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妖操師!!!  作者: 甲崎雄人
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第二章 たとえ、火の中、水の中・・・・・・って熱ッ!

第二章

たとえ、火の中、水の中・・・・・・って熱ッ!


「見た?見た? 今日の演習。すごい術使ったんだけど」

「う〜ん、昨日、夜更かししちゃったんだよね。だから、自分ので精一杯だったんだ」

「ナ、何ィ!?」


学園からの帰り道、オレは幼馴染の小雪と歩いていた。

小雪とは家も近い。

だから、必然的に同じ帰り道となる。

そこで、オレはこの前の土蜘蛛の戦いで身につけた術を今日の演習で披露したのだが、肝心の小雪が見ていなかったらしい。


「オイオイ、おまえがA級妖術をマスターしてこいって言ったんだろ」

「雷毅が自分で宣言したんでしょ。それにその術って本当にA級妖術なの?」

そうだった。

すごい術が使えたから自分で勝手にA級妖術だと思い込んでいたが、あの術のランクどころか、名前すらわかってないんだった。

「どうなの?」

「たぶん、A級妖術・・・・・・かな?」

「何? その微妙な間は。わからないんでしょ」

ハイ、そうです。わかりません。

「もう、しょうがないな。じゃあ、術名は? あたしが調べてきてあげるから」

「それが名前もわからないんだよな〜」

「エッ? じゃ、どうやって使えるようになったの?」

「戦っているうちに出来た」

「それだったら調べようが無いじゃない!」

そんな、怒られても・・・・・・しょうがねぇじゃん。

「じゃあ、一回見てみ・・・・・・」

きゃああああ

突然悲鳴が上がった。

「な、何?」

「あっちの方だ。いくぞ!」

オレたちは悲鳴があがったところに向かって走りだした。



当然のことだが、オレたちの住むこの村にも妖操師じゃない人もいる。

じゃなきゃ、オレたちは妖操師になったら食っていけない。

悲鳴の主もその一人だった。

若い女の人だ。そばに買い物かごが転がっていて、中の野菜が出てしまっている。

「どうしたんですか?」

小雪が尋ねる。

「た、た、助けてください! む、む、息子が、息子が大きいネズミの化け物に連れていかれたんです!!」

どうやら息子さんが妖怪に連れて行かれたらしい。

「ど、どうしよう、雷毅?」

「チィ、面倒なことになっちまった」

「面倒なんて言ってる場合じゃないでしょ!」

「わかってらぁ。オレは妖怪を追う。お前は、学園かどっかから妖操師を呼んで来い。任せた」

そう小雪に言い残し、オレは妖怪が去ったという方角へ走り出した。



どこだ、どこだ、どこだ!

オレは走っていた。

さっきは小雪を落ち着かせるために冷静な感じを装っていたが実際は結構あせっていた。

この前に土蜘蛛と戦った時とは違い、連れ去られた子供は妖術も使えないし、体力も劣っている。

状況は圧倒的にヤバイ。

「妖怪の寝床はどこだァ〜!」

妖怪というものは大体、オレたちと少し離れたところに住んでいる。

山や川の底、この前の土蜘蛛みたいに森に住んでいるものもいる。

要するに自然が他より多いところだな。

だからそういうところを探し出せばいいわけなのだが・・・・・・

「あった」

竹藪だ。大きさも妖怪が住むにはちょうど良いくらいの大きさだ。

ここに違いない。というか、違っていたら終わり、だ。

とりあえず、入らなければ始まらない。

オレは竹藪の中に入っていった。



捜し始めると連れて行かれた子供の名前がわからないので、なんと呼びながら探せばいいのか困ってしまった。

とりあえず、オーイと叫びながら探すことにした。

「オーイ、誰かいるか?」

とりあえず、ネズミの化け物というからには、ネズミのような姿をしていて、かつ、子供を一人くらいは運べる大きさなのか。

ということは、結構大きいな。ある程度開けた場所にいるはずだ。

そういうところならこのくらいの竹藪だ。

すぐ見つかる・・・・・・といいが。

ぅゎーん、ぅゎーん

どこからか泣き声がする。

男の子の声だ。

まだ殺されてはいないらしい。

オレは泣き声がするほうへと向かった。



やはり、ある程度開けた場所だった。

人百人くらいならゆうには入れる。

そして、その広場の中央に竹で作った巣の中に座っていたのは、

「あれは火炎鉄鼠かえんてっそ!」

火炎鉄鼠はその名のとおり炎を纏った化けネズミだ。

体長は2メートルくらいで体重は200キロはある。

そのくせすばしっこく、炎を纏っているため近づくことすらできない。

子供が燃えてしまわなかったのは小さいし、口に咥えられていたからだろう。

火炎鉄鼠の口の周りは食べ物を咥えたときに獲物が燃え尽きてしまわないように炎を纏っていないのだ。

でも、今は子供を口に咥えていないようだ。

それにさっきから頭をしきりに動かしている。

何かを探しているようだ。

「うわーん、うわーん」

子供が走って逃げ回っている。

なかなか、やるな。

オレは子供に駆け寄った。

「オイ、大丈夫か?」

「うわーん、うわーん」

泣いてはいるが外傷は無いようだ。

「俺が来たからもう大丈夫だ。帰るぞ」

わざわざ妖怪と戦う必要も無い。

オレは火炎鉄鼠に気づかれないうちに子供をつれて竹藪の中に隠れようとした。

グゥオオオオオオオオ

「チィ、気づかれちまった」

オレは子供を抱き上げ、走り出した。

あと少しで竹藪の中に隠れられると思ったその時!

