表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/71

モンゴル

 モンゴルの砂漠にある村に母娘は降り立った。それを見た娘がオサに慌てて報告した。

「再びこの地に天女が降り立ったのか」

年老いたオサがそう言った。ここは、最初にムシビトの乗った『レムリア』が着いた土地、この村を襲った奇怪昆虫人を倒し、異界にその安住の地を決めるまで、ムシビトたちはしばらくここで暮らした事があった。そのときのマンジュリカーナはあまりにも幼く母の「リカーナ」に聞かされたこの頃の記憶はほとんどなかった。


「おお、リカーナ様。それに姫様か」

オサはどうやらマンジュリカーナと母のリカーナを間違えている様子だった。

「私はリカーナの娘、マンジュリカーナ。これは娘のマンジュですわ」

間違いに気付いたオサは話題を変えた、この先の村に魔物が住み着き、高僧が次々と食われるというのだ。法力も役に立たず、遠方からも次々と高僧が現れるのだが、全く寄せ付けないと言う。その話しを聞き、母娘はそこへ向かった。呪力の大半を使い『次元の谷』を作ったマンジュリカーナはほとんどマナの力がなかった。ここへ再び戻ったのは、マナの力を呼び戻すためだった。奇怪昆虫人との戦いのあと、母である『リカーナ』がオサに預けた七色の宝玉を受け取るのが目的だった。


「確かに、お返ししましたよ。さあ早く立ち去りなさい。この村には私がいる、ご心配ご無用。魔物はきっと退治してみせる」

そう言ったのは、宝玉を納めた小さな箱を運んできた巫女「ラナ」だ。彼女は今夜村を発つと言った。


「まったく余計な事を、戦えもしないだろうに……」

「あら、そうでもないわ。ねえ、マンジュ」

「母様、怖い。黒い大きな雲がいっぱい飛んでくる」

「そんなものいないわ、この娘なに言ってるの?」

半ば馬鹿にした目付きでラナはそう言った。


「マンジュは予知力から目覚めているのね、どっちから?」

「向こう……」

娘の指の先には青空がただ広がっているばかりだった。


「あそこが村のオアシス、少し前までは旅人達でにぎわっていたのにね。誰一人いやしないわ」

ラナはそう言うと眼下のオアシスに向かって丘を降りていった。オアシスに近づくうちに三人は、人の姿を見かけた、それは美しい娘だった。

「メレナだわ、変ね。気配を隠している」

娘は小さな壺をオアシスの側に置くと数歩下がり長いやりを低く構えた。服は砂の色に変化し、そこに人が伏しているとは思えなかった。そのうちマンジュの指した方向から黒い雲が流れてきた。

「しっ」

それを見て、声を上げようとするラナの口をマンジュリカーナがそっと塞いだ。


黒い雲は「マンタ」の集団だ、オアシスの上を回っている。十ほどは集まった。どうやらその壺に惹かれてきたのだ。その一頭が地上に降りた、マンタは砂煙の中で人型に変わる。赤い目と頬の部分に縦条にエラ穴のある不気味な姿。その姿が陽の光に、ぬめっと光った。


「母様、あれは何でしょう?」

「魚人です、マンタ族です。何故地上に現れたのかしら?」

上空を舞っていたマンタたちは、それに続けと次々と降下をはじめた。そして最後にひと回り大きなマンタが地上に降り立った。『デラ・マンタ』とマンタたちがいっせいに呼んだ。その声を制し、デラ・マンタと呼ばれた魚人は壺に近づいた。そしてそれを口に運んだ、しかしすぐにそれを吐き出し、腹立ち紛れに壺を地面にたたき落とした。


挿絵(By みてみん)


壺が地面に落ち砕ける前に、魚人は地面から延びた長いやりに腹を突き抜かれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