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僕とお兄さんのひと夏の思い出  作者: 宙兵&桔梗
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8月14日

 午前10時30分くらいの出来事だ。

 いつも通り、仕事につかれた俺は、帰り道、公園のベンチで座り込んでいた。

 とても暑いこの時間帯だが、ベンチは木陰となっており少しばかり快適である。

 このテンプレが使えるのは久しぶりなような気がするな。


「おはようございます、お兄さん」

「ん、おはようさん」

「体調はもう大丈夫ですか?」

「昨日と変わらず咳が軽く残ってるくらいだ」

「そうですか」


 少女ちゃんが隣に座る。


「お兄さん、暇ですか?」

「暇っちゃあ暇だな」

「そっかー、僕もいつも通り暇だから少しお話ししてよ」

「こんなおじさんと話なんかして楽しいか?」

「まだおじさんって歳でもないでしょ」

「話すったって話題が無いだろ」

「なんでもいいよー。せいじの話とかでもいいよ」

「そんな話俺は出来んぞ」

「ははは、僕もだよ」

「だったら意味ないじゃないか」

「ならさ、お兄さんの恋愛体験についてお話してよ」

「俺の恋愛話? 多分つまらんぞ」

「そんなことはないよ」

「……どんな事が聞きたい?」

「うーとですね、どっちがコクって、その後どんな感じにイチャイチャしたとか、あとどんな気持ちだったのかとか。できれば詳細に!」

「詳細にねぇ……」

「わくわくてかてかして楽しみにしてます!」

「いっつも思うけどなにがテカテカしてんだ?」

「心じゃないですか?」

「心はテカるもんなのか」

「かもです……。まぁ、僕の心がテカってるのは置いといて、お兄さんの恋愛話ですよ恋愛話」


 目がキラキラしてらぁ……。

 好きだよねこの娘の年ごろは。

 

「はぁ……なら俺の元カノの話でいいか?」

「うっ……」

「どうかしたか?」

「あ、いえ、なんでもないです、続けてください」

「そうか。こくったのかこくられたのか正直覚えてないんだけどな、気が付いたら付き合ってた。それが高2の頃の話だったと思う」

「高2の頃ですかー。どんな相手だったんですか」

「俺の主観だが、可愛い系ってより綺麗系でスレンダーな彼女だった。俺と同じ部活の女子の方のキャプテンだった」

「何の部活ですか?」

「剣道部」

「お兄さん剣道やってたんですか!?」

「中学からの六年間程度だけどな」

「それだけやってればすごく強いんじゃないですか?」

「俺は2段まで取ったがその程度だ。県大会行くのが割と精いっぱいだったし」

「県大会いければすごいですよ」

「こっちの県はそうかもな。俺の所はここらほどじゃなかったけど、そんな中で県行くのが精いっぱいだったからお察しレベルさ」

「へぇー、差があるもんなんですね」

「そうだな」

「お兄さんは彼女さんと同じ部活だったんですか……。ならいつも一緒に帰れてたんですよね」

「付き合ってからはそうだな。家の方向も同じような方向だったし」

「いいなぁ……」

「少女ちゃん部活は?」

「入ってません!」

「……そうか。まぁ、高校いったら文化部でも何でもいいから入ってみるといい。できればなるべく活発的なのを選んだ方がいいけど」

「……考えときます」

「んで、話の続きだが、付き合うまでに色々と信頼関係築き上げてたから初々しいってことはほとんどなかった。友人付き合いが長かったせいでキスとかはしばらく変な感じに照れたりしていたが」

「キス……」


 イチャイチャ的な話が欲しいといわれても、これ以上の事はあまり中学生に話せるような内容は無いんだよなあ。

 キス程度で真っ赤になるような少女ちゃんには特に。

 ここまでは流されるようになってこの先もただ流されていただけだし。

 高校生と言ったら盛んな時期だ、流れで行くところまで行っちゃうことなんて数知れずだろう。

 実際いくところまで流されてちまったし。

 あの頃は盛ってたなぁ。

 おじさんも若かった。

 なんて回想を思い浮かべていたら少女ちゃんがジトッとした目でこちらを見ていた。


「お兄さん、鼻の下を伸ばしすぎです」

「伸びてなんかないぞ、何しろ俺はもうおじさんだからな」

「まだそんな歳じゃないでしょ」

「いやいや、そんな歳だよ」

「なら、お兄さん、その若かった頃の話の続きをしてください」

「んー、これ以上はあまり話せることが無いぞ」

「……聞きにくいことを聞くんですが、お兄さんはその彼女さんで大人になったんですか?」

「……あいかわらずむっつりだねぇ」

「むっつりなんかじゃありません!」

「大人になったか、か……」 


 少女ちゃんに話していい内容か正直判断付かないからぼかして伝えよう。


「少女ちゃんのご想像にお任せするよ。ただ俺から言えるのは少女ちゃんが思いつく限りの事はやったかもしれないと言うことだ」

「それは嘘ですよ」

「どうしてそう思う」

「だって恋愛の行き着く先は結婚じゃないですか」

「……少女ちゃんが乙女思考なことを忘れていたよ」


 今この場でぐだーと話していたり、元カノだって話をしているんだからそこは察してくれると思っていたのでが。


「……元カノって言ってましたしもう別れちゃったんですよね?」

「そうだな」

「……行きつくところまで行ったのになんで別れちゃったんですか?」

「進路が違って気軽に会えなくなるから……だったと思う」

「体を許すほどまで愛し合ったのにそんな理由で別れられるんですか」

「そこは歳を重ねればいずれ嫌でも理解できるようになるよ」

「……このままでいたいって思うのはわがままですか?」

「いや、それも選択肢の一つとしては大ありだと俺は思う」

「……ありがとうございます」

「どういたしまして」


 直接的な事はいい合わないが、ぼかしてでも十分に通じたようだ。

 このままでいられたら……か。

 ピュアだねぇ。

 その考えのままでいられたら現代社会じゃちょっと重いかもしれない。

 いやでもそのうち現実を知ることになるだろう。

 ま、おじさんが関わることでもないか。

 存分に世間の荒波にもまれるが好いぞ。

 相談ぐらいは聞くけどね。


「じゃあ、お兄さん、僕はこれで」

「気を付けて帰れよ」

「はい、また明日」

「また明日」

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