ぼくは人間の言葉がわかるのだ
ぼくが記憶を失くしてから、もう一カ月が過ぎた。
ぼくは今、最初に起きたときにいたあの公園にいる。
象のすべり台の上に登り、仰向けになって空を眺めていた。
暇だ
尋常ではないほどに
ぼくはこの一カ月を何も目的もなく、何もすることもなく、誰か他の猫と話すこともせずに、ただただ ボーっと生きてきた。なんだかそんなことに焦りを覚える。こんなのでいいなかな?とぼくは一匹ただただ焦るが、焦ってもすることが特にない。公園から出て適当にうろちょろするほかない。
ぼくはずっとこんな感じで生きてきたんだっけ?
なんだかそんな気が全くといっていいほどしない。
ぼくは本当に猫だったのか?
そんな疑問が毎日頭に浮かぶ。
だけど浮かんだところで前の記憶も、何の手掛かりもないのだから、やっぱりどうすることもできない。
だからぼくは今日もここから空を見る。
何も考えず、ただ流れていく空を眺めている。
きっとそれがぼくにとって一番幸せなことなんだ。
そう思うことにしながら…。
ぼくはこの一カ月で気付いたことがある。
それは、やっぱりぼくはどこかおかしいということだ。
ぼくはこの一カ月、一度も食事をしていない。何も食べていないし、一滴も水を飲んでいない。それなのに体はピンピンしているし、空腹感を感じることも喉が渇くということもない。ぼくは栄養を取らなくてもどうやら生きられるようだ。
これだけでも十分といっていいほどおかしいのに、ぼくにはもう一つおかしなところがある。
ぼくは人間の言葉がわかるのだ。




