私ね、今日ショックなことがあったんだ…
お昼に食べようと、今朝買った袋を取り出したが、まるで食べる気がしなかった。
胃がむかむかして、全身からは一ミリたりとも力が出ない。
私は机に突っ伏したままお昼休みが終わった。
そうだ…私、今日悲しいことがあったんだ。茜田さんが辞めるのを聞いてからずっと、全身から力が抜け落ちたかのようになっていたんだ。会社を辞めたがっていたんだ。死にたがっていたんだ。
私がどうやっても食べられなかったものを、きみは美味しそうに食べている。そしてなくなると、もっと欲しいとわたしにせがむ。
「はいはい、ちょっと待ってね」
私はそう言って笑っている。この笑いは無理に笑った引きつった笑みでも、へたくそな作り笑いでもない。私は純粋に笑っている。笑えている。それは今日、きみに会えたおかげだよ。
「ほんとうにありがとう」
私はそう言って、ニャーさんに頭を下げた。その姿を見てニャーさんは嬉しそうにニャーニャーと優しい声で私に鳴く。そしてふがふがとちぎったパンを食べた。
「…」
家に帰っても、誰もいない。
私はふと家に帰った自分を想像した。
一番仲の良かった茜田さんがいなくなってしまったことを相談する人も誰もいない。
どうせまた、私は、一人で悩み続ける。
私は相談する相手もいない、寂しい女だ。
悲しい女だ。
「…」
私は一生懸命パンを食べているニャーさんを見る。私は笑みをこぼし、空になったパンの袋をしまい、おにぎりを取り出す。
ニャーさんの目が更に輝きを増す。
「ふふ、おにぎりもわかるんだ」
私はそう言っておにぎりをバリっと取り出した。ニャーさんの顔程の大きさのおにぎりを、私はどうやってちぎろうか考える。ニャーさんは、早くくれ早くくれとにゃーにゃー鳴きながら手を不器用に動かしている。
「ああ、もういいや!」
私はそう言って、おにぎりをそのままニャーさんの前に置いた。ニャーさんはおにぎりを器用に両手でつかみ、はむはむと端の方から器用に食べ始めた。
「ふふ、かわいい…」
私はそう言ってニャーさんを見つめる。可愛いなと思ってみていると
「私ね、今日ショックなことがあったんだ…」
私の口から不意に隠していた言葉が出てきた。
「同期のね、一番仲の良かった女の子が辞めちゃったの」
私はそれからニャーさんに、今日あったことを話し続けた。