ずっとここにいたかった…
そして二匹でベンチの上に座り、猫一匹分のスペースをあけたまま、たわいのない話をする。人間のことについて聞いてみたり、私たち猫のことを教えてあげたりする。でも最終的にはいつも私が一方的に話していて、クロは優しい目をして少し笑いながら「うん、うん」とうなずきながら話を聞いてくれる。
「…」
ああ…クロのこの優しい表情を見ていると、ここに連れてこられる前の、あの優しくて楽しかったあのお家を思い出す。
あの頃は毎日楽しくて、しわだらけのおじいちゃんとおばあちゃんが私をとても大事に大事にしてくれた。いつもわたしに話しかけてくれて、言葉はわからないけどいつもわたしの言葉にも一生懸命耳を傾けてくれた。いつも優しく頭を撫でてくれた。そしていつの間にか、おばあちゃんの膝の上で私は気持ちよく眠っていた。おばあちゃんは私の頭を撫でている。おじいちゃんは優しく微笑んで私たちを見つめている。一日何かが起こるわけでないただの一日を、私は心地よくそして幸せに思っていた。そして一日一日は優しい時間とともにゆっくりと流れていった。
ずっとここにいたかった…
「ねえクロ、私、あのしわだらけのおじいちゃんとおばあちゃんと、ずっと一緒にいたかった…」
「ん?」
クロは突然の私の話に、目を大きくさせてなにがなにやらわかっていないような顔をした。
「優しいおじいちゃんがいて、優しいおばあちゃんがいて、そしてそこに私がいて、それで幸せだったのに…」
「…ま、前のお家の話?」
「そう…なんか、あなたを見てると思い出しちゃうの」
「そう…」
クロはなんだか気まずい顔をした。私は、べつに私が悪いんだからそんな顔しなくてもいいのにと思った。
「メグはどうしてここに連れてこられたの?」
「え?」
「自ら来たわけじゃないでしょ?」
うん
私はうなずいた。
「だったらなんで来たの?」
………
「あ、言いたくなかったら言わなくて大丈夫だよ」
ふふ、クロはいつも優しい。きっとクロが他の猫たちと仲良くなったら、きっと雌猫たちからモテモテになるだろう。
「変化を欲しがる人がいたの」




