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僕とお兄さんのひと夏の思い出  作者: 宙兵&桔梗
10/35

8月4日

 午前10時30分くらいの出来事だ。

 後々仕事に行かなくていけない俺は、少しばかり憂鬱な気分で、公園のベンチに座り込んでいた。

 とても暑いこの時間帯だが、ベンチは木陰となっており少しばかり快適である。

 のんびりしていたら少女ちゃんがひょこひょこと歩いてきた。


「よお」

「珍しいですね、お兄さんから挨拶してくれるの」

「挨拶は社会人の基本だぞ」

「いつも僕はしっかりしてますよ。まだ社会人ではないですけど」

「それもそうか。まぁ、そんなことはいいや。少女ちゃんは明後日一日暇か?」

「一日ですか……。多分大丈夫ですけどなんかあるんですか?」

「昨日あの後ふと打ちたくなって打ちに行ったらまさかという何と言うか、話してた通りに十万勝っちまってな」

「は?」

「だから話してた通り遊園地連れて行ってやるって話だ」

「すみません、ちょっと話についていくのに時間かかるっぽいです」

「そんな難しい話はしてないぞ」

「え、え、本当に十万円遊んで手に入れたんですか?」

「だからそういってるだろ」

「それで、昨日話していた通りバイクで遊園地までらんでぶーですか?」

「まぁ、間違っちゃいない」

「え、ほんとにいいんですか? 僕やったーって喜びますよ?」

「別にいんじゃないか」

「お兄さん、素敵です!」

「おう、もっと褒めてくれてもいいぞ」

「お兄さん、かっこいいです!」

「ははは」

「大好きです!」

「それはもっと大事に人にとっときなさい」

「ぶーぶー」

「で日にちはどうする? 明後日は暇かって聞いたけどよく考えたら明後日は土曜で混みそうだから平日の方がいいよな。9日とかはどうだ?」

「9日ですか。多分大丈夫です。無理してでも頑張ります」

「いや、無理はしちゃダメだろ」

「言葉のあやです」

「行きはバイクだから楽しみすぎて眠れなかったとか気を付けろよ」

「行きはって帰りは違うんですか?」

「少女ちゃんの体力次第」

「どういうことですか?」

「バイクは後から取りに来るようにしてバスで寝ながら帰るってのも一つの考えとしてある」

「それはありがたいんですけど最初からバスで行った方がいいんじゃないですか?」

「バイク乗ってみたいんだろ?」

「……できればですけど」

「俺も久しぶりにツーリング行きたいから」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」

「おう」

「じゃあ、お兄さん、他に持っていった方がいいものとかはありますか?」

「水着とかか?」

「……お兄さん的にはきつい乗り物よりプールでゆったりしてる方がいいですもんね」

「んー、間違っちゃないかもだけど今回は少女ちゃんに合わせるぞ」

「とりあえず持ってはいきますけど僕的には遊園地メインで行きたいです」

「オーケー、オーケー、俺も一応持っていくわ」


 ……たるんだ腹とか見苦しいから少し筋トレ強化するか。


「最悪足りないものがあったら買ってやるから特に持ってく物は無いかな」

「なんか金銭面で全部おごってもらうってのは……」

「ガキは甘えられるときは甘えとけ」

「……ありがとうございます」

「まぁ、9日についてはまだ時間はあるし、おいおい必要なものがあったら伝えるわ」

「楽しみです」

「あ、少女ちゃん、交通系電子マネー持ってる?」

「なんでお兄さん、遠回しな言い方してるんですか?」

「うん、まぁ、大人の事情だ」

「そうなんですか。僕は一応黄色い丸がかいてあるカード持ってます」

「俺とおそろいだな。最悪俺は青いカードも持ってるから貸せるし問題ないな」

「へー、お兄さん青い方も持ってるんですか」

「おう、昔定期買う時にいろいろあってな」

「お兄さん、本当に24歳?」

「……深く突っ込まないでくれ」

「了解です」

「俺からはそんなところだな」

「あ」

「ん? どうかしたか?」

「いつものやつやってないなって思いまして」

「……別に毎回やる必要はなくね?」

「いえ、お約束ていうのは大事なのです。割とあのやり取り気に行ってるしこういう一回の気のゆるみからこの先やらないようになるかもしれないんですよ、それは嫌じゃないですか」

「そんなに気に入ってんのかよ」

「はい」

「まぁ、今日はいいだろ」

「話聞いてましたか!?」

「聞いてた聞いてた」

「……鳥頭のお兄さんって呼びますよ。あとねちねち言い続けますよ」

「……はぁ。こんなことでねちねち言い続けられるなんて少女ちゃんは暇なのか?」

「!? あ、えっと」

「俺はいつも通り暇だな」

「はい、僕も暇で――」

「こんなおじさんと話なんかして楽しいか」

「まだおじさんってと――」

「そんな話俺は出来んぞ」

「ぼ、ぼく――」

「だったら意味ないじゃないか」

「キャッッッッッチボ―――――――ル!」

「突然どうした」

「ちゃんと言葉のキャッチボールをしてください。僕がやりたかったこととだいぶ違います! あとなんかいつもと流れが少し違います!」

「はっはっは」

「……むぅ、」

「「お兄さんは意地悪です」!?」


 少女ちゃんのセリフにかぶせるようにした。

 見事に一致したな。

 少女ちゃんはわかりやすいなぁ。


「なんか色々と失礼ですー!!」

「まぁまぁ」


 一通り笑った後にむくれてる少女ちゃんの頭を撫で、機嫌を取る。

 少女ちゃんは少しだけ赤くなりどう返していいか迷っているみたいだ。

 俺が考えるに、多分、次にいうセリフは……。


「……「セクハラです」」

 

 かな。


「……くっ」


 そろそろ本格的にからかいすぎた気もするから自重しよう。


「悪かった悪かった」

「……今回だけですよ」


 そろそろ時間か。


「じゃあ、お兄さん、また明日」

「気を付けて帰れよ」


 若干不機嫌そうだけどそれでもまた明日とか言うあたり可愛いなほんと。

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