この目を大きくさせて、口が半開きになりながら驚いているニャーさんが大好きだ
私が会社を辞めてから三カ月が過ぎた。
私はあの日(ニャーさんと会った日)以来、一日も欠かさずニャーさんに会いに行っている。晴れの日はもちろん、雨の日も風の日も、私はあの公園に行った。そしたら君は必ず階段のところで可愛くちょこんと座って待ってくれていて、私たちは慣れた足取りであの公園へ向かった。
ニャーさんいるかな~
現在、時間はまだお昼、私は部屋にいても特にやることがなく、テレビを見ながら寝転がっていても不安しか襲ってこないので、気分転換に外へ行き、ニャーさんに会いに行くことにした。
いつも会う時は、基本夜の買い物に出かけた帰りの7時ごろなので(もしかしたら公園にいないかもしれないな~)と思いながら、私は公園へと向かった。まあとはいっても週に一回はこんな感じでお昼に会いに行ってるんだけど。
「…」
まあ、階段のところにはいないよね。
「…」
私は周りに誰もいないのを確認して、階段七段目の手すりと手すりの間を入っていく。
お昼に行くと、たまにニャーさんの彼女に会える。ニャーさんと二匹でベンチに座り、にゃんともまどろっこしい距離感を保っている。その猫ちゃんもとてつもなくかわいく、全身グレーで、目はニャーさんと同じエメラルドグリーンで、その二匹に振り向かれると、私はその可愛さに悶絶して少し動けなくなってしまう。そしてその間にいつもその猫ちゃんには逃げられてしまう。だから一回も触れていない、触りたいのに、触れてない…くそ。
今日はいるかな…
私が公園の入り口から顔を覗かせる。
ベンチにはいない…
第一候補のベンチは外れ…
私は少し不安になり急いで象のすべり台を見た。
「!」
するとすべり台の一番上のところで驚いて目を大きくさせているニャーさんと目が合った。
「ふふ」
私は思わず笑ってしまう。毎日見ても何回見ても可愛い、かわいくて可愛くてカワイクテ仕方がない。特に私は不意に現れたときに見せる、この目を大きくさせて、口が半開きになりながら驚いているニャーさんが大好きだ。
私は象のすべり台までご機嫌に歩いていき、小さな階段をのぼって
「ふふ、ニャーさんこんにちは」
と言って君の隣に座った。
たぶん、私は今日初めて喋った。一人でいると喋ることって本当に無いんだなと、この三カ月で身に染みるほど実感した。
ニャーさんを見つめると見つめ返してくれる。それだけなのに、私はなんだか幸せに思えた。私はニャーさんを優しく撫でる。そうすると君は静かに目を閉じる。それも今の私の数少ない幸せの一つだ。
「ニャーさん、私きっと今日、初めて喋った。一人でいると喋ることって本当にないんだね」
ニャーさんが撫でられながら綺麗な目で私を見る。
「私、最近…っていうかここずっと、ニャーさんとしか喋ってないよ。人間と全然話してない…。少し…寂しい。…少し、ほんの少しだけどね」
私はそう言ってニャーさんと自分に嘘を付いた。
「ニャーさんはここでなにしてたの?ボーっとしてたの?」
そう言うと寝転がっていたニャーさんが突然起き上がって私を見た。そして私の前に座って優しく私を見た後に「にゃー」と鳴いて、上を見た。私もニャーさんにつられて一緒に上を見た。
「!」
するとそこには青々とした空と、綺麗な真っ白い雲が静かにそしてゆっくりと流れていた。
ブワッ
その瞬間、少し強い風が吹いた。周りの木々はザアザアと音を立てて揺れている。
私はこの空を見ただけで、そしてこの音を聞いただけで、なぜか心が落ち着いた。今私は自然に包まれている、そんな気になった。
私はゆっくりニャーさんを見る。するとニャーさんは私に背を向けてすべり台の端に座り、目の前を見ていた。私もつられて前を見る。
すると目の前にはザアザアとゆっくりゆっくり揺れる木々があった。そしてその木から葉っぱが一枚静かに離れた。
ブワッ
その葉は突然吹いた強い風と共に空に高く舞い上がる、白く美しく輝く太陽のもとへ舞い上がる。葉は白く輝く太陽と、青く綺麗な空へ舞い上がる。その葉は私たちを置いて、木々よりも高く、とても高く舞い上がった。だが、途中で勢いを失くし、結局地面へと落ちてしまった。




