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僕とお兄さんのひと夏の思い出  作者: 宙兵&桔梗
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8月22日

 午前7時くらいの事だ。

 あー。

 あーーーーーーーー。

 あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

 とんでもないことをやらかしてしまったことを目覚めると同時に腕の中にある柔らかい感触で理解した。

 衣服が乱れていないのだけは救いか。

 やけになって少し抱き心地を楽しんだ後、少女ちゃんの様子をうかがう。

 腕の中にいる少女ちゃんの意識はすでに覚醒しており、俺を上目遣いで見上げていた。


「えっと、その……おはようございます?」

「……おはよう、少女ちゃん」


 挨拶をしてきた少女ちゃんの顔は赤い。

 どちらもとてもぎこちなく、居心地が悪い。


「あの、その……お兄さん、シャ、シャワー借りてもいいですか?」

「ああ、いいよ」


 俺と少女ちゃんは起き上がった。

 時期が時期なので……いや、クーラーは効いていてそこまで寝苦しくもなかったのだけれども俺に抱きしめられ続けた少女ちゃん的には汗がべたついて気になるのかシャワーを浴びたいようだ。

 俺の汗が気持ち悪いだけって可能性もかなりの確率であるが……。

 男の部屋に来てシャワーを要求するとは無防備すぎるような気もするが、俺は少女ちゃんに反応するようなロリコンではないので何も言わないでおく。

 

「お、お兄さん、服どうすればいいですか?」

「……済まんが、俺のジャージでも着ていてくれ。うちの洗濯機は乾燥機付いてるから少女ちゃんの服が問題なければさっさと回すが」

「……か、乾燥機で着れなくなるってこともない服なのでお願いします。あとジャージお借りしますね」

「ん、了解。ドライヤーも好きに使ってくれ」

「ありがとうございます」


 少女ちゃんにジャージとバスタオルを渡し、そそくさと脱衣所から俺は逃げる。

 その間に朝ご飯の準備を行う。

 とりあえずトーストにベーコンと目玉焼きを乗せたものを二人分用意し、皿に置いておく。 

 コーヒーは飲めるかどうか知らないのでまだ入れずに自分の分だけ用意した。

 そうしているうちにシャワーが終わったようで上のジャージを着ただけの少女ちゃんが現れた。

 俺のジャージは大きかったようで、ワンピースのような格好となっている。

 ……狙っているのかこの娘は?


「シャワーありがとうございました」

「……少女ちゃん?」

「そ、そんな目で見ないでください! ズボンはずっちゃいそうで履けなかったんです!」

「別にずってくれてもいいんだが」

「僕は気にするんです!」

「その格好の方が俺は気になるんだが」

「……お兄さんのエッチ」


 ……解せぬ。

 

