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伝承の巫女

 巨大な白いセイウチから、エスメラーダの無事を聞いたアザラシは、それをイルカに伝えた。ベルーガからようやくルシナがそれを聞いたのは、行方がわからなくなったダルナの代わりに南太平洋にいたときだった。

「よかった、エスメラーダは無事でいらっしゃる。それに、キリト様は転生させられていたのね。じゃああのホッキョククジラは一体何者なの? シラト様がいらっしゃればどんなにか心強いのに……」


 キリトがメイフの仲間ではなかった事が、ルシナには嬉しかった。キリトはかつてルシナの夫だった。それは彼女が再誕を経験する前の事だ。十四人の人魚からリュウグウは妻を選ぶ。およそ二、三十年の連れ添いでさえも再誕の時には前世の記憶は全て失う。それはキリトたちリュウグウも同じだ。ただルシナはそれを失いたくなかった、彼女だけが繰り返す再誕の中でもそれを決して忘れようとしなかった。ルシナは伝承の巫女としてキリトの妻であった事を想い出として、その胸にずっとしまっていたのだ。


「あれは何かしら?」

 彼女の前をかすめた小型のイルカは、その黒白模様がオルカとは違っている。もっとも小型の色分けイルカ、別名パンダイルカだった。

「こんなところまで、一体何事かしら?」

 人魚を見て近づいてきたそのイルカはアガルタの長兄王子『シラト』と名乗った。

「カムイを襲った『ヤマタノオロチ』相手に『カムイ・ミコト』とともに戦い、ようやくアガルタに戻ってみれば、なにもかも変わっていた」

 ルシナは黙ったままシラトの話しを聞いていた。そして自分の記録の引き出しを開けた。

「カムイに何かあったのですか?」

「そうか、ルシナはカムイの事も記録しているのだったな、実は……」


 シラトは、「カムイ・ヤマタ」の戦いについてルシナにこう話した。


 ー『ミコト』は大陸の東南部、天空のシャングリラの真下にある『カムイ』の王だ。

「あれはまっ赤なオーロラ、なんと不吉な予兆だ」

 北極のオーロラがこんな南のカムイで、見えたことは聞いた事がない。彼は胸騒ぎがしてならなかった。そこにマオの伝言が届いた。

「時空のシャングリラが悪魔のナツメの石に狙われた、それは封じ込めたがそちらにも異変があるかも知れぬ。気をつけるのだ、ミコト」

 マオが予見した通りの事がカムイに起こった。天空にシャングリラを持つカムイは、隣国のヤマタから敵が押し寄せていた。彼らは顔に様々な入れ墨を入れた半農半漁のヒトだ。あのオーロラの日、どこからか現れた『オロチ』と名乗る巫女を先頭にして、東から突如海を渡ってきた。オロチは強力な呪術を自在にあやつりカムイを追い詰めた。そんな中、カムイの首長『ミコト』からアガルタへの救援の要請があったー

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