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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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あれ?なんだろう…今なら言えそうな気がする!

そんなある日、突然私にチャンスが訪れた。


その日私は、前日に終わらなかった仕事をするため、いつもより一時間以上早く出社していた。そして自分のデスクに座り作業していると、いつも遅刻ギリギリに来る部長がいつもより一時間ほど早めに出社してきた。そして私を見て


「お!早いね~。僕が一番だと思ってきたのに」


「あ、おはようございます。昨日の仕事が終わらなくて、今日はたまたま早めに…」


「あ、そうなんだ。大変だね~。今日ね、たまたま早く起きちゃったんだよ。それでね、まあ、早く起きちゃったし、たま~には早くに会社に行っちゃおうかな~ってね、なってね、来たんだよ」


 そう言って部長は、左端にある薄い扉を開けて、自分の部屋へと入っていった。


「…」


 あれ?なんだろう…


 今言えばいいのではないだろうか…


 今、誰もいないし…


 あれ、なんだろう、今なら、言えそうな気がする…


 今なら言えそうな気がする!


「…」


 私は席を立ち、カツカツと歩き出した。そして、部長が入っていった扉の前で呼吸を整えて


 コンコン


 とうるさくならないように、でも相手に聞こえるくらいの強さで優しくノックした。


「ん、はい」


 扉の向こうから部長の少し戸惑った声が聞こえてきた。私は扉を開けて


「失礼します」


 と堂々と中へ入っていく。


「あの部長」


 ここでかしこまっては、躊躇をすれば、言葉はもう、でてこなくなるだろう


「なにかな…」


「少し前から言わなければいけないと思っていたんですけど、一月前に父が倒れまして」


 もちろん本当の事ではない


「それからどんどん調子が悪くなっていって、今では介護が必要なくらい悪化してしまいまして」


 ずっと一人で、頭の中で考えていた嘘が


「今、父の介護を母が一人でやってるんですけど」


 流れ出るように、私の口から出てくる。


「やっぱり一人じゃ大変みたいで、母から電話で(会社を辞めて帰ってこれないか)って言われてまして…」


 私の心臓はバクバクといっている。私の体の中で不自然なほど大きく大きく脈打っている。


「……」


 少しの間沈黙があった。それはきっと、3秒や4秒だったと思う。でも私には30秒ほどの沈黙に感じられた。


「…そうなんだ、大変だね…」


そうなんです!


 大変なんです!


  だから辞めさせてください!


 私の心は醜く叫んだ。そう、これが本性だ…最後の9文字が言いたかった。そして今、遠回しにそれを伝えた。そのために長い長い時間嘘を練り、私は嘘で父を病気にし、嘘で母を鬱にさせた。そして私は少し困った顔を作り、今こうして、部長の前に立っている。


 私は人間失格だ…


 私は今、人として、恥ずかしいことをしている


 恥ずべき行動をとっている


 でも…それでも、それでも辞めたかった


 そうまでしてでも辞めたかった


「お父さんはどれくらい悪いの?」


 部長は本気で心配した顔で聞いてくる。


「少し前までは、立って歩いてたみたいなんですけど、最近は立つのもつらいみたいで…一日ずっとベッドの上みたいで…」


「ああ…それは大変だね。お母さんも、大変だ」


「はい…」


 部長は本気で心配してくれている。私はそれに対して少し罪悪感を覚えた。


「でも…申し訳ないんだけどね、すぐには辞められないんだよ」


 その言葉を聞いた時、私の心は少し踊った。すぐではなくても、ついに辞められるんだと心が躍った。


「辞めるのもね、申し訳ないんだけど~いろいろ面倒なものがあってね、早くて二カ月くらいになるとは思うんだけどね…」


 それから部長のこれからの辞める手続きなどの話が続いた。私は申し訳ないと思いながらも、嬉しさでにやけてしまわないように気を付けながら、話を聞いた。


 それから3カ月後、私はついに会社を退職した。


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