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アマゾン最強の魚

「な、なんだ? 一体何が起こったのだ」

サメが狂ったように速度を上げ始めた。何かを振り切ろうと懸命だ。しかし四方から何者かに襲われ背びれが水中に沈んでいく。たちまちサメの数が減った。人型になり陸に上がった魚人は数人だけになった。

「何が起こったのだ。おい!」

彼に近づいた魚人も、次々と倒れた。

「何だこいつは?」

魚人の身体の口やら耳から、そして腹を食い破って無数の小さなナマズが這い出してきた。魚人はこのナマズにやられたのだった。それは身体をくねらせてアマゾン川に戻っていった。


挿絵(By みてみん)


「それは、彼が呼びかけた、この川に生息するカンディル。アマゾンで最強の魚。生き物の腐肉を食べるナマズ」

里香がそう代弁した。右手でスティックをするりと抜いた。

「死体を食うヤツらがどうして?」

「彼らがエサを探すのは、アンモニア臭なのよ。あなた達にはそれが体中に蓄えられている、浸透圧の調整のためにたっぷりとね、逃げ切れる訳がないじゃない」

「おのれ、川魚ごときに」


「カンブリア大爆発でこの星に溢れた膨大な生命、それぞれ淘汰され現在(いま)に生き残ったものたちは、何かに優れているのよ。もちろんあなた達サメも古い種族である事は知っている。だけど不都合な生き物を絶滅させる事はアガルタやメイフが決める事ではない。そんなことを決められるものは、この宇宙のどこにも存在しない。さあ、マナの力であなたを炭化してあげましょう」

「ふふん、そんな棒っ切れで俺の相手をしようというのか」

「おのぞみとあらば、レム・アガルタ!」


 しかし里香の出した火柱は氷の柱となり砕け散った。同時にイラーレスの氷結の呪文が唱えられたのだ。イラーレスが邪魔になるのを見たラナは、プラチナチェーンを放った。両腕を縛られたイラーレスは簡単にくさりを引きちぎるとラナに言った。

「あら、もう痛みは消えたの? さすがはモンゴルにまで修行に行った巫女ねぇ」

「余計な事までよく知っているわね、そんなにオロスの巫女になりたかったの?」


ラナは腰の『両刃の剣』を初めて抜いた。冷たい闘気の溢れる剣。イラーレスはそれを見て短く笑った。

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