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僕とお兄さんのひと夏の思い出  作者: 宙兵&桔梗
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8月29日

 10時30分位の事だ。

 いつも通り、俺は公園のベンチで座り込んでいた。

 とても暑いこの時間帯だが、ベンチは木陰となっており少しばかり快適である。


「お兄さん、おはようございます」


 少女ちゃんが俺を見つけるなり顔を輝かせ駆け寄ってきた。

 何この可愛い子。

 色々語りたくもあるが気持ち悪いので自重しよう。


「おはよう少女ちゃん。はい、これお土産」

「えっ、ありがとうございます! どこ行ってきたんですか?」

「東京の方まで少し」


 嬉しそうにお土産が何なのかをのぞき込む少女ちゃん。

 とりあえず何を買えばよかったのかわからなかったのでひよこと東京バナナを買ってきた。


「お兄さん、どちらか一つで十分でしたのに」


 少女ちゃんは苦笑している。

 

「まぁ、ありがたく貰っておきな」

「ありがとうございます。ところでお兄さん。」

「どうした?」

「お話ししましょう!」

「いつもの流れはいいのか?」

「少しでもお兄さんとお話ししたいので省略です」


 今度は俺が苦笑してしまった。


「いいけどよ。話題はあるのか?」 

「方言の話とかどうでしょう?」

「方言ね」

「お兄さんここら辺出身じゃないので色々と話してもらえそうですもん」

「そうだな……。俺自身のところは訛りがそこまである場所でもないし詰まらんかもしれないぞ」

「お兄さんわりと綺麗な話し方してますもんね」

「俺もそう思っているけどこっちの友人とそんな話したら絶対笑われちまうよ。それはねーよって」

「そうなんですか?」

「そうみたいなんだよな。少女ちゃんも訛りほとんどないよな。〜〜だがー、とかここら辺の訛り」

「自分ではないつもりです。色々本とか読んでますから僕は」

「それは大きいかもしれん」

「お兄さんが言って通じなかった言葉ってなんかありますか?」

「ほとんど方言は使ってないつもりだったんだが、裏って言葉は無意識に使って皆にポカーンとされる」

「裏?」

「俺の住んでたところでは後ろの事を裏って言っても通じてな。このプリント裏に回して、とか裏の方に座って、とか」

「へー、確かにぽかんとしちゃいます」

「俺がぽかんとされるのはそれ位だ。俺が聞きなれなかったのはあれだな、とっきんとっきん」

「とっきんときん使わないんですか?」

「使わんな。あとけったとかも始め何かと思った」

「僕普通だと思ってました」

「そんなもんなんだよ。あとなんだっけあの熱いって言う意味で使われてるの」

「チンチ――はめましたね!」

「さぁ、何のことだか」


 真っ赤になる少女ちゃん。

 ばかわいい。

 いや特にはめるも何も深い意味なんてなかったよ。

 本当だってば。


「お兄さんのエッチ」

「何の事だかさっぱりだな」

「むー、そんなに僕の口から、その……ンなんて言葉聞きたかったですか?」


 思わぬ反撃をくらってしまった。

 少女ちゃんは恥ずかしながら一矢報いてやったぞ的な顔をしているが甘い。


「なんだって?」

「それは反則です!!」

「何が反則」

「……今日のお兄さんはとことん意地悪ですね」

「おじさんなら若い子はからかいたくなっちまうもんだ」

「まだそんな歳でも無いでしょ」

「少女ちゃんはほんとに可愛いなぁ」

「いきなりどうしたんですか!?」

「すまん、なんでもない」

「なんでもないですませたくないんですけど」

「24にもなるとだんだん現実を突きつけられてな」

「何かあったんですか」

「東京いくついでに実家によったら結婚はどうするんだとかいろいろ言われてな」

「なるほどです。お兄さんなら全然問題ないって答えれそうですけど」

「そんなわけないだろ」

「……」


 何か言いたそうな顔をしている少女ちゃん。

 まるでこれでダメだったらすべてを諦めそうな雰囲気さえ感じる。


「お兄さんて鋭そうで鈍感ですよね」

「何言ってんだか」

「そういうところも含めて……です」


 大事なところがなにも何も聞こえなかった。

 もう一度言ってくれとは言えなかった。


「ま、どうせ聞こえなかったでしょうけど問題ないです」

「おいおい。それはひどいぞ」

「大したことじゃないですから大丈夫ですよ。僕時間なのでもう行きますね」

「……ん、気を付けて帰れよ」

「はい、また明日です」

「また明日」






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