1話 興味
今回は短めです。
今、僕の腹に向かって牛のモー君の後ろ脚が物凄い勢いで向かってきている。躱す事も出来ずに目線だけで足の行く先を追っていくだけ。
「グフ!」
炸裂した後ろ足の蹴りが真面に腹に入った。2・3m位後ろに吹っ飛ばされたかな?
猛烈な痛みで蹲ったまま立ち上がれず、そんな事考えている余裕がないけどね。
痛みに耐えながらもモー君が心配で何とか顔を上げると、その場で暴れていたモー君が僕に向かって突進してきた。
しかもモー君が出せる全力のスピードで。いつもの僕にじゃれる為に駆けて来るのではなくて、標的に向かって攻撃する為の突進。
「や、やばいぃぃ」
何とか避けようと足に力を精一杯入れて立ち上がろうとするけど。うん、無理。だってガクガクしか言わなくて中腰のまま動けないもの。
「ギャン!!」
奮闘虚しく、突進されて再度吹き飛ばされる僕。おまけで何往復もされる。
打ち所が悪かったのか、次第に感覚が無くなってきて痛みも無くなってきた。でもそれまでに体中の骨が折れたり臓器を痛めたのが分かった。だって聞こえちゃイケない音が盛大になってたもの。
何か意識が薄れてきた。
あぁこのまま死んじゃうもかなぁ。何て思っていたら、パーンと乾いた音が鳴った。少しだけ動く目で横を見ると、モー君が暴れるのを止めて横に倒れていく所だった。モー君が僕よりも先に死んじゃったか。
凄く珍しい牛で、全身が薄いピンクの体で生まれた牛だった。
性格も大人しかったけど、怒ると手の施しようのない暴れん坊なんだけどね。
「!!! !!! !!!」
誰かの声?音?が聞こえて来るけど、もう何だか分からない。体も感覚が無くなってきて、痛みも消えてく。死んじゃう事への不安や恐怖もあったけどそれも消えてった。
その日の夕方のニュースの中で、とある男の死亡のニュースがテレビで流れた。その男は不思議と生き物に、それは人や動物、虫等の括りは無く全てに愛されていた。その男もまた、全ての生き物を愛した。
そんな男の死亡原因が、長い間一緒に過ごした牛の暴走による事故死だと言う事実に人々は悲しみこう思った。『また人生を得れるのなら、今度は好きな動物たちと人生を全う出来ますように』っと。
また、暴走した牛の原因も調査された。結果は病気ではなく、近くに居た者たちによる悪意ある悪戯が原因だった。
その為か、死んだ牛も元々人気があり。なおかつ男との関係が深かった事により。丁寧に火葬された後、珍しい事に男の遺骨と共に埋葬された。
世間に流れたニュースを見ていた女が呟く。
「面白いわね」
この女のちょっとした興味から、とある世界での話が変わって行く事になる。
今後は暫くの間はこっちが更新が早くなりそうです。