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午前4時

午前4時




検問に引っかかり順番待ちをしていた。

前の車は二台。後続車もべったり後ろに付いてしまい、ただ身を任せるしかなかった。




七時間前


義父にソファに座るように言われた悟は恐る恐る近づいた。

義父は、ずっと閉ざしていた硬い口を開いた。

「悟くん、今日なんで私が来たのかわかるかね?」

「わかりません。しばらくご無沙汰していたからでしょうか。」

悟が喋り終えたかどうかの所で、美由紀が両手で顔を隠して泣き崩れた。

咲が煽る。「とぼけんのやめて全部話せば?もう皆知ってるから」


なんのことだろうか。


悟はこの状況がたまらなく嫌だった。

色々なことが走馬灯のように脳内をよぎる。

自己弁護が得意な悟は、まず先に反論を考える。

ただ、どれの事を言っているのか。


一度だけ、酒の勢いを借りて義母である咲と関係を持ったことがある。

そのことなのか?

でも誘って来たのは向こうだ。

しかも、彼女が皆に打ち明けるメリットはないだろうし、万が一そうだとしてもこんなに強気でこの場にいれるはずがない

いや、ハメられたのか?

いや、違う。ハメてどうする。

じゃあなんだ。なんだろう。

そうだ、様子を伺おう。


キョトンとした顔で皆の顔を見ていた。


義父は言った。

「本来ならば、警察を呼ぶべきだと思う。」

悟は気づいた。あぁ、そっちかと思った。

「車の中‥‥見たんですか。」

リビングの空気は重く沈黙が続いた。

義父は優しくも震えた手で悟の肩に手を置いた。「お願いだ。自首してくれないか。」

悟は、無表情だった。


「一つ聞いてもいいかな?」

義父は涙をこらえていた。


「美由紀から電話があって‥‥車の中に誰かの手が乗っている。怖いから助けてというから飛んできた。私がトランクを開けたら、悟くんの血の付いたネクタイと見覚えのある手首があった‥‥。あれは‥‥あの甲に傷がある手は‥‥」


こほっごほっ


義父は胸を抑えて倒れた。

咲が、救急車を呼ぼうとした。

悟の中で何かが崩れた。


「救急車なんて呼ぶんじゃねぇよ。警察が来るだろうが。」

悟は咳込む義父の髪を掴み顔を持ち上げた。

テーブルに置いてあったアイスピックで義父の肩を突き刺した。

義父の咳は激しくなって過呼吸のようになっていた。

そして悟は、義父の耳元で囁いた。

「お義父さん、大正解。あの手首は佳奈ちゃんでした〜♪」

義父はそのまま血を吐いて呼吸をしなくなった。


数m先で離れて見ていた咲が、アイスピックを奪おうと飛びかかってきた。

反射的に振り払おうとした時にアイスピックが咲の右目に深々と刺さった。

アイスピックを引き抜くと咲はそのまま床に倒れた。

それでも立ち上がろうとする咲の腹に蹴りを入れたらうずくまり、動かなくなった。




コンコン


制服を着た警察が車の窓ガラスを叩く。

窓を降ろしながら、無意識に爪を噛んでいた。爪からは血が出ていた。

この検問は長くなる気がした。

時計を見たら午前4時を過ぎていた。




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