやるべきことを見出していたが、前衛にいた者たちの半数以上はすでに『岩石槍』によって死んだ者か戦意を失くし、動くことも出来なくなった者だけだった。
「正直、もう一発同じ威力の攻撃が来たら全滅もあり得るぞ。見る限り後衛のやつらもほぼ魔力が尽きかけてる」
ハヤトの言うことは理解していた。何故ならユウキもすでに魔力が少なくなってきており、次も同じように周りの皆まで守れる程の魔力も残っていなかったからだ。ユウキはハヤトの言葉を適当に返すと二丁の拳銃に込めていた魔力を足し始める。また、いつ同じような魔法攻撃が来てもいいように、少しでも助けられるようにとなるべく多めに体内に残っている魔力を込める。
「なぁ、ユウキ。君はあれに対して何か策があるのか?」
魔力を拳銃へと込め、打開策を思考していると後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。その声は少しだけ掠れており、まるで死にかけの人間の声だった。振り返ろうとした瞬間、先に振り返って声の主を確認したのか隣にいたハヤトが驚愕の声をあげた。
それにつられユウキも後ろへと振り向くと、そこにいたのは今回のダンジョン攻略の真の目的と言ってもいい攻略隊の隊長であるタイガだった。白と青を基本とした羽織袴の上に黒の軽鎧を着込み、ソウジが肌身離さず持っていた日本刀を右手で軽く持ちながら彼は立っていた。
「あんた、目ぇ覚ましたのか」
戦意を失っていたソウジを始め、他の攻略隊はタイガの存在に驚愕の表情を浮かべて、困惑しているが、ユウキとハヤトはタイガがここにいることに関しまったく驚くことはなく、まるで元からいたかのような態度で話を続ける。
タイガはユウキの言葉に身体を少しだけぎこちなく動かしながら「何とかね」と短く答え、鈍りきった身体を解す様にゆっくりと伸ばし始める。
「それで何か打開策はあるのか?」
「あるっちゃあるが、あれが動けないんじゃなぁ……」
ユウキはそう答えると、後衛がいる中、一人未だにタイガの存在に驚きの表情を浮かべ開いた口を戻せていないソウジを見つめた。それにつられるようにハヤトとタイガもソウジへと視線を向けると、タイガは「あいつさえいればいいんだな。任せろと」と言ってソウジの下へと向っていった。
それから数分後、タイガとともにソウジがユウキたちの下へと戻ってきたが、ソウジは物凄い形相で勇気を睨みつける様に見つめながら何か言いたそうにしていた。あとでしっかり説明しないとなと心の奥底でそう思いながら、もう一人この策に必要不可欠である人物のサクラに声を掛ける。
後衛の指揮を一旦アキラに任せると、足早にサクラは招集に応じてくれた。スネーク・センティピードを横目にさらに数分間の作戦会議が行われたが、正直なところこの作戦もスネーク・センティピードに通用するか不安なところだった。何故ならほぼ全員の魔力が尽きかけており、まともに戦闘が出来てもチャンスは一度きり。ある意味賭けと言ってもいいものだった。
しかし、ユウキの作戦を聞いてタイガやソウジたちは特に反対する事もせず、「やろう」と一言そう答えただけだった。ハヤトとサクラも作戦を頭に叩き込むとすぐに準備すると言って後衛に戻り、後衛の者たちに作戦の旨を簡潔に説明し始めた。
「とりあえずこの作戦の総指揮はソウジ、お前に任せる」
「はぁッ!?何言ってんだタイガ!普通はお前かこの策を考えたユウキがやることだろ!」
タイガの言葉にソウジは驚きつつもそう言葉を返した。確かに指揮をするのであれば攻略隊の元々の隊長であるタイガかこの作戦を考えたユウキがやればいい話だが、ユウキもタイガもこの作戦においてはソウジがやった方がいいと考えていた。
「どっちにせよお前はもう魔力が無く黒百合の剣の力も使えないんだろ?だったら大人しく指揮に専念してくれ」
「だが……」
ソウジは何か言いたそうに口を開こうとするが、タイガの「じゃあさっさとやるぞ」という言葉に遮られてしまった。前衛にいる戦意を失っていない者たちもタイガの指示の下、作戦の内容を簡潔にだが把握したようですぐに武器を構え始めた。
「後衛の方も準備は出来たようだな。ユウキ準備はいいか?ソウジ指揮は任せたぞ。じゃあ……最終作戦を始めるぞ!」
タイガの掛け声に二人は静かに頭を縦に振り、おう、と声を張った。
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