「……朝ご飯用意しといたからとりあえず食べようか。少女ちゃんコーヒーとオレンジュースどっちがいい?」

「えっと、コーヒーでお願いします」

「アイス? ホット? 砂糖とミルクはどうする?」

「アイスで、砂糖とミルクも少し欲しいです」

「了解さんっと」


 少女ちゃんにコーヒーを入れて上げ、ガムシロップ、ミルクと一緒に渡す。

 俺は朝はブラック派である。


「お兄さん、ブラックなんですね。かっこいいです」

「俺は砂糖ありでもいけるが朝はとりあえずブラック派だ」


 ブラックをかっこいいと思う年ごろか。

 俺にもあったような気がしないでもない。

 少女ちゃんの年齢の頃、コーヒー自体あまり興味が無かったような気もするが。


「「いただきます」」

「……」

「……」


 二人で朝ご飯を食べ始めた。

 少女ちゃんの食べている様子はハムハムという擬音が良く似合う。


「おいしいです。お兄さん料理できるんですね」

「料理っていえるほどの物でもないが少しなら」

「……」

「……」


 さっき、ぎこちなさもとれたような感じもしたが、向かい合って食べてると昨日の事を思い出して、再びぎこちない雰囲気になってしまった。

 時折、こちらをちらっと見ては目があったとたん慌ててそらす少女ちゃんがいたたまれない。

 チラ見してくる少女ちゃん可愛い……なんて言ってる場合じゃないな。

 さて、どうしたものか。

 腹をくくるか。


「その、だな……少女ちゃん」

「……はい?」

「昨日はすまんかった!」

「べ、別に何とも思ってたりなんかしませんよ」

「本当にか?」

「本当にです」

「そっか……」

「本来、突然訪問した僕が悪いんですもん。…………ただ」

「ただ?」

「……僕、初めてだったんです」

「うっ」


 なんか別の意味に聞こえるからもう少し考えて話してほしい。

 いや、間違っちゃいないんだろうけどさ。

 少女ちゃんは唇を触っており、自然と目がそこへ行ってしまう。

 だから何だという話でもないんだが。


「その……せ、責任……」

「ぐふっ」


 慰謝料、賠償金、そこら辺の言葉が嫌でも頭に浮かんできてしまう。

 14歳の大切なものを奪ったことに対する責任など何をしていいのかわからない。


「本当にすまなかった! お詫びなら何でもするから許してくれ!」

「本当に何でもしてくれるんですか?」

「……可能な限りは」

「そこで若干弱気になるあたりお兄さんらしいですね」


 少女ちゃんは苦笑いでしょうがないですねと呟いた。


「どうしましょう」

「……」

「じゃあ……」

「……」


 やってもらいたいことはいっぱいあるのか長考のあと、少女ちゃんは上目使いで願いを言った。


「明日、買い物に付き合ってください」

「なんだそんなことでいいのか」


 拍子抜けした気分だ。

 少女ちゃんは何故か驚いた顔をしている。

 まるで願おうと思ったことと口から出てしまったことが違ったかのような顔である。


「本当にそんなことでいいのか?」

「お、女に二言はありません!」

「俺は別にいいんだが」

「ちゃんとエスコートしてくださいね!」

「……仰せのままにお嬢様」

「お兄さんは明日一日拒否権は無い奴隷なんですからね!」


 若干願いがグレードアップしたような気がしないでもないが考えたら負けか。

 明日は、10万くらいは用意しておこうか。 

 そ、その程度で済むんだったらまだやった罪に対して軽い方だと寒くなるであろう懐の事は忘れて前向きに考えよう。

 少女ちゃんは良識があるほうだと信じている。

 良識無い事やらかしてしまった俺が言えることではないが。


「明日が楽しみです」

「その前にしっかり親と話をするんだぞ」

「……もっと厳しい責任の取り方の方がいいですかお兄さん」

「……カンベンシテクダサイ」

「……とりあえず頑張ります」


 その後、俺たちは洗濯と乾燥機が終えるまで明日の予定を話した。

 ただのデートって形で落ち着きそうでなんとなく一安心。

 乾いた服に着替え少女ちゃんは帰ろうとしている。


「あ、お兄さん、このジャージ洗って返しますね」

「別に荷物になるだけだから気を使わないでおいて行ってくれていい」

「いや、でも、お兄さん……」

「どうかしたか?」

「お兄さん、エッチだからその……」

「いやまて、前提が変だ」

「変じゃありません。このジャージおいて行ったら洗う前に嗅ぎますよね?」

「嗅がねぇよ! 俺はどんな変態になってるんだよ」

「中二の娘にキスを――」

「すみませんでした、俺が悪かったです」


 俺がやらかしてしまったことはあまりにも大きな弱点となってしまった。

 少女ちゃんはケラケラと笑っている。


「てことで洗って返しますね」

「そんなこと言いながら少女ちゃんも嗅ぎたいだけなんじゃないか?」

「……」


 …………ん?

 すぐさま「そんなことあるわけないじゃないですか」とでも返ってくるだろうと重いからからかい返したが少女ちゃんは考えてもいないことを考えさせられてしまったようで想像したのか真っ赤になった。

 

「……ソンナコトシマセンヨ!」

「間が気になるが少女ちゃんにメリットは無いだろうし気にしないでおこう」

「なんかその目は嫌です!」

「失礼な、素だ」

「絶対嘘です!」

「はっはっは」

「もう!」

「ま、気を付けて帰れよ。あとしっかり話し合えよ」

「……お世話になりました。明日楽しみにしています」

「おう、俺も楽しみにしておく」

「絶対約束破らないでくださいね!」

「善処するさ」

「じゃあお兄さん、また明日!」

「また明日」

 






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