つまらない地面ばかりを見ないでほしい。地面を見るのであれば空を見てほしい。下ではなく上を向いて歩いてほしい
彼女だ!
肩まである綺麗な黒い髪、目鼻だちが綺麗に整った魅力的で小さく可愛らしい顔。そしてそんな自分の魅力に気付いていないというように、顔を下に向けて人を避けて、それでも人の目を気にしながら、トボトボと歩いている…。
「あれ?」
なんだろう…彼女は少し、いつもより元気じゃない。
いつも少し元気がなかったが、今日はいつもより輪をかけて元気がない…力なく歩いている。
嫌なことがあって落ち込んで歩いている…
「…」
力なく歩いている彼女を見てそう感じた。そしてそれと同時に、ぼくがそんな彼女を元気にしてあげたいという気持ちになった。彼女にそんな顔してほしくないと思った。
タタン!
ぼくは歩き出す。心臓はドキドキで、内心はすごいことになってるけど歩き出す。彼女の後ろを歩き出す。今日は気付いてもらうために歩き出す。元気がない彼女に元気になってもらいたくて歩き出す。
彼女は下を向いている。下と前を繰り返し見ながら歩いている。
彼女は上を向かない。空を見ない。
空にはあんなに綺麗な星空があるのに、あんなに面白い形の月が輝いているのに、彼女はそれに気付いていない。
ぼくはそれをもったいないと思った。
ぼくはきっと空が好きだ。
空は毎日時間とともに変化する。様々な色に変化する。雲は少しずつ動いている。そして太陽も気付くといつの間にか動いている。そして青くなったり、灰色になったり、神々しいオレンジ色になったりと、ぼくらが気付いていようが気付かないでいようが関係なしに、時とともにどんどんどんどん変化する。
そして太陽が姿を消すと今度は月が姿を現す。そしてぼくらに闇を届ける。真っ暗な空の中、月は確かな存在感で立派にそこにいる。まん丸になり、神々しく輝くときもあれば、なにやらよくわからなく先端が妙に尖って、中央はもうめちゃくちゃヘッコンで、少し威厳が損なわれているときもある。そして月も気付かぬうちに少しずつ動いていく。そして闇とともに空気を読んで、自己主張を少なめにといわんばかりに、闇へと同化している雲も少しずつ動いていって、そして雲の間からは、全く動かぬ星たちがキラキラと輝いている。
「空は暗く、月だけでは物足りんでしょ?」といわんばかりに綺麗に夜空に輝いている。
空は毎日、美しく面白い。
彼女にもそれに気付いてほしかった。つまらない地面ばかりを見ないでほしい。地面を見るのであれば空を見てほしい。下ではなく上を向いて歩いてほしい。




