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第三章 ダルナへの挑戦

 そんないきさつがあった事を洞窟の影の二人は知らなかった。さて、ダルナに追い詰められたルシナは自分の胸を剣で突き、洞窟の中で倒れる。それを見てダルナはこう言った。


「なんて馬鹿な事を、ルシナ。エスメラーダは私たちを裏切り、アガルタを見捨てたのよ」

それに応えないルシナにダルナは、さらに言葉を継いだ。

「裏切り者のラミナのために死ぬなんて馬鹿げているわ、一体キリト様はどこに?」


ラナにはもう限界だった、キリトの事を知っているはずの人魚、ルシナが目の前で倒れるのを見ると彼女はついにダルナの前に進み出た。

「見たでしょう、ルシナが命がけでキリトの居場所を教えようとしないのを。さあ、今度は私が相手よ!」


「ふん、誰かと思えば丁度いい、オロスの巫女も一緒にここで片付けてあげるわ」

そう言いながら、ダルナはラナにムチを振った。ラナは高く飛び上がり、プラチナ・チェーンをダルナの手首に絡めた。

「オローシャ・ピリリカ!」

「ぎゃっ!」

雷針の呪文でダルナの手に雷が落ち、彼女はたまらずムチを落とした。

「やったわね、その首、切り落としてやるわ」

十束の剣が音も無く抜かれた。

「オローシャ・カムイリカ!」

今度はお返しと、ダルナは氷結の呪文を唱えた、剣の先から氷のヤリが次々に放たれる。ラナは降り注ぐ氷のヤリを間一髪で後方宙返りをして避けた。しかしそれを見越していたダルナは三段跳びで先回りをし、着地したラナの足首を狙い、十束の剣でなぎ払おうとした。

「ラナ、危ないっ!」

里香は思わず声を上げ立ち上がった。

「カン」

心配は無用だった、ラナのオーロラの剣がダルナの十束の剣を封じた。ダルナは忌々しそうに言った。

「防御の神器『オーロラの剣』がオロスの巫女に使えるなんてね、満足にオーロラも出せないくせに」

ダルナはラナの顔つきがオーロラの剣を抜いた時、ほんの一瞬変わったように思った。

(そんな、気のせいだわ……)

ダルナにはラナが一瞬オーロラを自在に操る人魚に見えてしまった。


「今度はあの人魚を守れるかしら?」

ダルナは標的をルシナに向けた。

「オローシャ・カムイリカ!」

再び氷結呪文が唱えられ、ルシナに鋭い氷のヤリが降り注いだ。ラナはルシナの前に駆け寄ると彼女に背を向け、それを次々となぎ払った。ダルナはそれを見て笑った。

「そう来ると思ったわ、そらっ、そらっ」

無数の氷のヤリが放たれ、ルシナとラナの回りになぎ払われたヤリが積み上がった。その氷の束を二人の周囲に積み上げさせるのがダルナの作戦だった。


「オローシャ・カクラーナ!」

その上から猛烈な吹雪が覆った。たちまち二人は凍りついてしまった。

「あっはっは、これで氷を叩き割ればルシナ共々こなごなね。その後でオーロラの剣は私がいただくわ」

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