ぼくはあなたの言葉がわかるのに、あなたはぼくの言葉がわからない…
その後、ぼくはパンを食べ終え、おにぎりをもらい、くちゃらくちゃらと食べていると、彼女の声が聞こえてきた。
「私ね、今日ショックなことがあったんだ…」
その声はさっきまでの声とは違って、どこか低くて、暗くなりすぎないように頑張っているように聞こえた。
「同期のね、一番仲の良かった女の子が辞めちゃったの…」
ぼくを優しく見つめて彼女は言う。
「すごくね…すごくショックだったの。仲が良かったんだから少しくらい相談してくれてもよかったのに、とも思ったら余計ショックで…私って彼女に信頼されてなかったのかな?とか思っちゃって…そしたらなんだか、どんどんどんどん体に力が入らなくなって、立ってるのもつらくなっちゃって…なんだか、すべてのことが嫌に思えてきて…自分の皆に対する立ち振る舞いとか、自分の作った笑顔とか、受け答えとか…もうね、何だか自分が本当はどう思ってるのかわからなくなって…本当は私、ショックじゃないのかな?とか、一番仲が良かった茜田さんが辞めて、傷付いてる自分を演じてるだけなのかな?とか、よくわからないことまで考え出しちゃって、そしたらなんだか気持ち悪くなっちゃって、自分の視界がぐるんぐるんと回っているような感じになっちゃって…私、今日、仕事どころじゃなかった…」
そう言って彼女は、困った顔をしながら一生懸命ぼくに笑ってみせた。その笑顔は少しぎこちなくて、そのぎこちなさがどうしてなのか…ぼくにはわかった。
彼女は泣きたいのに、笑っているからだ…
自分の感じている感情と逆の事をしている、だからどこか不自然になってしまう、それは当たり前のことだよ。あなたは何も悪くない。
「…」
そう彼女に言いたかったが、言えなかった。
彼女は人間で、今のぼくは猫なんだ…。
姿も言葉も違うんだ…。
ぼくはあなたの言葉がわかるのに、あなたはぼくの言葉がわからない…。
「…」
その時ぼくは確かな絶望を感じた。




