プロローグ
あの「レムリア王国」からなっぴが戻ってきてすでに数年が経った。
「母さん、マンジュリカーナは本当に哀しい想い出を忘れるために次元を越えたの?」
ある日の朝、思い出したようになっぴが『マンジュリカーナ』の事を口にした。
「なっぴはどう思う?」
「私は、別の理由があったんじゃないかって」
香奈は洗い物を終えると、笑ってなっぴをせかした。
「なっぴ、バスに遅れるわよ。今日から中学生だからランドセルは置いていきなさいね」
「あっ、いっけない。母さん代わりのカバンとってよ」
赤いランドセルをそっと台所の椅子に置き、彼女はバス停に向かった。
「まもなく青葉台行き発車しまーす」
「もうっ、タイスケの馬鹿!」
そういってなっぴはタイスケの隣に座ると口にくわえていたパンを飲み込んだ。
なっぴはレムリアの事を忘れた事は無い、いつか王国を再び訪れる。その時まで彼女はもっともっと成長しようと心に決めていた。おかげでこの春、難関の進学校に入学したのだ。タイスケが同じ学校なのは正直嬉しかったが、その方面の『覚醒』ではなさそうだった。
「あーあ、里香おばあちゃんが生きているうちに話したかったな」
その思いが届いたのか、彼女は不思議な夢を見ることになる。
なっぴに『ダウンロード』されて行くのは、里香の記憶に違いないが、彼女にはそれがまるで自分が体験しているように感じた。
これはなっぴの祖母「里香」が「マンジュリカーナ」とともに人間界に現れた時の話である……
できれば一作目を読み終えていただいた方がよろしいかと思います。