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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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ぅぎゃお!

 ある日、ぼくは起きると公園にいた。

 

 辺りを見渡すと、真ん中に象のすべり台があり、右端にはブランコ、そして左端にはベンチ…があった。


 ………


 ぼくはどうして公園にいるんだろう?


 ぼくは記憶をたどったが何もでてこなかった。というよりも、思い当たるものどころか、記憶というものがなにもかも出てこなかった。ぼくの記憶というものが、きれいな真っ白い紙になってしまったような、そんな感じがした。


そしてぼくはある重大なことに気が付いた。


 ぼくはなんだ?


 ぼくは、ぼくという生き物、ぼくがなんであるのか、わからなかった。


 ぼくはとりあえず立ち上がろうと体を起こそうとする。


 ん?


 これは…なんだ?


 ぼくの斜め後ろにフニャフニャと奇妙に動く黒い細長い物体が目に入った。



ぼくはその物体がなんなのかキッと威嚇しながら目を逸らさずにジッと見つめる。するとその物体はシュンと垂れ下がった。ぼくはそこで勝利を確信し、誇らしげな顔をした。


ぼくは立ち上がり、しゅたたたたと歩く。


ん?


ぼくはいつも、こんな感じで歩いていたんだっけ?


というよりも…ぼくはもともと、手を地面について、四つ足で歩いていたんだっけ?


あれ?


ぼくの手はこんなに黒かったっけ?


なんだろう?


体が妙に軽い気がする。


……


歩くのこんなに早かったっけ?


というよりも…なんだろう…すべてのものがとても大きく感じる。


木々はこんなに大きかったっけ?


地面はこんなに近かったっけ?


自分よりも大きな草がこんなに生えていたっけ?


全てのことが疑問であり、そして新鮮だった。


ぼくはいったいなんなのだろう?


ぼくはなんだったのだろう?


いろんな疑問が嵐のように押し寄せる。


ここはいったいどこなんだ?


ぼくはいったいなんなんだ?


知りたいことが山のようにある。


ぼくはこの山を早く出るため駆け出していた。


はあ、はあ、はあ


高すぎる木々に恐怖を感じ、自分と高さの変わらない草がそこらじゅうに存在することを不安に思い。 走れば走るほど頭が混乱し、何かを思い出すどころではなかった。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…


自分は恐怖心と不安にさいなまれ、走っていた足はしだいに早歩きになり、それから徐々にスピードが落ちて、ついには立ち止まってしまった。自分の腰が引けているのがわかる。



すると何かが地面に付いた感触がした。ぼくはその感触の方へ素早く振り返る。するとそこには、ぼくが先ほど威嚇した、黒く細長い物体がそこにいた。ぼくが(つけられた!)と驚いた瞬間、そいつは急にフニャフニャと動き出した。


!!!!!!


ぼくは恐怖で


ぅぎゃお!


と恥ずかしい声を上げ、勢いよく飛びあがり、地面を背中に着地した。そしてなぜかその一連の動作がスローモーションのように感じられた。


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