黄色の宝玉
「マンジュ、これが私たちに伝わるマナの力です。そのほとんどは人間界に来るのに使ってしまったけれど。私の母、リカーナと私たちは、長い放浪の果て、やっとこの星に着いたのです。この村に着き、すぐに大きな戦いがありました。私たちを追って奇怪昆虫人がやってきたのです。戦いには勝利しましたが、多大な損害をこの星に与えた私たちは再び放浪する運命でした。その時、この村のオサに私たちはシャングリラの一つ『次元の谷』の存在を教えていただいたのです。そのお礼として最初の虹色テントウを預け、この村を守り続けていたのです。七つの玉が全て消えていたのはやはり大いなる敵が現れたのですね、あのデラ・マンタの様な」
「でも、母様が皆やっつけられるのでしょう?」
マンジュは母の女王の姿を目の当たりにし、すこし興奮気味に言った。
「いいえ、もうその時間は終わろうとしています。いいですか、マンジュ。人間界では私たちはおよそ五倍速く歳をとります。このままではあなたは十年で既におばあちゃんになります。二つの次元を同調させる必要があります。そのために私は全てのマナを使い切ります。全ての宝玉を揃えればあなたはきっと虹の戦士となれるでしょう。それまでは辛い困難に耐えなさい。大丈夫、既にマンジュリカーナとして、予知力は目覚めているでしょう。それをマンジュリカの玉に込めればレムリアに残したあなたの姉『トレニア』がきっと助けてくれます。そう、今日より幼名を取りましょう。母リカーナからいただき里香と名乗りなさい。里香、愛しい娘……」
側で聞いていたメレナが、マンジュリカーナに近づき、魚人から取り返したペンダントを渡した。
「マンジュリカーナ様の事はアガルタのマオ様から聞き及んでおります。七つの宝玉は私たちが持ち出したのです。さっきのマンタはメイフの手先となった魚人達です。メイフはマナの力を奪い、この地球を再び水で満たされた星にしようとしています。それを阻止するため、この宝玉を持ち出したのです」
そう言うとメレナはペンダントの中の黄色い聖水を飲み干した。まばゆい光の中、彼女はモンゴルのシャングリラを守る人魚に変わった。
「メレナ、あなた……」
「今まで黙っていてごめんなさい。これが私の本当の姿なの、あなたにはこの姿でを見せたくはなかった」
地上で人魚は数分と生きていられない、人魚の身体に少しづつ異変が起こり始めた。
「この聖水には私たち人魚が持ち出した宝玉が解けているのです。魚人はそれを私たちから搾り取りメイフに差し出していたのです。宝玉は、簡単には取り出す事はできないのです。それを元に戻すにはマンジュリカーナのブローチに収めるほかにないのです…。この話しは全てメイフにも届いているでしょう。さあ次のシャングリラに向かってください」
その話しを聞いて、ラナが叫んだ。
「メレナ、たとえあなたが人魚だったとしてもあなただけは信じている」
「ありがとう、ラナ。いつかあなたの誤解はきっと解ける。次のシャングリラにきっとキリトの手がかりがあるわ、わたしの言う事を信じて欲しい……」
メレナが溶解し、消滅した後、ひとつの黄色い宝玉だけが残った。