10話 順番みたいです
順番で、それぞれの赤ちゃんと家族が前に出てお披露目をして行く。
その中で僕みたいに聖痕や加護を持っている人は居ないみたいだ。珍しいものだから持っている人はそんなに居ないだろうけどね。
そうやって僕の順番が来るまでプリナちゃんに服を握られたまま待っていると、先にプリナちゃんの順番が回ってきた。順番が来て、前に出ようとしても僕の服を握って離さないからスイさんは少し困っていたけど、僕が赤ちゃん言葉のままプリナちゃんに「いってらっしゃい」って言ったら離してくれた。あれ?僕の言葉が通じたのかな?
プリナちゃんの次が僕だから、そのまま後を追うように席をママが立ってスイさんの後ろに並ぶ。
後ろで待っている間も、プリナちゃんは僕の方に顔を向けてた。スイさんの体で見えないようだけどね。
「有難う御座いました。
次は貴女たちね。アンナちゃんに良い結果が出ると良いわね。
終わったら後で、ゆっくりと話でもしましょ」
「えぇ良いわよ。また後でね」
順番が終わったスイさんが、ママに場所を譲りながら言葉を交わしてゆく。
ママがそのまま説教台の前に着くと、イングさんが周りの人にするのと同じような感じで話しかけてきた。
「次のご家族ですね。
では、お子を抱いたままで良いので。親御様からご自身の信仰する神へ、お子様のご報告とお披露目をして下さい。
その間にお子様の個人証明書となるカードをシスターの方で作らせていただきます」
「分かりました、イング様。お願いします」
ママがイングさんの説明に返事をして僕を抱え直す。
「それでは貴女が信仰する神の名は?」
「水の神のミストルディア様です」
「では水神ミストルディア様へのご報告をお願いします。
皆さん、お願いします」
イングさんの合図でママが水の神様のミストルディア様?誰だか分からないけど、僕の報告とお披露目をする為にお祈りを始めた。それに合わせてシスターのカンナさんが小さなプレートを持って僕の所にやって来て笑顔で話しかけて来る。
「やあアンナちゃん、直ぐに終わるからジッとしててね」
「あう」
僕はママに抱きかかえられてるから、空いている外側の左手を取ってカンナさんが持っていたプレートを手に押し当ててきた。少し冷たくて気持ちが良いかも。
ママがお祈りを捧げ、カンナさんがカードを作る作業に入って少し時間がたった時にそれは起きた。
最初にママがその異変に気が付いて、「あれ?」って小さな声を上げて沢山ある像の方へと顔を上げるとほぼ同時に2つの像が光りだした。勿論その内の1つはマリア様の像で、もう1つは知らない神様の像。
周りの教会の人たちも参列者の人たちも「え?何」って感じでザワザワし始めた。でも不思議と赤ちゃんたちは喚いたりしていなくて、大人しくしている。
僕と同じように、悪いものではないと感じているのかな?この光は心地よいものに感じるし。
一瞬、光が視界を覆ってから光が弱くなり視界が元に戻ってくる。すると僕とママの前に、やっぱりと言うか何と言うか、マリア様が居て、その隣には知らない女の人が立っていた。
マリア様は前にあった時の様にビシッとして居るけど、来ている服装はスーツとは違ってよくある想像しやすい「あぁ女神様っぽいな」って感じの服を着てる。これはこれで似合ってますけど。
もう一人の方は、マリア様とは違ってほんわかする感じの雰囲気の方で、可愛らしい感じの顔つきだね。
髪の毛の色は、マリア様と一緒に居るってことは水の神様なんだと思うんだけど、その神様っぽい感じで水色の髪の毛をしている。何となくだけど、マリア様が仕事が出来るお姉さまだったら、この人は御近所の面倒を見てくれる優しいお姉ちゃん的な存在な親しみやすさがあると僕は思う。
「もっ申し訳ありません!!
貴女様方は水の神ミストルディア様!それにせっ聖母神マリア様で在らせられますか!」
いつの間にかに両膝を着いて胸の前で両腕を組んでいるイングさんが、突然現れた2人に緊張しながらも質問をした。
「はい、そうですよ~。
私が~水を司る~ミストルディアです~。
そして~こちらが~私の母でもある~聖母神の~マリア様です~」
声も第一印象通りに優しい感じだけど、何か間延びしてて不思議な差喋り方をしてる。
そして神様発言で、周りの騒めきはもっと大きくなってる。それとほぼ同時に皆、イングさんと同じように膝を着く形でひれ伏してる。
「ほら、ミストルディア、もう少しシッカリしなさい。何時まで寝ぼけているのよ。
それと初めまして、皆さん。そしてお久しぶりね君」
まさか間延びしていた理由が、寝ぼけていたからだなんて。神様も色々いるんだね。
「あうあー!(お久しぶりです)」
「貴方との約束を果たしに来たわよ。
ミストルディアはついでに付いてきた感じね」
「そ~じゃないです~。
お母様が~アンナ君に会いに行くって~言うから~、私も~信仰してくれている~アンナ君の~お母様に~挨拶でも~って思って~来たんですよ~」
何と、僕たち家族にそれぞれの神様が来てくれるとは思わなかった。