ぼくはこれからどうしたらいい…
どうやらぼくは、黒い猫であったようだ。
ぼくがそれに気付いてから、もう一か月が経った。
あの日、自分の尻尾にほんの少しだけ驚いてしまった日、ぼくは止まっている車のボンネットの上から、反射して見える自分を見た。そこにいたのはとても綺麗な緑色の目をした、全身真っ黒い猫であった。僕はそれを見た瞬間
あ、やっぱり…
と思った。そしてなぜか急に自分の心臓の音がドクンドクンと強く、そして重く聞こえてきた。
やっぱりな、だって…尻尾黒かったし、手も、猫っぽいなって思ってたし、歩き方も…座ってるときも…他にもなんか、木とか頑張ったら登れそうだなとか思ったりもしたし…
なんだかよくわからない感情がなぜだか急にブワッと押し寄せてきた気がして、ぼくは冷静な言葉をとにかく頭の中で並べ立てた。
人間の目も、異様に優しく見えたし…爪、爪研ぎたいなって、お、思ったし…やっぱり、や、やっぱり猫だったんだな。やっぱり猫だったんだ!ぼ、ぼくは猫だったんだ!
心臓が飛び出るのではないかと思うほど、強く重く脈打っている。心の中が深く傷ついたような感覚に襲われている。心の中がぐちゃぐちゃになっている。なんでそうなっているのかよくわからない。その感情にぼくは焦り、落ち着きを取り戻そうと、ぼくは心を静め、自分の記憶を思い出そうとする。
………あれ?なにもでてこない………
自分の姿、自分がなんであるか分かったら全ての記憶がよみがえる、勝手にそんな気がしていた。
ど、どうしよう…
急に絶望にも似た不安が押し寄せてくる。
なにをどうすればいいのかわからない…
ぼくは車のガラスに映る自分を再度見つめる。
これは…本当にぼくなのか?
すると次の瞬間後ろの方から
「あー!!ボンネットに…猫の足跡が…」
というなんだか複雑そうな声が聞こえてきた。ぼくは驚き一目散に逃げだした。
僕の目線はボンネットからアスファルトになり、アスファルトから砂利に変わり、砂利からいつのまにか土に変わり、踏みつぶせるほどの小さな草の上を走っていると思っていたのに、急に自分の何倍もの大きさの草の列がぼくの前に壁のように立ちふさがり、僕は立ち止まり唾をのんだ。
人間がいない場所、人間がいない場所、人間がいない場所
僕はそう呪文のように頭で唱え、恐怖に脅えながらソーッと草の中に第一歩を踏み出した。すると草はササッという音とともに、優しくぼくに道を開けてくれた。そして僕は草の中で身を隠した。
あの人間は別に追っかけてきていないと思う。でも、それでも何だか怖くて、走って逃げてしまった。そして今、自分よりも何倍も大きい草の中で身を潜めて隠れている。
ぼくはこれからどうしたらいい…




