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黒幕

 「ハハハハッ、見事な舞いだ。褒めてやろう」

その声の主は黒人魚ではなかった。

「カルナ? その姿は、なんということ」

ダルナが声の主を見て声を上げた。カルナが黒人魚を寄り代にして甦ったのか、しかしその女はカルナではなかった。ゆっくりとその女はダルナを見すえた。

「カルナに残っていた、クシナの力程度では我の復活はできない。我の封印を解くには、伝承の巫女ルシナの力を受け継いだダルナ。そしてラミナの娘ラナ、おまえたち二人の生け贄が必要なのさ」


黒人魚はひからびたまっ赤な腕をぺろりと舌で舐めた。見る間にそれは七束の剣に変わった。

「シラトから奪ったカムイの嵐はとうに術を使い果たしていた。再び術を使うには、たっぷりと人魚の生き血を吸わねばならない。はじめから七宝玉なんて必要なかったのさ、七人魚を潰して行けば、ここに最強の人魚が集まるだろうとあいつが言ったのさ」

それを聞いてメイフが笑った。

「メイフも馬鹿な奴だ、ナツメの石には再誕の力などなかったのに、そう信じ込んでいたからな。それはマンジュリカーナとアロマリカーナがそう仕向けたのだがな」

「なぜそんな事を?」


「俺を封印したオロチの牙、それがナツメの石だったのさ。それを神聖なものとして誰にも触らせない様に遠ざけておくためさ。だがあの男はカルナを再誕できると思い込み、俺の封印を解いてくれた、そして黒人魚までも甦らせてくれた。だがさすがはマオが認めたカイリュウ、なかなかわしの思い通りにならず、苦労したぞ。おっと次のいけにえが、のこのこと、ここにやってきたか? はははっ、いい心がけだ」

シラトとキリトが洞窟に駆け込んできた。


「メイフ、お前マオ様をどうした?」

シラトが剣を抜いた。

「お前がカムイに行った後、さっさと片付けておいたのさ、面倒だからな」

キリトは黒人魚に近づき剣を突きつけた。

「なぜ、こんな危険なところまで来たのキリト?」

「なぜ? その訳を俺に言わせる気か……」

「お話は後にしましょうよ、ラナ」

ダルナの剣が黒人魚に打ち込まれた。その瞬間パクリと開いた肩口から緑の血しぶきが飛んだのは、黒人魚ではなくダルナの方だった。


「あれは、まさか」

ラナは振り返ると、里香に言った。

「転送の術、スザナの術だわ」

「カルナを取り込んだ今、人魚の術は自在に使える。私への攻撃は無駄だと知りなさい」

ダルナは肩を押さえたまま、その場にうずくまった。赤く輝く剣がブスリとダルナの心臓を突き抜けた。一瞬痙攣したダルナは、キリトに抱きとめられた。長い間夢見ていた腕に抱かれたままダルナは息絶えると紫の宝玉を残した。そしてその宝玉は里香のテントウにたちまち吸い込まれていった。

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