私…なにしてるんだろう
上司の長い長い話がようやく終わり、私はようやく席につけた。それと同時に噂などが好きなおばさま社員達が、私のもとへ集まってくる。
「ねえ茜田さんの事何か聞いてないの?」
「あの子たしかに心弱そうだったからね~」
「私はやめると思ってたわよあの子」
「ほら高橋さん、あの子と仲良かったでしょう?何か聞いてないの?辞めるきっかけとか」
おばさま社員たちは口角を上げ、どこか楽しそうな感じを漂わせながら聞いてきた。私も頑張って笑顔をつくり
「え?…何も聞いてないです」
と言った。きっと私はうまく笑えてなどいない。
「え~本当に?」
「本当に何も聞いてないの?」
「本当は何か知ってるんじゃないの?」
「わ、私も驚いてるんです。本当に何も聞いてなかったから」
なんだろう…違和感を感じる。
「急にいなくなっちゃって…私もショックなんですよ」
こんな、こんな心がない軽い感じで言いたくなかったのに…こんな風に言ったら、私、悲しんでいないみたいじゃん…
「前からこの会社辞めたいね~とか、笑い合いながら言ってたことはあるんですけど…」
私の口から喋らなくてもいい、心がない軽い言葉がどんどん出てくる。
「もう、本当にショックですよ」
私は何を笑っているのだろう?それが作り笑いだとしてもなんだか自分が許せない。心がない軽い言葉を並べ立てて私は何をしゃべっているのだろう。私は何がしたいのだろう?
「じゃあ私、仕事しなくちゃいけないんで」
そう言って私は自分のデスクのパソコンを開いた。するとおばさま達は
「あ~そうね、いろいろ聞いてごめんなさ~い」
と言って去って行った。
私がこんなだから、茜田さんは私に相談してこなかったのかな?
「私…なにしてるんだろう…」
私は顔を両手で覆いながら下を向いた。