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アガルタ(1)

 時は遡る…


 地殻とマグマを包む海底の熱い岩盤、その最深部には一夜で沈んだ伝説の大陸が数多くある。長い年月のうちにマリンスノーも滞積し岩となり、無数の『チモニー』と呼ばれるマグマの熱を放出する「熱処理用の煙突」状の柱が立っている。その海底に『アガルタ』という太古から続く王国があった。


「キリト、もう良かろう。わしも疲れた」

巨大なシロナガスクジラは、異界の『マンジュリカーナ』の映像を止めた。

「マオ様、あれがレムリアのムシビトの巫女か、すさまじいのう。それに何と美しい」

彼が見た『虹の戦士』はやがて巫女の姿に戻った。自ら最愛の夫『カブト』を倒した深い悲しみ、それは彼女の美しい顔からはみじんも想像する事は出来なかった。


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。『マンジュリカーナ』はやがて次元を越えて人間界にやってくる、そしてこのアガルタにも。その運命は変えられぬものだ」

「何故わかる、マオ?」

「わしが、呼び寄せるからじゃよ、キリト」

「マオが? 何故じゃ」

「もうわしにはあいつらを止める力が残っていないのだ」

「兄、メイフのことか」

「そうだ、メイフは全てのシャングリラから生気を集め、一斉にシャングリラを開き、地上を溶岩で埋め尽くすつもりだ」


 地表の陸地など海溝に全て飲み込める、もしそうなれば再びこの地球は水の惑星となり『魚人』と『カイリュウ』(人魚はカイリュウの女を指す人間の呼び方)の星となるのだ。

「わしは、ヨミ様によって海底に沈められた多くの大陸を知っておる、しかしそれは行き過ぎた文明とこの地球を滅ぼすほどの闇を手に入れてしまった大陸だ。今の人間は地球を滅ぼすほどの闇とともに、それを越える光を持っている。その光がマナ、マンジュリカーナはその力に溢れておるのだ。メイフらは人間がやがて深海に進出して我々を追い詰めると思っている。いや怖れておる、だから先手を打つつもりだ」

「地上の生気をどこに集めるというのだ」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、わしのこの腹の中だとさ」

「ハハハッ、まさか」


「わしの身体はアガルタそのものだからな」

確かに四十メートルはあるその身体は巨大ではあるが、キリトにはそんなものでアガルタの広さに足りるとは思えなかった。

「わしがこなごなになれば全てのアガルタは崩壊する、何億年もの間にわしの身体からは無数のチモニーが海底に張り巡されておる。海底からは無論、全てのシャングリラからもマグマが噴出される、しかも無尽蔵にな。押しつぶされ焼き尽くされた地上の陸地を数万メートルもある海溝が飲み込み、数千度のマグマで海水は蒸発し、たちまち海面は一気に下がるだろう、そして地上は高温の水蒸気に満たされる。その中で生き延びる生命はいない。そしてマグマの噴出が止み、その次には止む事もない雨が降る……」

「それはまさに、原始の地球ではないか……」


 洞窟の隅で影が動いた。カイリュウ族の長兄メイフだ。

「フッフッフ、違うのは既に海中には『カイリュウ』が存在しているという事さ、キリト」

「メイフ、いつのまに」

「マオ様のご高説の途中からさ、さあ縛り上げろ!」

大勢の魚人がマオをいっせいに取り囲んだ。

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