ズドーン

「くそ、間に合わなかったか」

「うわーん、うわーん」

火炎鉄鼠がオレ達の目の前にたちふさがった。

この子がいると戦いづらい。

どうやって逃がそうか。

(しょうがねぇ、オレが囮に)

オレはそう考え、足元にある小石を拾った。

「おい、坊主。オレが今からアイツの気を引く。その間に逃げろ」

「う、うん」

「よし、それでこそ男だ」

オレはそういいつつ走り出した。

火炎鉄鼠はいきなり動いたオレの方に気を取られたようだ。

「喰らえッ」

オレは火炎鉄鼠の顔に向かって石を投げた。

石は奴の右目へ。

ギャアアアアアアア

ヤツは右目を負傷したらしい。

予想外の収穫だ。

あの子もちゃんと逃げたらしい。

ボワワアア

「うわっ、アチチチッ」

火炎鉄鼠の纏う炎が大きくなった。

怒らせてしまったらしい。

「まずい。距離を取らねぇと」

ブオオオオオ

右から風の音。

オレは吹き飛ばされた。

「予想以上にキレちまっているらしい」

しかし、一撃で火傷と爪による切り傷がついてしまうのは厄介だ。

まあ、火傷のおかげで出血多量で死んでしまうことはなさそうだが。

ブオオオオ

二撃目。

真上からの前足による攻撃。

ドゴーン

オレはぎりぎりでかわした。

切り傷はつかなかったが火傷を負ってしまった。

「もっと余裕を持ってかわさねえと」

それにしてもあの炎は厄介だ。

炎のせいで触れて電撃を流すということもできない。

そんなことを考えていると

「雷毅!!」

小雪だ。

「お前、妖操師を呼んでこいって言っただろうがッ」

「途中で会った友達に頼んできた」

「じゃあ、帰れ!」

「あんたよりは妖術使えるから大丈夫」

ブオオオオオ

「チッ」

オレは小雪を突き飛ばした。

ガスッ

チィ、まともに喰らっちまった。

「だから、言ったんだ。お前がいるとオレはお前をかばわないといけない。お前はその妖術で逃げることだけを考えろ!」

「で、でも・・・・・・」

「早く!!」

「わかった」

あーあ、あいつのせいでいらない攻撃食らっちまった。

ま、なんとかなるだろ。

オレが怪我の具合を確かめていると、

「キャア」

ヤバイ、アイツ小雪のところ行きやがった。

オレが駆け出す。

くそ、間に合わない。

どうする!?

「土岩防壁!!」

岩の壁が突如出てきた。

ガキキキキキッ

「もう雷毅に迷惑はかけない。自分の身は自分で守る」

何とか防げたようだ。

ピキッピキピキッ

クソッ!アイツ、壁を砕くつもりだ!

どうする? どうする? どうする?

「だああああ!イライラする。と・り・あ・え・ず、吹き飛べ!!」

オレの中で何かがぷちっと音をたてて切れた。

俺の手から大量の電撃が放出された。

バリッバリバリバリッ

ドカーン ギャーオ

火炎鉄鼠が吹き飛んだ。

この術は電撃を放出することもできるようだ。

イライラしていたので、吹き飛んじまえと、思ったから言っただけなのだが、本当に吹っ飛んでくれたようだ。

「オラァ!小雪ィ!さっさと行きやがれ!」

「ご、ゴメン。ありがとう」

さてと

「火炎鉄鼠!テメェはオレを怒らしちまったようだな!」

グゥオオオオ ビュオッ

火炎鉄鼠が前足を振り下ろす。

「うおっと」

俺が後ろ斜め上に飛んで交わす。

人のせりふを途中で止めやがって!もう許さねえ!

まぁ、もともと許すつもりはさらさらねぇケドな。

「轟け、雷鳴! 奔れ、稲妻! 消えろ、百雷無塵!!」

百もの雷撃が迸る。

バリッバリバリバリッバシシシッ

スタッ

オレが地面に降り立つ。

「キマったぜ」

火炎鉄鼠は文字どおり、塵も残さず消えさっ・・・・・・灰が残っちゃったかも。

って、ヤベッ、くらくらしてきた・・・カ・・・モ

ドサッ

俺はまた倒れることになってしまった。



俺はその後、遅れて来た妖操師に発見された。

そしてやっぱり病院へ。

今回目覚めた時は妖操師に怒られてしまった。

あまり、無茶しないように、だと。

お前らが来るのが遅かったせいだろうがっと、心の中でかるくキレた。

おっと誰かが病室をノックしている。

「ドーゾ」

ガチャ

「小雪か」

「ごめんね、あたしのせいで怪我させちゃって」

「いや、別にいいけど」

ま、もともと結構怪我していたしな。

「それとね、今回であたしは実戦ではダメだってわかったの」

だから?

「だから、あたしももっともっと修行することにしたの!」

ま、まさか

「それで、あたしも雷毅と一緒に今度から一緒に修行するから」

「オレはやりたくないんだけど」

「はい、これ、明日からの修行のスケジュールね」

「だから、やりたくないんだけど」

「よっし!明日からがんばるぞ!」

ドタドタドタ、バタン

小雪は騒がしく病室を出て行った。

なんか、勝手に決めちゃったなぁ。

っていうか、なんで明日退院って知ってんだよ。

オレはため息をついた。

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