1人増えた
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
主人公は彼女(?)の正体をまだ知りません。
ではでは~
久々に2人分の料理を作ることになった。
1人暮らしが始まってから、外食よりも自炊の方に嵌ったおかげでレパートリーは多いと思う。
何を作ろうか?
牛、豚、鶏、魚、鍋?
彼女(あれ?彼だっけ?)は、何が好きだろうか?
昨日の感じでは鶏肉だとハズレはない。
シチューがOKだったから、鍋にしよう。
牛肉、豚肉はカタロース、鶏は手羽元、ブリは刺身用の切り身を薄切りしてシャブシャブにしてみよう。
全部2人分、多いと思うが残ったら冷凍にして別の料理に使えばいい。
いつもと違って、買い物に気合が入っている自分に気が付いた。
(何年ぶりかな)
= = = = =
帰り道、ふと気が付いた。
彼女を泊めたことは、成り行きだった。
どうして彼女を家に置いてきたのか?
家には、ささやかながら貴重品がある。
持ち逃げされたら、ショックだな。
そうこう考えながら家の前まで帰ってきた。
カギを開け、玄関に入る。
食材の入ったレジ袋を落とした。
目の前に大男が立っていた。
= = = = =
「へぇー、こ、こちらが護衛の方ですか」
「はい。ようやく、わたしの許に参ったようです」
≪シャコー、シャコー≫
「へぇー、そ、それは大変だったんですね」
「いえ、お助けいただきましたので、大事には至りませんでした」
≪シャコー、シャコー≫
今、俺たちは並んで食事の準備をしている。
鍋だから大したことはしていない。
野菜を一口大に切り、出汁をとっている。
肉は柔らかくなるようにプスプスと包丁を刺して筋を切る。
≪シャコー、シャコー≫
後ろから嫌な音がする。
玄関に立っていた大男は、砥石で大剣を研いでいる。
なせが、さっきから背筋がひんやりとして、時折鳥肌が立つ。
「そ、そろそろ、食べようか」
「はい」
3人の食事なので、ダイニングじゃなくリビングに移る。
リビングのこたつテーブルの周りに座布団を敷いて、腰を下ろす。
フロアカーペットは敷いてあるが、座布団は便利だ。
だらだらゲームをするときは抱え込み、本来の使い方で枕に変身。
うたたねしたら、布団替わり、は、季節に左右されるか。
彼女がすぐ隣に座る。
大男が後ろに立つ。
非常に落ち着かない。
「えーと、どうしたのかな?」
「はい。朕は、お箸に慣れておりませんので、お手伝いいただきたいと存じます」
「じゃ、じゃあ、彼はどうしたのか?」
「家臣ですらございませんので、お気遣いなく」
どうぞお構いなくとモノ扱いだった。
「あーー、落ち着かないんだけど」
「そうですね。即刻、出ていくように命じます」
今度は、邪魔扱いに切り替わる。
「そうじゃなくて。一緒に夕飯にしようと思うんだけど」
「・・・朕とふたりじゃ嫌なのですか」
「いやいや、そういうのじゃなくて、ほら、食卓を囲むって、ほっこりするしさ」
「そういうものなのですか」
彼女には、食卓を囲むという習慣がなかったようだ。
「ものは試し、一緒に食べよう」
「はぁ、そのように申されるなら」
彼女は納得していない。
「さ、さ。君も座った、座った」
大男は、俺が話し掛けても反応しなかった。
「座りなさい」
彼女の言葉ですぐに座った。
「面目次第もございません」
彼女は頭を下げることをしない。
なんとなく彼女の身分が判ってきたような気がした。
大男の顔から血の気が引いている。
これは、彼女たちの問題なんだろう。
口出しするわけにもいかないので、鍋に食材を放り込んでいくことにした。
クツクツと煮え始める。
≪≪グ、グーーーーー≫≫
彼女らは食欲旺盛のようだ。
(足りるかな?)
= = = = =
彼女らによそってあげる。
彼女は、見よう見まねで箸を使い、大男の方は、諦めたのか握り箸だった。
慣れないまま食事をするのは、楽しくないだろう。
キッチンへフォークとスプーンを取りに行く。
「箸に慣れるまでは、これを使ってください」
(あれ?彼らがずっと居る気になってる?)
「いえ、わたしは大丈夫です。お気遣いに感謝します。お前は、使いなさい」
彼女は負けず嫌いのようだ。
しかし、昨日今日ではさすがに慣れないだろう。
彼女の箸を使って、食べさせることにした。
彼女は、おいしそうに食べる。
和風の味付けには、慣れたようだ。
なんとなく、ひな鳥の飼育をしている気がしてきたところで食事が終わった。
余ると思っていた食材は、すべて彼らの胃袋に収まった。
ふと自分がおかしいことに気が付いた。
彼には額に角がある。
それを気付いていたが、不思議に思わなかったのだ。
いかがでしたか?
まだまだ、ゆるゆるです。
次話をお待ちください。