20
8月15日
午前11時10分くらいの出来事だ。
やらかした。
過去最大に遅れてしまった。
いや別に約束しているわけじゃないんだけど。
いかない時の約束はしたような気がするが。
少し焦って汗だらだらにまでした俺はなんとか公園にたどり着いた。
いつものベンチに少女ちゃんは…………いなかった。
ふぅ。
寂しい気持ちも少しあるけど待たせなくてよかったよかった。
帰る前にトイレよっていくか。
トイレに向かう途中、ちょっと離れた木の奥で見知った頭が見えたような気がした。
こっそりこっそり近づいていくとやはりそれは見知った頭だった。
「ひゃーーー」
少女ちゃんがしゃがみこんで木の棒で何かをつついている。
顔は真っ赤だ。
この時点でもう察せているが、声をかけるべきかどうかは迷うな。
俺には気が付かない。
…………。
「うわぁーー」
落ちているアレな本に熱中している少女ちゃんの肩にポンと手を置く。
面白いほどに飛び跳ねる少女ちゃん。
「っ!?」
「……」
「えっ、はっ、ち、ちゃうんでう!?」
「とりあえず落ち着こうか」
「あえぁああ」
駄目だ、全然効果が無い。
面白がらず立ち去るかベンチに戻るかしてそっとしておいた方が良かったかもしれない。
デリカシーにかけてたかもしれないがあふれ出る欲求をおさえることができなかった。
仕方がないと思う。
いつものベンチまで誘導し、落ち着くのを待つ。
「…………」
「落ち着いた?」
「……ご迷惑をおかけしました」
「そうぅっ」
「!?」
笑いをこらえきれなくて吹き出してしまった。
羞恥や怒りが入り混じった顔で恨めしそうに俺を見上げている。
「いや、すまんすまん」
「〜〜〜〜」
「ほら、そんなに怒るなって」
「怒ってなんかいません」
「さよか」
「さようです」
「でも……」
「なんですか」
「ふーむ……」
「なんなんですか」
「なるほどねぇ……」
「むっきーーーーー! お兄さんのバカ!!」
しまった。遊びすぎた。
「まぁ、少女ちゃんもさ、お年頃だし」
「……」
「親とか家族に見られたよりはましだろ」
「……親には絶対にこんなシーンみられることはありませんよ」
「それもそうか」
「だからダメージ大きいんです」
「近所でもないお兄さんに見られた程度気にするな」
「うぅぅううううう!」
「はっはっは」
「想像してみてもくださいよ。思春期の女の子がエロ本見ているところを……な男の人に見られるんですよ? どんな状況ですか。まずありえませんよ」
「そもそも、こんなところで俺みたいなおじさんと中学生の女の子が話している状況こそがまずありえないんだがな」
「まだおじさんて歳でも無いでしょ」
「公園に落ちているエロ本に夢中になってる子供を見て俺もあんな時代あったかもなぁ、なんて思う程度にはおじさんだぞ、俺。まぁ、なかったけど」
「うぅぅぅぅうう!!」
「はっはっは。どんまいとしかいいようがないな」
「……その、いいわけさせてもらってもいいですか」
「ちゃんとわかってるからしなくても問題ないぞ」
「その顔は絶対にわかってない顔です!」
「わかってるわかってる。エロ本落ちてたらとりあえず見るよな」
「やっぱりわかってないじゃないですか!」
「大丈夫だ、すぐに忘れるさ」
「いーや、お兄さんはきっと忘れたころに蒸し返しますね」
「そん時はそん時だ」
「少しは悪びれたりしたらどうなんですか、もう……」
「で、結局言いたかった言い訳とやらは?」
「……たまたま本が落ちてたから少し気になってみた所をタイミング悪くお兄さんがおとずれたのが悪いんです」
「結構中盤までめくってあったし俺がおくれてきたことも考慮すると結構な時間がタイミング悪くって所みたいだな」
「……一気に中盤までめくれちゃったんです」
「俺がひっそりと後ろから結構な時間、見てたの気づいてないのか?」
「うそっ!?」
「あぁ、これは嘘だ。見つけてすぐに声かけたぞ」
「……お兄さんは意地悪です」
「おじさんは本能に忠実に生きてるからな」
「……お兄さんえっちぃです」
「エロ本に夢中な少女ちゃんには言われたくないな」
「ぐふっ」
勝手に自爆してダメージをくらっている。
見ていてあほ可愛いな。
お年頃の子が性的な事に興味があるのは仕方がない。
強い否定はしないさ。
それにしても、最近はネットで済ませられるご時世だというのに何でこうも昔から変わらず橋の下とか公園の見えないあたりとかの子供に見えちゃうような所に未だに紙媒体のエロ本なんて落ちているんだろうな。
昔お世話になったやつが恩返しでもしてるつもりなのか?
伝統的な物なのか?
謎だな。
「お、お兄さん、僕今日はちょっと用事があったりするカモなのでもう帰りますね」
「ん、忙しいのにわざわざ待たせるような感じになっちゃって悪かったな」
「ぐふっ……。お兄さんそんなに意地悪だと嫌われますよ」
「そんときゃそんときだ」
「むぅ……。じゃあお兄さん、また」
「おーう、気を付けて帰れよ」
逃げるように少女ちゃんは帰っていく。
俺も帰ってもいいんだが今日はまだ面白そうなものが見れそうな気がするしもう少しばかり残るとするか。
10分後、ひそひそ、そわそわと周りをうかがいながら公園へ戻ってくる少女ちゃんを見つけた。
思った以上に速かったな。
にやにやした顔で見ていた俺と目があい、少女ちゃんは顔を真っ赤にし逃げていった。




