こんなぼくを見つけてくれてありがとう
彼女は(おにぎり)と(パン)をカバンから取り出した。
あ!知ってる!おにぎりにパンだ!あぁ…なんだろう、なんだか懐かしいな…。
「…」
口の中から急に唾液が込み上げてきた。おいしそうだな~、と思ったら急にお腹が空いてきた。この感じ、なんだかすごく久しぶりだな。
ぼくはこの二カ月と少し、何も食べていなかった、水も一滴も飲んでいなかった。それでもお腹は減らなかったし、喉も乾かなかった。それで体調を崩すことも、見た目がやせ細ることもどうしてか無かった。
「ふふ、わかるの?」
ぼくはきっと今、目を輝かせておにぎりとパンを見つめている。だってぼくは今、二カ月ぶりにお腹が空いている。いや、二ヶ月分のお腹が空いている。だからなのかわからないけど、お腹が減って減って、もうどうにかなりそうだった。
「ちょうだい!ちょうだい!」
ぼくは彼女を急かす。
「はいはい、ちょっと待ってね」
彼女は袋からパンを取り出し、食べやすい大きさにちぎってぼくにくれた。ぼくはそれを急いで口の中に入れた。
「う、うまい!」
ぼくの目はまん丸になり、溢れていた唾液が更に出てきて、口から零れ出そうになる。
こ、こんなに、こんなにおいしかったっけ?パンってこんなにおいしかったっけ?
ぼくがそのおいしさに驚きながら彼女を見ると
「はいはい、ちょっと待ってね」
と優しく笑って、またパンをぼくにくれた。ぼくはまた食べる。
ん~!んまい!
久しぶりの食事だからなのか、どうしてかわからないけど、ぼくは今まで生きてきてパンを、いや、食べ物を、あんなにおいしいと思ったことはなかった。そしたら急に彼女が
「ほんとうにありがとう」
とぼくに頭を下げた。ぼくはどうして彼女がそう言ったのかわからなかった。
「いやいや、ぼくの方こそありがとう」
ぼくも彼女にお礼を言った。
ここまで来てくれてありがとう
ぼくを嫌わないでくれてありがとう
こんなぼくに優しくしてくれてありがとう
優しい表情をしてくれてぼくはとてもうれしかった
頭を撫でてくれてありがとう
ぼくを優しく抱いてくれてありがとう
こんなにおいしい食べ物をくれてありがとう
「…」
彼女にはいくらお礼を言っても足りないくらいだ…。
「こんなぼくを、見つけてくれて、ありがとう」




