あの娘
「変化を欲しがる人がいたの」
「え…変化?」
「私はおじいちゃんとおばあちゃんと、あの何もない所で一日何が起こることもなく、何もなく暮らしていたの。私もおじいちゃんもおばあちゃんもその生活に満足していた。幸せだった。でもその中で、あの娘だけがその生活に満足していなかったの。彼女は毎日に変化を求めていた。何もないことを不満に思っていた。毎日が普通はこんなではないと思い始めてからは不満ばかりが募っていって、それは皆言わなかったけど見ててわかったの。そしてだんだん皆に対して反抗的になっていって、おじいちゃんとおばあちゃんは怒りをぶつけられると、どうしたらいいのかわからないような顔をいつもしてた。そりゃそうよ、だって、どうすることもできないんだもん。あの娘の怒りを静められるものはここにはないし、あの娘はここら一帯を拒絶していたし、皆の言葉に耳を傾けなかったし、私たちにはどうすることもできなかったの」
「…」
「そしてある日、あの娘は大きな荷物をたくさん持って、この家から出て行こうとしていた。私たちはこう言っちゃうとなんだけど、少し安心したの、もう拒絶してるからという感じの不愉快な態度も、理不尽な怒りも受けなくてすむ。私たちは少し悲しいという顔を作りながら、あの娘に何かを渡したりしていると、急に、あの娘は私を抱え上げた。そして私を狭くて暗くて寂しい場所に入れて、出られなくしたの。そしてあの娘は大きな声を出した。とってもとっても大きな声を出した。その声からは、怒り、憎しみ、何を言われても自分の意思は意地でも曲げるつもりはない、という強く頑固な気持ちがのっていて、おじいちゃんもおばあちゃんもすごく困った顔をしてた…」
あれ?目からなにかが零れ落ちた。そして視界が水の中にいるみたいにウルウルとしだす。
「…」
するとクロは私に優しくくっついて
「大丈夫だよ」
と言ってくれた。




