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僕とお兄さんのひと夏の思い出  作者: 宙兵&桔梗
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8月7日

 午前10時30分くらいの出来事だ。

 今日も今日とて、後々仕事に行かなくていけない俺は、憂鬱な気分で、公園のベンチに座り込んでいた。

 とても暑いこの時間帯だが、ベンチは木陰となっており少しばかり快適である。


「おはようございます、お兄さん」

「おはよう」


 昨日の失態が嘘のように何事もなかった感じで少女ちゃんが話しかけてきた。

 羞恥を乗り越えられたようで何よりだ。



「お兄さん、暇ですか?」

「暇っちゃあ暇だな」

「そっかー、僕もいつも通り暇だから少しお話ししてよ」

「こんなおじさんと話なんかして楽しいか?」

「まだおじさんって歳でもないでしょ」

「話すったって話題が無いだろ」

「なんでもいいよー。せいじの話とかでもいいよ」

「そんな話俺は出来んぞ」

「ははは、僕もだよ」

「だったら意味ないじゃないか」

「そういえば、お兄さん」

「ん?」

「昨日から始まりましたね」

「五輪か」

「はい。お兄さんは何か見ます?」

「俺は友人に一人体操バカがいるから器械体操だけは見る予定だ。てか予選ももう見たぞ」

「家出る前にニュース見ましたけど、エースの人の鉄棒の落下がニュースになってましたね」

「あれはきつかったな。他にも鞍馬、平行棒とミスが多かっただけに決勝スタートは鞍馬かーなんて事をリアルタイムで思ってたよ」

「よく体操の事はわからないんですけど鞍馬スタートって何かまずいんですか」

「鉄棒の後、最後に床をやらなくちゃいけないから疲れてきついってことじゃないか? 俺もそんなに詳しくは知らんけど」

「へー、そんなもんなんですか」

「体操バカに無駄に教え込まれたから多分普通の人よりは詳しいかもしれんが」

「お兄さん、やる方はどうなんです? 宙返りとかできるんですか?」

「俺にできると思うか? 腰が痛くて出来ねえよ」

「うわぁ」

「腰と足と肺と背筋さえいたくなければできなくはないかもしれないぞ」

「ぼろぼろじゃないですか、おじいさん」

「できればおじさん辺りで止めといてくれや」

「いやいや、そんな歳じゃないでしょ、お兄さん」

「いや、まぁ、どうだろうなぁ。実際の所、専門時代とかは神の領域に存在するトランポリン屋さんに連れて行かれたから宙返りぐらいならできなくもないかもしれん」

「本当ですかお兄さん!? かっこいいです。……神の領域って何ですか?」

「神の領域は神の領域だ、気にすんな。何にもないところで挑戦したことは無いからやれって言われてもやりたくないぞ」

「それでも見てみたいです」

「……今度トランポリン連れて行ってやろうか?」

「行きたいです!」

「即答か。ならいつがいい?」

「確か明後日は遊園地にデートに連れていってくれるんでしたよね」

「デートか。まぁ、そういう言い方もあるな」

「ならそれより後がいいですかね」

「俺の都合的には12日辺りがありがたい」

「たぶん大丈夫です」

「おーけー」

「あ、僕運動神経酷いのでそんなに動けないですけどいいですか?」

「大丈夫だ、俺も歳でそんなに動けないから。とりあえず1時間でいいか?」

「一時間トランポリンを借りれるんですか?」

「ああ。一時間場所を借りれて飛び放題だ。二人だからすぐばてちまうと思うが」

「僕、ぽよんぽよんと跳ねるだけしかできませんよ」

「楽しめりゃ何でもいいよ」

「了解です」

「ジャージくらいは持ってきなよ」

「ジャージ……。学校の指定のやつじゃダサいですかね?」

「俺は気にしない」

「いや、やっぱり僕が気にします。プー○ャーにします」

「良いジャージ持ってるな。何色」

「ピンクです」

「ピンクのプー○ャーか。少女ちゃんにしては珍しな。ピンクのジャージ、俺は可愛いと思うけど俺の友人は皆嫌ってんだよなぁ」

「いえ、僕も正直嫌だったのですが親がこれがいいとか言いまして」

「まじか、少女ちゃんも嫌なのか。ピンクのジャージ、マネージャーっぽい女の子とかが使ってるの見て、あざと可愛いなぁとか思ってたんだが」

「あざと……。ピンクのジャージ使ってるとチャラいって言いますか、びっちっぽくないですか? そのびっちみたいなのが可愛いとかやっぱお兄さんもあっち系ですね」

「あっち系ってどっち系だよ」

「あっち系はあっち系です」

「……まぁ、なんにしろ少女ちゃんのピンク姿楽しみにしとくかな」

「そういわれるといやですね」

「すまんな」

「お兄さんが謝ることじゃないですけど」

「そうか」

「そうです。結局12日でいいですか?」

「おう」

「どこに何時に集合にします?」

「あー、店のやってる時間の都合もあるからまた今度話すわ。ちなみに少女ちゃんは何時でも大丈夫か?」

「はい。頑張って体調合わせます」

「合わせるのか」

「頑張ります」

「……よくわからんが無理はするなよ」

「もちろんです。ところでお兄さんはどんなジャージにするんですか?」

「俺は灰色のプー○ャーと運動用のTシャツ。向こうに一応着替えるところあるから持ってく」

「なら僕もそうします」

「昔ラウ○ドワン行ったとき、ジャージどうするかって話をしていたんだが、俺ら的には持っていくかどうかって話だったのに、それを勘違いしてジャージで電車乗って現地まできたやつがいてな。皆で爆笑しちまったがそいつにてめぇがジャージで行くとか言ったんだろとか逆切れされた覚えがある。ま、少女ちゃんの年齢ならジャージで電車とか乗っても問題ないからいいんだけど」

「爆笑はひどいと思います」

「あれは笑うなって方が無理があった」

「……僕もお兄さんにはめられない様に気を付けます」

「いやいや、そいつの時も俺別にはめてないから」

「お兄さんは意地悪なのではめた可能性の方が高いです。それか素ではめたんだと思います」

「素でって……。それはどうしようもなくないか?」

「気を付ければ何とかなるもんです」

「善処する」

「善処するとか言ってる辺り確信犯な感じがぷんぷんと」

「そいつは気のせいだ」

「まぁ、いいですよ。トランポリンも楽しみにしておきます。そろそろ時間なので行きますね」

「ん、気を付けて帰れよ」

「はい、お兄さん、また明日です」

「また明日」












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